アートの周辺 around the art

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アートにとって価値とは何か(三潴 末雄)

2015-04-20 | 

  アートにとって価値とは何か

最近、スマホに時間を取られているのと、目が弱ってきたせいで、すっかり読書量が減ってしまいました…。読みたい本はいっぱいあるのになあ~。

さて、本日紹介するのは、ミヅマアートギャラリーを主宰されている三潴末雄さんによる半生を記した自著。ミヅマアートギャラリーは、山口晃さんや会田誠さん、宮永愛子さんなど、今をときめく現代美術家を輩する画廊であり、インパクトが強烈だった「ジパング展」をキュレーションされていたことも記憶に新しい。会場となった高島屋の心意気に感心していたが、本書の中で、実は三潴さんによる戦略だったことがわかった。日本のアイデンティティを示す現代アーティストたちを広く知ってもらうために、昔から文化の大衆化を担ってきた百貨店を選び、またその外商による販売力も狙ってのことだった、と。

本の帯にもあったが、三潴さんは常に「闘っている」という印象を受けた。美術の世界に入る前、学生時代には学生運動に身を投じていたというのは意外だった。ミヅマアートギャラリーが開廊したのは、バブルが崩壊した直後の1994年。経営的にも苦しい中で、三潴さんは当時の輸入超過の美術をめぐる状況に憤り、この状況を打ち破る日本の画家を発掘し紹介していくことを決意する。

これは、村上隆さんの本にも書かれていたが、美術業界においては、やはり今なお「西洋美術の文脈」で作品の価値が評価されることが世界基準であり、そこに乗らない限りは「お土産物」でしかない、ということが本書の中ではとても強調されていた。これって、単なる美術ファンにはあまりよくわからないのだが、きっとアジアで活動する作家にとって実に巨大な壁として立ちはだかっており、また「商売」となると、ホントに切実なんじゃないか、と感じる。

そこに抗って、三潴さんが擁したのは、前述の3名はじめ、鴻池朋子さんや池田学さんなど、「日本」を根底に持ちながらも、新しい解釈で他にはない表現を繰り広げている作家たちだ。彼らの作品を見ると、深い血の奥がざわめくような感覚を覚え、異世界を見たのとは違う驚きがある。これは同じ日本の作家だから、としたら、外国の人が彼らの作品を見た時、いったいどんな感覚を持つのだろうか?興味ある。

三潴さんは、現在、日本に留まらず広くアジア、とりわけインドネシアの作家に注目しているとのこと。中国やシンガポールにもギャラリーを開き、豊饒な土着文化を持ちながらユニバーサルな作品を生み出す才能の発掘を行っている。

西洋に出かけ日本のアイデンティティを背負って闘った画家として、藤田嗣治と岡本太郎の二人を讃え、今の最先端アートとしてChim↑Pomやチームラボを評価する三潴さんには、共感するところがとても多かった。先日、日曜美術館で特集されていた「光琳は生きている」でも、三瀦さんが評価するアーティストが多く出演していたのは、そろそろ三潴さんの闘いの戦果があらわれてきたってことだろうか。

「価値観」って難しい…。知らないうちに染められているんだろうな~。それを揺さぶってくれるようなアートに、これからもどんどん出会いたいと思う!


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