風のささやき 俳句のblog

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大丈夫 【詩】

2023年07月20日 | 
「大丈夫」

夏の浜辺に、遊んでいる水着の学生
水しぶきと歓声と、かき氷のイチゴシロップ
僕は何を自分で、苦しくしているのだろう

波が足元に来て、去っていく
水平線に、入道雲が湧いている
僕は何をぽっかりと、悲しんでいるのだろう

招く手があるように、生暖かい潮風が
体を海に、招き寄せようとするけれど、動かない僕は
何を心に沈め、重たい錨、下ろしているのだろう

白い貝殻の片割れが、波と一緒に、何度も転がる
ゴムボールを追いかけた犬が、息を切らし走って行く
全てが慌ただしい、追いつけない、僕だけが
違う時間に、囚われているのではないかと思うほどに

思わず、目を細めてしまう太陽だ
日に焼けた肌を、更に焼く人もいて
小魚が海の中で、光を反射する
僕は焼き尽くされてしまうのだろうか
マッチのように燃えやすい、体をして

「大丈夫」「たいしたことはない」
と、独り言を呟く
処方箋のようにみんなが、良く使うおまじない

砂にも写し取って、自分への暗示
たいしたことはないから、大丈夫、きっと、

波はすぐさま、さらっていった

海に気軽に、捨てられればいい
潮風に破れてしまえばいい
貝殻の中に、閉じ込められてしまえばいい

心の苦さは
大丈夫ではない
たいしたことであるから

また、取り留めもなく
海に、心迷わせに来た僕だ
偶然にも波が、遠い島からの答えを
運んできていたら
拾うこともできるかも知れないと思って

知らん顔した鴎、ビーチパラソルの下の会話
投げ捨てられたビール瓶、ビーチバレーの歓声
僕が大丈夫ではない時に
君が遠くで笑っている距離が寂しさであって

転がって来た野球のボール
投げ返してあげると
ありがとうございますの、元気の良い声
浜辺に練習に来た高校生だろうか

きっと、大丈夫ではない
寂しさは、みんなが抱えて
それでも慰めの言葉を
かけあう以上のことも出来なくて

たいしたことはあるだろうけれど
きっと、大丈夫だよと
届く芯のある言葉
優しい眼差しと共に
いつしか持てる自分でありたい


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