海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

どぅーなーたー島やどぅーなーたーじ守らんねー、ちゃんならんどーやんばるんちゅ。

2014-09-18 23:58:42 | 米軍・自衛隊・基地問題

 以下の文章は9月8日付琉球新報に掲載されたものです。

 辺野古海域で新基地建設のために海底ボーリング調査が進められている。それに対し連日、陸ではキャンプ・シュワブのゲート前で抗議行動が取り組まれ、海ではカヌーや小型船による海上行動が取り組まれている。

 七月以降それらの行動に参加し、現在はカヌーを漕いで海に出ることが多い。カヌーに乗るのは今回が初めてだが、辺野古の浜を出て平島に寄り、大浦湾に設置されたスパッド台船のそばまで漕ぎながら、つくづく感じるのは、この海と海岸線を埋め立てることの愚かさである。

 私は1960年に今帰仁村で生まれた。日本復帰は小学校6年生の時で、以後、北部の海岸線が埋め立てや護岸工事によって変貌していくのを見てきた。小学生のころ、従兄弟が名護市東江に住んでいたので、遊びに行った時には砂浜に降りてキャッチボールや釣りをした。一緒に浜でヒートゥ狩りを見たこともある。その砂浜も埋め立てられ、いまは国道58号線の下だ。

 「観光立県」を打ち出し、「青い海」を最大の魅力としてPRしながら、この42年間の沖縄のあり方は、この島の貴重な宝をあまりにも安易に破壊し、コンクリートで固めて、自らの価値を否定する愚行をくり返してきたのではなかったか。

 そのことをとっくの昔に反省し、残された海岸線の保存に努力しなければいけないのに、仲井真弘多知事は沖縄島に残された貴重な宝の海を破壊しようとしている。前回の選挙で普天間基地の「県外移設」を公約として掲げながら、有権者を裏切って公約を投げ捨てたばかりか、いまでは「早く(辺野古を)埋め立てて世界一危険といわれている普天間飛行場を移すことだ」(26日付本紙)とさえ口にしている。

 まるで名護市民はどうなってもいいと言わんばかりだ。市街地から人口の少ない地域に移せば危険性が減る。日本政府・防衛省が言ってきたことを仲井真知事はそっくりまねている。結局、それが仲井真知事の本音だったのだろう。だが、危険を押しつけられる側はどうなるか。

 やんばるで生まれ育ち、名護市で生活している者からすれば、そこには少数者に負担と犠牲を押しつけて問題が解決したかのように装う、政府の「沖縄差別」の構造をまねた「やんばる差別」を感じずにいられない。沖縄を南北に分断し、基地問題を北部の過疎地域に集中させることで、基地への反発を減少させようという政府の操り人形として、仲井真知事は三選をめざしているようだ。

 仮に普天間基地の辺野古「移設」=県内たらい回しが実現すればどうなるか。キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、北部訓練場、伊江島補助飛行場など北部地域と伊江島に海兵隊の訓練が集中し、基地被害も北部・伊江島に集中する。一方で、嘉手納より南は米軍基地の返還によって再開発が進み、新たな市街地が形成されるだろう。

 いまでさえ沖縄の南北格差は深刻だ。政治、経済は元より、県立図書館や県立公文書館、国立劇場沖縄、県立博物館・美術館などの文化施設も那覇を中心とした南部に集中し、北部に住む者はそれらを利用する機会も滅多にない。いま以上に格差が拡大し、基地被害も集中すれば、北部から中南部への人口流出=過疎化が加速するのは目に見えている。

 北部・やんばるの住民は、辺野古新基地建設が自分たちの地域にどのような影響をもたらすか、その深刻さを考えなければならない。米軍基地が目の前にないヤマトゥの人たちは、沖縄県民がどれだけ訴えても米軍基地問題に関心を示さない。沖縄県民は少数者の悲哀を舐めさせられ続けている。それと同じ構造を、日本政府・防衛省は、沖縄内部で作り出そうとしているのだ。

 人口が密集している中南部から米軍基地を減らし、北部に集中させれば、基地被害が減った中南部の人たちはやがて基地問題に関心を持たなくなり、人口の少ない北部・やんばるの人たちの声は届かなくなる。沖縄を南北に分断し、沖縄人としての同胞意識を解体して、基地問題をさらに見えなくする。それが日本政府の狙いであり、その実現に手を貸しているのが仲井真知事だ。

 中国に対抗する日米両軍の要塞として沖縄が利用されれば、いつか軍事紛争に巻き込まれかねない。仮に尖閣諸島で軍事衝突が起これば、観光産業が受ける打撃は9・11同時多発攻撃の際とは比較にならない。辺野古新基地建設を許してしまえば、沖縄の日本への隷属状態は深まり、その将来は暗く、危ういものになっていく。

 安倍政権の危険性は、米国政府でさえ注意しているほどだ。沖縄県民、とりわけやんばるの皆さんに、ぜひ辺野古の抗議行動の現場に来てほしい。沖縄の現状を変え、将来を創るのは、県民一人ひとりの行動である。

 


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