やんでいたと思ったら、急に雨が激しく降り出して
降り出したかと思ったら、また静かになって
この町上空には厚い雲が垂れ込めて
台風が秘かにタイミングを計ってまだ息を潜めているみたいだ
思い出すのは、光る夜。
『この前はお母さんと歩いたから、今度はお父さんと歩こう』
そんなこと、思ったな
賑やかな夜の町を歩くことなんて滅多になかったけど、
年に数度はそんな機会が訪れて、浴衣を着て下駄を履いて
風船を買うのがお決まりだった
買ってもらったそばで、ウッカリ空に飛ばしてしまった風船を空高く
米粒くらい小さくなるまで見送る。
それもまたお決まりで
飛ばす度に『あー、今年もやってしまったぁ…』と叱られながら反省するのも、
やっぱりお決まりだった
お父さんとお母さんと、姉の姿は…記憶にない （←ゴメン）
提灯は
夜の中で夏の余韻の中眩しく光る。
光る夜。
秋になると思い出すそんな風景
台風シーズンは、あの頃のシーズン
まだ暑いけど
いつのまにか、秋の気配が９月と一緒に訪れたみたいで
今年もまた思い出した夜
