海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

資料:「沖縄靖国合祀取り消し訴訟」判決要旨 1

2010-10-31 23:40:28 | 靖国問題
平成22年10月26日言渡
平成20年(ワ)第395号 合祀取消及び損害賠償請求事件

判  決  要  旨
 
原   告     A
原   告     B
原   告     C
原   告     D
原   告     E
被   告  靖 國 神 社
被   告       国

主      文

1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 事案の概要
 本件は、原告らにおいて、被告靖國神社(以下「被告神社」という。)及び被告国に対し、原告らの親族である沖縄戦等の戦没者ら(以下「本件戦没者」という。)に関して、被告神社が遺族の原告らに無断で本件戦没者を合祀した上、原告らの合祀取消しの要求を拒否して合祀を継続し、また、被告国が本件戦没者の情報を被告神社に無断で提供し、その費用を負担して、憲法20条3項、89条違反の行為を行った結果、これらの被告らの共同行為により、家族的人格的紐帯に基づき原告らの有する追悼の自由等の人格権が侵害され、精神的苦痛を受けたと主張して、不法行為又は国家賠償法に基づく損害賠償請求として、連帯して、原告1人あたり10万円の慰謝料及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めるとともに、被告神社に対し、本件戦没者の合祀とその継続により、原告らの上記人格権が侵害されていると主張して、人格権に基づく妨害排除請求として、被告神社の所有、管理する霊璽簿、祭神簿及び祭神名票(以下「霊璽簿等」という。)からの本件戦没者の氏名の抹消を求める事案である。

1 前提となる事実
 原告らは、沖縄戦を含む太平洋戦争中に死亡した本件戦没者の親族である。本件戦没者は、いずれも被告神社において合祀されており、その氏名が被告神社の所有、管理する霊璽簿に記載されている。
 原告らは、被告神社に対する照会により本件戦没者の合祀を知るなどし、被告神社に対し本件戦没者の合祀取消し又は霊璽簿からの氏名の削除を求めたが、被告神社はこれを拒絶した。
 なお、被告神社は、戦没者の合祀に際して、遺族の同意又は了解を得ることをしておらず、申請による合祀や、逆に、合祀取消しの申出も受け入れていない。また、被告神社は、戦没者を合祀した際に遺族に対し合祀の通知を送付する外は、遺族に対して何らの働きかけや連絡も行っていない。

2 争点
(1)法律上の訴訟性
(2)被告国の共同行為性
(3)原告らの権利ないし法的利益と侵害
(4)政教分離原則と賠償責任
(5)除斥期間

第2 当裁判所の判断

1 争点(1)〔法律上の訴訟性について〕
  (省略)

2 争点(2)〔被告国の共同行為性〕について

(1)原告らは、被告国は、被告神社による合祀を援助協力し続けたのみならず主導的に推進したものであって、被告国の行為と被告神社の間には行為の共同性があり、又は被告神社の合祀を幇助したと評価される旨を主張する。

