慣らし(鳴らし)込み不足のため、クレッセンドの音がまだ硬い。管楽器など、ちょっとうるさいので専らCDでピアノ・トリオを聴いている。
そこで選んだ一枚がコレ、人気盤。
74年に発刊されたあの「幻の名盤読本」にもリスト・アップされています。ただ、その評には「なかなか快調なプレイが展開されているが、いまひとつピリッとしたところに欠けるのが残念」とコメントされている。
でも、そうかなぁ~
恐らく、評された方は、40年代後半、将来を嘱望された若き時代のプレイと比較して、という事なのだろうけど。
確かに、この作品の人気となる1曲目の‘Mellow Mood’、2曲目の‘Cottage For Sale’では、シビアな聴き方をすれば、「甘さ」を感じないワケではありませんが、「緩み」は感じられない。
‘Mellow Mood’ではタイトル通り、円熟なプレイがご機嫌だし、ちょっぴりメランコリーな‘Cottage For Sale’もGoo。この辺り、当時のARGOのレーベル・キャラクターにフィットしている。
また、5曲目、‘On Green Dolphin Street’ではスケールが大きく、スピード感溢れるプレイは、曲想にピッタリです。
で、マーマローサの真価(の片鱗)が聴かれるのは、7曲目から。レコードではB面の2曲目からなので、ついつい聴き逃してしまうかもしれない。
ヴァン・ヒューゼンのバラード‘I Thought About You’、さりげなさの中にキリッとした情感が埋め込まれた知られざる名バージョン!
淡麗ながら凛としたピアノ・タッチが極上。
続く‘Me And My Shadow’、では豊かなイマジネーションとインスピレーションに富んだプレイが冴え渡り、「お見事」の一言。
‘Tracy's Blues’でもパウエルに引けを取らなかったと言われるテクニックに支えられ、ブルース・フィーリングと躍動感に満ち溢れている。
ラストの‘You Call It Madness’では優雅なプレイの中にも気品さえ感じさせ、並のプレイヤーとは格の違いを聴かせる。
こんな優れたプレイを演じながらヤク?アルコール?が原因で一度も桧舞台に上がれなかったとは、ジャズ界にとって痛恨の極みと言えるでしょう。
なお、パーソネルは、
DODO MARMAROSA (p)、RICHARD EVANS (b)、MARSHALL THOMPSON (ds)
録音は1961年5月9,10日