雲の色したスーツを着て
幸せそうというか、安らかというか、そんな風に思えたから
夢の中で僕は嬉しかった
古ぼけたピアノの横で壁にもたれ
椅子に座った姉を、静かに微笑みながら眺めていた
姉は気付いていないようだったけど
そんな二人を僕は見た
夢の中でたぶん
父の、姉への感謝の気持ちを見ていた
雲の色のスーツは三つ揃い、胸ポケットは赤いハンカチーフ
柔和な表情と伊達な彼のすがたは
少し若返って、行きたい場所へ行き、なりたいものになり
優雅で安らかな国に居るにちがいない
最近、甥っ子が、似てきたなと思うことがある
真っ白い雲色のスーツを着こなしていた父を思い出す
何年も前に見た夢のこと
そういえば、まだ姉にこの夢のこと言っていなかったかも
何年も経ってから気付くのは遅すぎて自分でも呆れてしまうけど、
姉に感謝の気持ちを伝えてくれって言いたかったのかな
じゃあ、今度会った時に言わなくては
たぶん、きっと大丈夫だね
だから、ぜったい僕ら
雲のように、やわらかく笑っていこう