風のささやき 俳句のblog

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300年生き抜くことは有り難く何を思うかブナの巨木よ 【短歌】

2020年07月08日 | 短歌

先日とあるブナ林を歩く機会がありました

そこには樹齢300年にもなろうかという
ブナの巨木がありました

300年というのは
どれだけ長い年月でしょう

その間静かにその場所で
生き続けてきたブナの生命力を思うとき
畏敬の念さえ湧いてきます

その木の前に座って
しばし休憩を楽しんだのですが

自分の心はすべて見透かされているようで
老先生の前に座っている
出来の悪い生徒のような
こそばゆい気分でいました

シャツをまた湿らす涎や半夏生 【季語:半夏生】

2020年07月04日 | 俳句:夏 時候
おんぶ紐で前に抱きかかえ
子供と出かけたのですが
顔が痒いのか眠いのか

時々顔を僕のシャツにこすりつけます
それだけならいいのですが
それと一緒に大量の涎もくっつけてくれます

汗をかいているわけでもないのに
シャツの涎をつけられた部分は
しっとりと濡れてきます

肌の上に直接シャツを着ていたので
やられたなと思いつつも
まあ元気な証拠と気にしないようにして
買物を続けていました

三日月の夜 【詩】

2020年07月02日 | 
「三日月の夜」

薄い三日月が空に昇った
冷酷な色合いの鋭利な刃物のように
僕は首筋が寒くなるのを感じながら
その三日月から目が離せないでいる

バス停に立つ僕を拾い上げようと
一台のバスが近づいてくる
ほっとしてバスに乗り込もうとする
僕の背中に何かが切りつけてくる
思わず後ろを振り向くと
そこには空に居座ったままの三日月がいるだけ

僕は一瞬の隙を衝かれてしまったらしい
胸の中では確かに何かが切り落とされてしまった
さっきまではきっちりと
僕の中に整理されていた出来事が
意味をなくしてバラバラになった

薄暗いトンネルの中のようなバス
座っている人は一様に
背中を丸めて手元に見入っている
伸びすぎた爪の手入れ
それとも不幸な手相を変えようと
爪でも立てているのだろうか

血に飢えた蚊が僕の肌にやってくる
どこから紛れ込んだのだろう
真っ黒な大きな蚊だ
僕は無造作にそれを叩き潰して床に捨てる

信号毎にタイヤを止めるバス
そうして丁寧にもエンジンまで止めて
赤信号一つに何を恐れなしているのか
何人も人を乗せたこんな大きな体なのに

胸の内が暗い闇に侵食される
暴力的な気持ちが僕に吹き溜まる
僕はこのまま街に解放されてはいけない
膨れ上がった僕の肩は
きっと人をなぎ倒そうと欲するのだろう

窓の外を覗いていると
その面に映っている善人面した僕の顔
嫌悪感を覚えてそいつにはつばを吐いている

こうも簡単に僕は人間らしさを失うらしい
三日月の鎌に切りつけられて
あるいは素直な僕が蝙蝠のように
闇に解き放たれる夜なのかも知れない

子が豆と言って食べてる干しブドウ近くもないが遠くもないか 【短歌】

2020年07月01日 | 短歌
干しブドウが大好きな我が家の子供たち
ご飯も食べずに干しブドウばかりを
食べていることもあります

そんな二人は干しブドウのことを
豆と言っては
「豆、ちょうだい」とおねだりをしてきます

確かに色合いといい大きさといい
豆と似ているので
決して間違いとは言い切れない感じもします

子供なりの立派な類推能力だと思うと
ほめてやりたいぐらいです

今日も小腹が空いては
豆をねだりに近寄ってくる子供がいます