犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

数について

2021-02-28 23:52:43 | 言葉
性について

 私の数の初体験は、12歳の時でした。

 中学の英語の授業の最初のほうで、名詞の複数形について習いました。

 名詞に「-s」をつけると複数形になる、というやつですね。

 まあ、それほど違和感はなかったです。

 「-s」っていうのは、つまり日本語の「~たち」だな、というふうに理解しました。

 学生の複数は「学生たち」で、先生の複数は「先生たち」。

 でも、犬の複数を「犬たち」というのはちょっとおかしいし、「花たち」や「椅子たち」と言うことはできない。

 日本語の複数を表す接尾語の「たち」は、つけられる言葉が限られているのですね。

 それに、「たち」がつけられる言葉であっても、たとえば

教室に、30人の学生たちがいる。

という文では、むしろ「たち」を使わないで、

教室に、30人の学生がいる。

とするほうが自然です。

 また、日本語の場合、~たちを使うかどうかが、他の言葉の形に影響を及ぼすということがありません。

 一人の学生が勉強しても、大勢の学生たちが勉強しても、「勉強する」という動詞の形はかわりません。

 一方、英語の場合、一人の学生の場合は、a student で、複数の学生はstudents。複数形は-sという語尾がつくと同時に、不定冠詞のaがなくなります。

 それだけではない。動詞の形も変わるのです。

A student studies.

Students study.


 このように、名詞が単数であるか複数であるかによって、その名詞と文法的に関連する語(冠詞、動詞など)の形が変わる言語は、「文法的な数がある言語」と言えます。

 日本語は、「文法的な数がない言語」です。

 英語をはじめとするインド・ヨーロッパ語族にはすべて文法的な数があり、アラビア語などのセム・ハム語族、フィンランド語などのウラル語族、アフリカの言語にもあるそうです。逆に、日本語、韓国語、中国語、タイ語、インドネシア語など、アジアの言語には文法的な数がのない言語が多いということです。

 フランス語の場合、英語のように、単数形の名詞に-sをつけて、複数形を作りますが、この-sは発音しないので、単数形と複数形は同じ発音になります。形容詞も同様に、複数形の名詞を修飾する場合は、形容詞の末尾に-sをつけますが、発音しません。

 ただ、冠詞(定冠詞、不定冠詞)が変わります。定冠詞の un/une は des に、定冠詞の le/la  les になります。

 さらに、動詞は、現在時制だけでなく、過去や未来の時制においても、主語が単数か複数かで、形が変わるのです。

 ロシア語の名詞には、男性名詞、女性名詞、中性名詞があるということを、以前書きました。

 ロシア語には冠詞がないので、単複による冠詞の変化はありません。しかし、名詞の性によって、複数形の作り方が変わります。

 たとえば、

学生(男性名詞)は、
студент(ストゥーデント)→ студенты (ストゥーデントゥイ)

歌(女性名詞)は、
песня(ピエスニャ)→ песни(ピエスニ)

手紙(中性名詞)は、
письмо(ピシモー)→ письма(ピーシマ)

のように。

 それだけではありません。

 ロシア語は、いずれ説明する機会があると思いますが、名詞の「格変化」というものがあって、名詞が6種類の格に応じて変化するのですが、その変化のしかたが名詞の性(男性か女性か中性か)と数(単数か複数か)で異なり、またそれを修飾する形容詞も名詞の性・数・格の変化に応じて形が変わるのです!

 ロシア語を勉強すると、英語やフランス語のありがたみが、しみじみと感じられます。
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