書肆吉成で初谷むいさんの歌集「花は泡、そこにいたって会いたいよ」発売記念のトークイベントの、山田航さんとの対談を拝聴しに行く。吉成さんの紹介で、初谷むいさんや山田航さんや書肆侃侃房の方とご挨拶できてうれしかった。
来場者は初谷むいさんの愛読者の方と、北大短歌会の方々が多い。
ということは私は割と例外者なのだが、お二人の人柄に触れて楽しいお話を聞けて良かった。
長年の研鑽の賜物の歌集だが、やはり初々しい。
「CMにふつうに感動したりする 夢という夢はないけどそれは希望だ」という歌があったりする。
私は「何となくつまらない日に目に留まる夢だらけの字がなぜか嬉しい」という短歌をゆうちょのCMを見て書いた。
むいさんの「めが覚めて夢の中ではすきだった誰かがすこやかに遠ざかる」というのもいいな。
私は異性の夢を見ると健やかに忘れることができず、一日思い出したりする。
むいさんの歌に
「ぼくたちは狂っていたけど降りかかる雪がふたりを水でつないだ」というのもある。
狂気の部分にふつうは直面できない。私はそうだ。むいさんのうたは意表を突く元気なのや、切ない気持ちの表現も多いけど、ご本人が喋っていたように闇を襞のように抱えていた歌が多いのに気づく。
切ない恋愛表現の世界から遠ざかって早幾年の私だが、これを読むと今を生きている息遣いが伝わる。
「ひとにさわるときにはじめてわたしから熱がでていてあたたかかった」というのもおじさんには書けない。
この世を去る前に一度でいいから少女になりたい、という歌がミラクル・リージョンにあるが、そんな読後感だ。
初谷むいさん、名前通り初々しい笑顔だった。
遠い日に憧れていたあの人に逢った気がする歌の一コマ