海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

自衛官自殺訴訟について

2010-12-11 19:13:35 | 米軍・自衛隊・基地問題
 12月7日付琉球新報に〈自衛官自殺訴訟/「上官の暴行日常」/静岡地裁 同僚、実態を初証言〉という見出しの記事が掲載されている。リードの部分を引用する。

〈【静岡】航空自衛隊浜松基地所属の県出身者子弟の三等空曹=2005年没、当時(29)の自殺をめぐり、両親らが国と上官の男性二等空曹=当時=を相手に損害賠償を求めた訴訟は6日、静岡地裁浜松支部(中野琢郎裁判長)で証人尋問が行われた。同僚の女性元自衛官(25)が当時の実態について「三等空曹が自殺する3カ月ほど前から二等空曹が、暴言の一方で三等空曹を平手でたたいたり、殴ったり、背後から蹴ったりすることがひどくなり、日常化していた」などと証言した〉

 自殺した三等空曹に対し、二等空曹は日常的に暴力を振るっていた。それが国などのいう「指導」ではなくいじめであり、三等空曹も〈私にいじめと言っていた〉と元自衛官は証言している。さらに、いじめによって精神的に追い詰められていた様子や、〈別の上官に一連の暴行行為を申告したが「『俺らのころは普通だった』と話していた。何とかしてくれるのではと思っていたが」と取り合わない姿勢だった〉ことも明らかにしている。

 同裁判についての関連記事
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-169626-storytopic-1.html

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-137875-storytopic-1.html

 沖縄県出身者が関係する自衛隊内の暴力をめぐる裁判は、ほかに『命の雫』裁判もある。
http://inochinoshizuku.blog25.fc2.com/

 自衛隊内の暴力をめぐる裁判が、沖縄県関係者だけでも同じ時期に2件行われている。これは異常である。
 自衛隊内で暴力、いじめが日常化し、隊員が自殺に追い込まれたり、暴行を受け死亡した事件は、護衛艦さわぎりやたちかぜの自殺事件、海自第一術科学校での格闘訓練に名を借りた集団リンチ事件など、くり返し発生している。静岡地裁浜松支部で証人尋問を受けた元自衛官の証言に出てくる「俺らのころは普通だった」という上官の言葉を見ると、自衛隊内で暴力やいじめが旧軍以来の悪しき伝統と化しているかのようだ。
 事件が起こるたびに国や自衛隊は組織防衛を第一にし、事実の歪曲や情報の隠蔽を図る。それによって被害者や家族は泣き寝入りを強いられ、暴力やいじめは解決されないまま、新たな犠牲者が出ることになる。このようなことがこれ以上くり返されてはならない。国が防衛機密を盾にして、自衛隊組織が抱えている問題を隠蔽するのは許されない。
 自衛隊が自らの組織内部の暴力やいじめを改めきれないとすれば、それは隊員だけでなく、市民にとっても危険なことだ。上記二件の裁判について注視したい。

 

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1 コメント

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心配だ (kazzuu)
2011-02-07 20:52:08
 暴力によって従わせようとする意識が末端まで浸透している組織なのではないかとの疑念をもちますね。
 その意識は、旧日本軍からの伝統なのでしょうか。軍人は理不尽の強要が好きなのでしょうか。
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