ビター☆チョコ

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ユナイテッド93

2006-08-23 | 洋画【や】行



2001年9月11日朝。ユナイテッド93便は何事もなく飛び立った。
くつろいで朝のひと時を過ごす乗客たち。
この飛行機にテロリストが乗っていることなど、誰も知る由もなかった。
そして、あの恐ろしい事件は起こった。

今もあの映像は目に焼きついている。
想像をはるかに超えた現実に、かえってリアリティを感じることが出来なかった。
あれから5年。
「まだ」と言っていいのか、「もう」と言うべきなのか。
月日は流れて、この秋9・11を題材にした映画が相次いで公開されることになった。

ハイジャックされた4機のうち、ユナイテッド93便だけがテロリスト達の目標を遂げることが出来なかった飛行機だ。
乗客もテロリストも全員死亡したわけだけれど、残されたボイスレコーダーや乗客が機内から家族にかけた電話から、機内で起きたであろう事を想像して再現している。
誰にスポットライトを当てるでもなく、機内で起こったであろう事をカメラが淡々と追っていく。
飛行機が急降下すると映像は激しく揺れ、観ているこちらまで恐怖に陥る。

ハイジャックされた当初は楽観的に考えていた乗客たちも、電話で他のハイジャックされた飛行機がワールドトレードセンターに突っ込んだことを知ってからは、自分達の運命を知ることになる。
一か八か。
犯人に奪われた操縦桿を自分達で取り戻そうと捨て身で犯人に立ち向かう。
誰も英雄になりたかったわけではない。
愛する家族の元に生きて帰りたい一心からの行動だったのだろう。
立ち向かう乗客たちはキリストに祈り、乗客の反撃を受けたテロリストはアラーの神に祈った。
そしてどちらも最後に残した言葉は「I Love You」のひと言だった。

テロリストも私達も求めるものは同じなのだ。

「あなたの立場で考えればあなたが正しい。私の立場で考えれば私が正しい。」
いつかどこかで読んだ言葉だけど、
そんな勝手な人間達がひしめきあって暮らす世界で、もう少しお互いの立場について想像力があれば
いがみ合うことも減るのではないかと思うのは、甘すぎる考えだろうか。

帰り道、運転しながら鉄の塊とは思えないほど軽くゆったりと飛ぶ飛行機を見る。
晴れた空に銀色に光りながら軽く飛ぶ飛行機が胸に痛かった。