無線室

無線通信、特に受信に関する考察、実験、感想などを‥‥。

JマークとCタイプ

2014-07-12 00:41:40 | 受信機・アンテナ
 受信機の中には、一部周波数が受信できない歯抜け仕様として売られています。カタログスペックでも、その部分は受信できないことになっているのです。受信機のシリアルナンバーのそばに三角形に囲まれた「J」が書かれており、このマークを「Jマーク」、歯抜け仕様の受信機を「Jマーク付き受信機」と呼びます。

 そもそも、1990年9月に当時の郵政省が「一般向けに製造販売されている受信機は、電気通信事業用の電話の周波数が受信できない構造とすること」という行政指導を業界に行ったのが発端。「自動車電話やコードレスホンなど、有線電気通信のための電波を受信することは、電気通信事業法違反になる」という解釈によるものです。
 つまり、電話回線として使われる電波は、通信の秘密において電波法ではなく電気通信事業法を適用することを意味します。言い換えるなら、「受信したら内緒にしておけ」ではなく、「受信そのものが許されない」ということなのです。

 郵政省が「電気通信事業用の電話の周波数」として指定した「受信規制対象周波数」は、以下の通りとなります。
対象周波数帯(MHz)用途
253~255小電力型コードレスホン子機側
262~266●沿岸船舶電話(新方式)移動局側
271~275●沿岸船舶電話(新方式)基地局側
380~382小電力型コードレスホン親機側
412~415新幹線列車電話移動局側
810~830●コンビニエンスラジオホン基地局側
830~832●空港無線電話移動局側
●航空機公衆電話基地局側
832~834●マリネットホン基地局側
860~885☆自動車電話基地局側
885~887●空港無線電話基地局側
●航空機公衆電話航空機側
887~889●マリネットホン移動局側
915~940☆自動車電話移動局側
940~960●コンビニエンスラジオホン移動局側
 指定されたのが今から24年も前なので、現在では別用途に割り当てられているものが大半です。表のうち、「●」は別用途に割り当てられたもの、「☆」はデジタル化されたものを示します。
 別用途に割り当てられた周波数も、デジタル通信が行われているのが実情。もはや、規制自体が意味をなさなくなっているのです。

 そんな規制も、Jマーク付き受信機でも内部のチップを除去するなどの改造を施せば、規制対象周波数が受信できるようになります。いわゆる「フルカバー化改造」ですが、すでに改造済みで売られている受信機が結構あるのです。
 ショップに行くと、改造済みの受信機には箱に目印がしてあるとのこと。店員に「改造済みをください」と言えば出してくれますが、まれに無改造の受信機を売られることがあります。
 そうなってしまえば、改造するしかありません。多少の技術力があれば、『ラジオライフ』やネットでの改造方法を参考に自分で改造することができます。技術力がない場合は、購入したショップにお願いするか、腕に覚えのある知り合いに頼むことになるでしょう。

 さて、規制対象周波数の412~415MHzには、Cタイプの周波数が含まれています。それだけではなく、各種業務無線も該当するのです。有名どころでは、東京ディズニーランドの414.9000MHzも規制の対象になっています。
 受信機を買ってCタイプを楽しもうと思っても、フルカバー改造を行っていないために周波数が合わせられないという現象が起こってしまいます。412MHzの次が415MHzとなってしまい、414.4250MHzの入換波や414.5500MHzの上り波がスルーされるのです。先に述べたように、改造すればCタイプも全3chフルに受信できるようになります。

 もし、規制対象周波数の見直しが行われたとしても、ほとんどデジタル化した新幹線列車電話のうち、山陽新幹線だけが現在もアナログのまま。それが幸いして、列車無線の一斉指令も山陽新幹線は受信することができます。
 今後もアナログのままなら、見直されても規制の対象になるのは間違いありません。痛し痒しといったところですが、改造という一手間を加えればちゃんと受信できるので安心してください。