ア 終戦前の合祀と終戦後の合祀とを対比すれば、終戦後の宗教法人制度の改革により、合祀の主体としては、いわば被告国の国家による合祀から被告神社の一宗教法人による合祀に変容したものである。
 被告神社における合祀にとって、対象となる戦没者の把握は不可欠の事実行為であり、その等の氏名等の情報提供とその顛末等に関しては、昭和31年に発せられた第3025号通達及びその別冊の記載を前提とすると、①被告神社による氏名等の照会を前提とするものの、②都道府県は直ちに祭神名票の各項目の記載ができるような原簿を設定整備し、③前記照会に対して都道府県等が調査の上祭神名票に記入して引揚援護局において取りまとめ、被告神社に回付し、④合祀後は都道府県が祭神名票の送付を受けて合祀の採否につき上記原簿の記事を点検補修し、⑤合祀通知状を遺族へ交付する事務についても都道府県は事情の許すかぎり被告神社の依頼に応じるものとされ、その事務内容としては封書への宛名記入も含まれており、⑥これら事務の費用は国費負担とされていたことが認められること、加えて、被告国と被告神社とにおいて、昭和31年から昭和45年にかけて、頻繁に会合が開催され、合祀基準に関する要望等の伝達などもされていたこと認められることからすれば、昭和31年以降にとられた被告国におけるこれらの事務体制に照らして、被告国が少なくとも戦没者の氏名等の情報提供につき一定の役割を果たしていることは否めない。
 なお、本件戦没者中数名が被告神社の回答上「階級・陸軍軍属(無給)」とされており、被告国によって「沖縄戦の戦闘参加者処理要項」が作成されて援護法の申請が開始された直後である昭和33年ないし昭和34年に合祀されていることを考慮すれば、これらの者は、被告国による援護法の適用を前提とした情報提供によって被告神社の合祀がされた者と窺われ、他の戦没者についても、特に昭和32年以降に合祀された者は、被告国による情報提供の結果、被告神社の合祀がされた蓋然性がある。

イ ところで、被告国における前記アの事務体制を、被告神社による合祀行為との関わりにおいてどのように捉えるかは問題である。
 この点、被告国は、第3025号通達が一般的な調査回答業務の一環として行政サービスの改善を行うためのものであると主張するものの、前記アの事務体制が一般的な調査回答業務にとどまるかは疑問の余地もある。
 しかしながら、被告国の行った事務については、その役割上、合祀行為のために必要ではあるが、あくまでもその周辺的付随的な事務であり、かつ、被告神社からの依頼又は照会を契機とするものである。
 そして、終戦後の合祀の経緯からは、終戦後において、①被告国は祭祀の運営及び被告神社の管理に関与していないこと、②合祀の最終決定は被告神社が行い、被告国もその立場を堅持していること、③合祀基準の拡大に関する権限は被告神社の総代会にあったこと、④被告神社は、遺族等につき独自の調査も行っていたこと、⑤被告国からの情報提供が中断された時期においても年数万人単位で被告神社による合祀が行われていたこと、⑥被告神社による合祀に対して被告国が事実上の強制とみられるような何らかの影響を及ぼしたものともいい難いこと、⑦原告らによる合祀取消申請に対する被告神社の合祀継続の対応につき被告国が何ら関わっていないことなどをそれぞれ指摘することができる。
 また、このような被告国による情報提供等の行為の背景には、昭和20年代当初からの復員相談に対する調査回答から徐々に昭和30年代以降にかけて戦没者についての照会回答に変遷した経緯も窺われ、被告国として、大方の国民の意向を反映した時代の要請や時勢に応じて採られた行政上の措置といえる一方、被告国による情報提供自体は、その相手方が宗教法人たる被告神社であったとしても、被告国にとっては、宗教的な色彩のない事実行為にすぎない。
 そうしてみると、被告国の敷いた情報提供を中心とする前記アの事務体制は、被告神社が170万柱を超える多数の戦没者の合祀を行う上で一定の役割を果たしたことは否定できないものの、これをもって、被告神社を主体とする合祀について、その性質として、被告国が被告神社の合祀行為を主導的に推進した又は被告国の行為が被告神社の合祀行為及び合祀継続行為の一部を構成しているとまでいうことはできない。

ウ したがって、被告国おいて、被告神社との間で国家賠償法4条、民法719条1項の共同不法行為の前提となる行為の共同性があると認めることはできない。

(2)以上のとおりであるから、国家賠償法4条、民法719条1項の共同不法行為を認めることはできない。なお、原告らは、被告国の上記の関わりによって、被告国の合祀行為を幇助した(国家賠償法4条、民法719条2項)とも主張するが、幇助的な様態による関与の有無については、幇助の対象となる被告神社の行為が原告らの権利ないし法的利益を侵害するものと認められた後に論ずべき事柄であるから、先に以下でこの点を検討する。
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