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テラリウムの進化系!?「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」を見学(その2)

2018-02-05 17:53:01 | 関西コケスポット

まずはお知らせです。

今週2月7日(水)21時30分~から放送の
稲垣吾郎さんがパーソナリティを務める
ラジオ番組『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)に出演させていただきます。

そう、あの稲垣吾郎さんです。

たびたびこのブログでも言っていますが、幼少の頃からテレビっ子でドラマやバラエティが大好きなワタクシ、
まさか自分の人生で稲垣吾郎さんとおしゃべりできる機会が巡ってくるなんて思いもかけないことで、依頼をいただいた時はたまげました。

コケの魅力や、おすすめコケスポットのほか、稲垣さんのコケにまつわる思い出話なども出てきますので、ぜひお聴き逃しなく!

 ※地域によって放送日時が違うようです。また都道府県によって放送されていないエリアもありますので、
  詳しくは同番組のHPをご確認くださいませ。radikoでも聴けます。



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では、前回の記事の続き、「KOBE キノコ・コケ・テラリウム展」のもう一つの主役「きのこリウム」のレポートをば。


今回のテラリウム展が展示会デビューだったという「きのこリウム」作家の樋口和智さんは、
もともとはアクアリウムが趣味で、キノコが主役の「きのこリウム」は3年ほど前から始められたのだという。











これらのテラリウム、もちろん野外に生えているキノコを植え込んでいるわけではない。
巷で販売されている食用キノコ栽培キットの菌床や、菌を植え付けた原木をガラス容器の中に植え込み、
温度・湿度を徹底管理し、最終的にキノコを生やして完成させている。

樋口さんがキノコをテラリウムで育てて鑑賞しようと思いついた当時、
同じようなことをしている人が他におらず、ここまでの道のりはほとんど独学。
失敗と挑戦を繰り返しながら、現在のようなスタイルに行きついた。






▲樋口さんが育てられたエノキ。コケはシッポゴケの仲間かな?!


「きのこリウム」の面白さは難しさと紙一重だ。

野外でキノコを観察したことがある人はご存じかと思うが、キノコというのは往々にして神出鬼没。
発生時期がわかりにくく、しかも寿命も短くて、数日ほどで枯れてしまうものも多い(キノコの種類にもよりますが)。

今回、会期の2日間に合わせて、キノコがちょうど傘が開いた状態のものを展示できるよう樋口さんは1年近く前から準備を始めたそうで、
ご自宅には選抜メンバーに選ばれなかった補欠組のテラリウムが展示数と同じくらいあり、
さらにキノコが1つも出てこないような万が一の事態に備えて、4Kモニターで映像を流す準備もされたのだそうだ。



▲万一のために備えて作ったという、これまでの作品をまとめたスライドショー



▲一つの水槽にキノコ、コケ、シダが競演。小さな隠花帝国がここに! 


キノコを上手に生やすための設備、それにかけてきた膨大な時間、聞けば聞くほど
樋口さん、かなりのご苦労をされてきたご様子。思わず、それは大変でしたねぇと労ったが

「キノコはなかなか思うようにいかないです。でも、だからこそ育て甲斐があるし、
 小さなキノコが出てきて大きくなっていく姿を見る時はものすごく嬉しいし、興奮します。
 きっと鑑賞している人よりも、僕の方が楽しんでいますよ」

と笑顔で返してくださったのが印象的だった。






▲ナメコ。スーパーのナメコに慣れ親しんでいる者としては驚きのビッグサイズ






▲こちらはヌメリスギタケ。個人的にはこれまで売られている所を見たことがないが、食用として栽培・市販されているキノコの一種だそうだ


見ているだけで、なんだろうこの心にじわじわとくる感じ。
よくもまぁこれだけ見事なキノコを育てられたものだという感心もあるのだが、それだけではない。

常緑のコケと違い、キノコというのは姿を現したと思ったらぐんぐん成長し、
柄が伸び、傘が開いて、胞子を撒ききったら、今度は途端に朽ちてしまう。
そういうはかない代物であるということを、私たちはなんとなくだが知っている。

現に同展示を主催された花と緑のまち推進センター・センター長のHさんによると、
会期1日目にはまだ傘をすぼめていたキノコが、2日目に見てみるとぐっと大きく傘が開いており、
作品そのものの雰囲気が全然違って驚いたとのこと。

万物は常に流動的で、生じたら滅する。

短いサイクルでキノコの発生から消滅までを作品として見せてくれる「きのこリウム」は私たちが普段は意識していない、
でもすべての生きものが共通して抱えているこの〝宿命〟をふと思い出させてくれるから、心にグッとくるのかもしれない。

見ているだけでそう感じるのだから、きっとゼロから育てている樋口さんの感動はひとしおだろう。






さて、最後にもう一つ。

今回、会期中に午前・午後2回にわたって特別企画としてコケテラリウムの講習会が行われた。
両日ともに事前予約でいっぱい、キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだったそうだ。

2日目に私が展示室を訪れた時に講師を担当されていたのは大阪にある「コケリウム」の岡村さんだった。



▲写真右上、センター長Hさんに紹介されているのが岡村さん


岡村さんはオカモス関西支部のメンバーでもあり、毎月開催されるコケサロンでもよく顔を合わせるメンバーのお一人だ。

  ※コケサロン:大阪にて月1で平日夜にコケに取りつかれたマジメな関西人が情報交換や同定のために集まる会のこと


私の知り合いのコケテラリウム作家さんは研究熱心な人が多いが岡村さんも同じくで、
先月のコケサロンでは、テラリウム作りでよく廃棄しがちな「仮根」を捨てずにきちんと育てれば、
またテラリウムに使えるレベルの植物体に再生するという実験結果をタマゴケを例にお話しくださった。
「だから仮根は捨てちゃダメです!」とのこと。
 
   ※仮根:コケが生育基物にしがみつくための根のようなもの。
       他の植物のように栄養を吸い上げる機能はほとんどないといわれている。

コケのテラリウムは、年々人気が高まっているのを園芸派じゃない私でさえもこういったイベントを訪れるたびに感じているが、
じつは原材料を調達する目的で一部の心無い業者らによる「乱獲」が横行していることもたびたび見聞きする。
そのたびにこれまで胸がきゅっと締め付けられるような思いをしてきたが、岡村さんのような販売者の存在には本当に心が救われる。

すべての自然が無限にあるわけではなく有限であり、もちろんコケもしかり。

そんなことをいまさら私が言わなくとも園芸でコケを扱っているプロの方はとうに感じておられるだろうが、
「コケは道端や庭のどこにでも生えている」というイメージもあるからか、意外と購買者側はそこまで想像していなかったりする。

有限だからこそ、一つ一つのテラリウムと長く付き合えるように、
生命のはかなさや尊さをより深く感じられるように、
ロスを減らし循環させて増やしていくことにも注力して・・・
最後にちょっとまじめな話になってしまったが、
今回のテラリウム展ではそのような新たな光が見えたような気がしたのだった。


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