海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

オスプレイ沖縄配備と県知事選挙

2010-10-29 19:39:36 | 米軍・自衛隊・基地問題
 2005年10月、当時の大野功統防衛庁長官とリチャード・ローレス米国防副次官との間で、普天間基地の辺野古「移設」をめぐり激しいやりとりが行われていた。「辺野古沖縮小(浅瀬)案」を主張する米側に対して、日本側は「キャンプ・シュワブ陸上案」を主張し、最終的に「沿岸案」で合意した。その経過を記した春原剛著『同盟変貌 日米一体化の光と影』(日本経済新聞出版社)に次のような一節がある。

〈米側は日本の提示する沿岸案を受け入れる見返りとして、当初、千五百メートルとしていたヘリポートの全長を千八百メートルに延長することを求めた。海兵隊が大型ヘリに代わって、導入を検討している垂直離着陸機V22オスプレイを念頭に置いたものだった。ヘリのようにプロペラを上にして飛ぶことも、プロペラを前に向け飛行機のように飛ぶこともできるオスプレイの運用を考えれば、滑走路は長いほうが使いやすい、との理由だった。
 大野らはこれが最後の条件闘争になると踏んで、ローレスの要請を二つ返事で受け入れている。
「将来、いろんな機能が出てくる可能性がある」
 大野は延長の理由をそう説明した。この時、合意案は滑走路の横にL字形になるような大規模な駐機場を敷設する計画も盛り込んでいた。
 兵舎部分との兼ね合いを防衛庁は指摘したが、この駐機場部分の具体的な使用目的は明らかにしなかった。後に、この「のりしろ」部分が最終的なV字型滑走路を生み出す下地となっていく〉(187ページ)。

 1800メートルの滑走路の長さはV字型滑走路計画にも受け継がれ、民主党中心の連立政権誕生でいったんそれが頓挫したあと、鳩山政権の公約破棄によって交わされた5月28日の〈日米共同声明〉でも以下のように保持されている。

〈両政府は、オーバーランを含み、護岸を除いて1800メートルの長さの滑走路を持つ代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認した〉
 
 2005年10月の時点で日米両政府は、辺野古に建設される新基地にオスプレイが配備されることを前提として滑走路を1800メートルに延長することで合意していた。にもかかわらず、日本政府・防衛省はオスプレイ配備についてごまかしを続け、環境アセスメントでもオスプレイについては触れずにすませた。
 米軍が2012年秋のオスプレイ沖縄配備を明らかにしても、菅政権は辺野古の環境アセスメントをやり直す必要はないとしている。大幅な計画の修正はないからというが、政府・防衛省は最初から県民の目を欺いてオスプレイに対応する1800メートルの滑走路にしていたのであり、沖縄県民を愚弄するその姿勢は、自・公政権から民主・国民新政権になっても同じだ。

 11月28日に行われる沖縄県知事選挙まで1ヶ月を切った。民主党沖縄県連は結局、独自候補擁立を断念した。国民新党の下地議員も、立候補しないと明言、と報道されている。27日には伊波洋一前宜野湾市長が、28日には仲井真弘多知事が知事選に向けての公約を発表している。他にも幸福実現党から金城竜郎氏が出馬表明しているが、11月11日に告示される県知事選挙は、伊波、仲井真両氏の事実上の一騎打ちとなる公算だ。
 言うまでもなく、今選挙の最大の焦点は、普天間基地の「移設」問題である。仲井真氏は選挙前になって「県外移設」を主張しだしたが、自公政権下では辺野古V字型滑走路計画を容認した上で、沖合移動という微修正を求めていた。その背景には埋め立て利権が指摘されていたが、仲井真氏は自らが唱えていた辺野古「移設」容認、微修正要求という「県内移設」の主張が誤っていたと認めたわけでもなければ、否定したわけでもない。これまでの主張から「県外移設」に変わったのは、政権交代と県民世論という外部要因に対応したものでしかなく、それ故、「県内移設」反対を明言することはない。
 「県内移設」反対を明確に打ち出せば、これまで主張してきた辺野古「移設」容認、微修正要求も否定することになり、普天間基地「移設」に対して180度の方針転換となる。仲井真氏はそこまで踏み込みたくないのだろう。5月28日の〈日米共同声明〉が辺野古回帰であることを見れば、仲井真氏が主張していた微修正を菅政権が受け入れる可能性は十分ある。むしろ、菅政権はそれを待ち望んでいるだろう。仲井真氏からすれば、「県内移設」反対で高まる県民世論さえなければ、菅政権と微修正で交渉したい、というのがホンネではないか。
 一方の菅政権からすれば、仲井真氏が再選されれば任期はさらに4年ある。その間に県民世論の沈静化、変化を促しつつ仲井真氏と交渉を重ね、建設位置をずらす程度の〈日米共同声明の見直し〉=微修正要求を受け入れて、辺野古計画を強行するつもりだろう。公有水面埋め立ての権限を持つ県知事を、「県内移設」反対を明確にする伊波氏にさせてはならじと、菅政権はこれから知事選への介入を図るかもしれない。しかし、過去の知事選で言われているように、政府が機密費を使って特定候補者のために裏工作することは、決してあってはならない。
 選挙前になると有権者に受けるタテマエを打ち出し、当選するとホンネを出して公約をひっくり返す。仲井真氏の「県外移設」要求がそういう二枚舌でないというなら、仲井真氏はこれまで主張してきた辺野古「移設」容認と微修正要求は誤りだったと認め、それを否定して辺野古回帰はあり得ないことを示した上で、「県内移設」反対の意思を公約として打ち出すべきだ。
 仲井真氏は9月12日に行われた名護市議会議員選挙で、島袋吉和前市長と共に辺野古「移設」を容認する候補者を支援していた。結果は仲井真氏が支援していた市議会野党の惨敗に終わったが、そういう仲井真氏の行動を見れば、仲井真氏が言う「県外移設」の内実も透けて見える。
 仲井真氏はオスプレイ配備についても今頃になって反対している。しかし、自らが容認してきた辺野古「移設」計画で、オスプレイ配備が前提となっていたことを知らなかったとでもいうのか。白々しいかぎりだ。


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1 コメント

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あんやさ! (なさき)
2010-10-30 09:56:53
仲井真知事やすでぃにやまとぬ 大企業や政治家ぬちゃーから、うほーく銭かきあちみちちょーいびん。那覇市長んまじゅんやいびーん!銭ぬたみなかいや魂売てぃんすむん、考えやびーん。銭がねーんしやいっぺーでーじやしが、銭ぬたみなかい、死ぬるくとーやないびらーん!

やまとーがうちなーかい銭落とぅしねーびーしむるどぅぬとくるなかい還元そーしや、ウチナー人やわかとーびん。うちなーかいや雀の涙どぅやいびーる。うったーやうちなー、麻薬付けにし、ヤクザぬごとぅ いちからんいちちしみてぃ どぅぬ得分どぅ 考えとーる。親分ぬ命令ぬままに仲井真やなまやまとぬ大政翼賛会ぬ意ぬままやいびーん!うぬ人や、わったー、代表やあいびらん!
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