アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

「志村ふくみ・志村洋子 作品展 しむらの色 KYOTO」細見美術館

2013-05-01 | 展覧会

ふくみさんの着物には風景があり、洋子さんの着物には物語がある―。

人間国宝である染色家、志村ふくみさんと、その母の薫陶を受け継ぐ娘、志村洋子さん。この母娘の着物の特徴は、何と言っても色だと思います。自然の大地から採取した植物を使って糸を染めることを、ふくみさんは「草木の抱く色をいただく」と表現するそうです。

この展覧会の作品を見ていると、キャプションで何の染料かが紹介されているのですが、藍や茜、紅花など染料でおなじみの植物に交じって「玉葱」とあって、なかなか渋くて素敵な茶色にびっくり。艶やかで多彩な糸の束も一緒に展示されています。

その一色一色ごとの美しさもさることながら、その組み合わせの妙が、何とも言えずに素敵です。縦糸と横糸が織りなす絶妙な色のハーモニー。 

ふくみさんの着物を見ていると、そこに本当に風景があるように感じられます。水面が風にそよいでいたり、草が湿り気のある生気をたたえていたり、大地に日の光が反射していたり…。自然の恵みを凝縮して作られた糸がそれを見せてくれるのでしょうか。作品の前に立ち、シンと静かな心持ちでその風景とすっぽり対峙することは、とっても素敵な体験です。

一方、洋子さんの着物は西洋の聖書にインスピレーションを求めるなど、母とは違った新しい境地を開いています。タイトルと呼応して、色や模様が何かの出来事や登場人物を象徴するような、深い物語性が湛えられています。色使いも、ヨーロッパ的な華やかさが感じられます。

母娘が作歴30周年を記念し、二人が研究・実践してきた染色表現の集大成を紹介するこの展覧会。縦と横に糸を交差させるだけの、着物という形の決まった枠の中で、無限の宇宙を生み出している母娘の作品を、ぜひご自身の目で体験していただきたいものです。

期間中は、美術館の屋上にある気持ちのいい茶室「古香庵」で、志村母娘の着物をイメージした目にも舌にも美味しいお菓子が味わえます。

5月6日(月祝)まで。連休のお出かけにぜひ!


Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 籔内佐斗司流「仏像拝観手引... | TOP | 芸術新潮でブリューゲルを堪... »

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | 展覧会