犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

北京語と広東語

2008-02-24 00:01:50 | 言葉
 香港は1997年に,イギリスから中国に返還されました。

 長らく香港の公用語は英語だったそうですが,現在の香港の公用語は英語と中文(=中国語)だそうです。この中文というのがくせもので,北京語(正確には普通話。北京語をもとにした標準中国語)ではなく,広東語

 香港出張でいっしょに行った中国人によれば,北京語と広東語は発音がまったく違うので,お互いに通じないのだそうです。

 たとえば,中華料理でよく使うシャンツァイは「香菜」と書く。だから,「」の音は「シャン」のはず。でも,「香港」は広東語では「ホンコン」ですから,広東語で「」は「ホン」。

 では別言語かというと,そうではない。方言扱いです。

 さらに不思議なのが,文章では,広東語も北京語もほぼ同じだという(ただし,香港は中国本土と違って繁体字)。

 日本の沖縄方言は,歴史的に日本語と同一の祖語から枝分かれした,日本語の方言だということが証明されていますが,別言語といってもいいほどにかけ離れていて,通じない。文字に書いたところで,わからなさ加減は同じです。

 けれども,広東語と北京語は,書き言葉は(字体は別にして)同じなんだそうです。つまり,同じ中国語の文章を,北京の人と香港の人は,まったく違う発音で読む。香港人の頭の中で鳴っているのは広東語の発音。

「いやあ,不思議だなあ」

 すると,連れの中国人が,

「そうですか? 私も文章を黙読しているときは,上海語で読んでますけど…」

(!!!)

 実は彼の出身は上海で,母語は「上海語」。使用人口は広東語よりも多いという大方言です。この上海語は,北京語とも,広東語とも,同じくらいかけ離れていて,通じないという…。

 そういう「通じない」大方言が,あの広い中国にはいくつもあるらしい。文章が,広東語と北京語で「まったく」同じかというと,もちろんそうではなくて,広東語特有の熟語や漢字もあるということですが…。

 そういえば,私の叔母の一人が台湾人と結婚し,今台湾に住んでいます。台湾の公用語はやはり中文(北京語=普通話)。しかし,台湾語は北京語と発音がぜんぜん違うと言っていたなあ。台湾語は,福建語に似た方言なのだそうです。

 中国語の奥の深さを思い知らされました。

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2 コメント

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文盲 (txm)
2008-02-24 04:53:06
発音だけじゃなくて、文法が違うんでしょう。つまり、政治的に方言でも、実質別言語ですね。こういう状況で、普通話(つまり北京語)を母語としない場所/人によって、中国全土で受けいられるような文芸作品が書かれるのかなって昔から思ってました。ちなみに、香港人の知人がいるのですが、私は彼のことを文盲ってよんでます(笑)。英語はそこそこ、広東語の会話は、当たり前ですが完璧、漢字の読み書きは最悪。アメリカの大学で修士を取っているんですけどね。
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文法… (犬鍋)
2008-02-26 00:04:05
txmさん,コメントありがとうございます。

文法についてはよくわかりません。

>政治的に方言でも、実質別言語

インドネシア語とマレー語は逆で,政治的に別言語ですが,実質方言ですね。

香港の公用語が「中文」というとき,香港人は「広東語」のことだと考え,本土(という言い方がいいのかわかりませんが)の人は「普通話」と解釈するようです。
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