風のささやき 俳句のblog

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海 【詩】

2023年08月17日 | 
「海」

白い窓枠に レースを飾って
海は夢見たままの 穏やかな青い絵画
一息ごとに 色合いを変える
幸福な絵筆の 踊りやまない

真珠色の波に触ってきた
風にはオリーブの艶
部屋に遊びに来ては
僕を子供のように幸せにする

白い貝殻のらせんを 一歩ずつ
さかのぼるよう ゆっくりと記憶を探る
肌に触れるものの すべてが楽しい
その感触のつながる先へ
開いてみる 水色の扉

僕の顔に 懐かしく
温かいものが 押し寄せる
それは 遠い海の向こうにある
幸いの国 その追憶の波

そこに暮らす
一人一人の顔を思い浮かべながら
したためる文字は
青空と夏の雲とを添えて
温かい涙で濡らした
切手をはって
今の僕へと消息を伝える

確かにそんな時が
あったことの追憶を
誰も胸にひっそりと飾る
小さな額縁に入れて
やがては窓から吹き寄せる
潮風に 色褪せて行くものとして

僕だけの胸には 大切な
誰にも触れられない 秘め事
その懐かしさへの感傷も
海にとっては きっと食べあきた
ありふれた 代り映えのない出来事


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