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※記載事項について、一切責任を負いません。

過重労働とハラスメント

2009-06-14 21:23:38 | 社会保険労務士

先週は、珍しく体調が悪い日が続いた。
仕事は一日も休んでないが、1度だけ今年初の通院もあった。
特段の病気等でもなく、安心したところであるが、今後も健康でいられるよう努力したい。

ところで、最近の新聞記事を読んでいると、とにかく「心の病」に関する記事が目立つ。
そして、その心の病について、会社が責任を負うケースが注目されている。
会社が責任を問われるケースは、大きく分けて次のいずれかに該当するケースだ。

①過重労働
②ハラスメント

過重労働は、原則として長時間労働であるが、比較的短期間における責任等の負荷が大きな場合も対象となる。
長時間労働は、恒常的に法定時間外労働が1カ月当たり80時間以上ある場合及び直前1カ月の法定時間外労働が1カ月100時間ある場合は、ほぼ機械的に過重労働とされる。

80時間未満なら問題とならないわけではない。
法律上の法定時間外労働の上限時間が1カ月45時間以下とされている以上、この時間を超える時間数である場合は、過重労働と認定される可能性がある。

一つの目安として、「60時間」という数値に注目したい。
労働基準法改定により、中小企業等は実施が先送りされてはいるものの、通常25%割増である法定時間外労働割増賃金について、60時間超に対しては50%以上の割増を要することとなる。
実際、60時間という数値は、過重労働判定において大きな目安と考えられているようだ。

恒常的な労働時間数については以上だが、あとは臨時的な多忙等について考えてみたい。
会社によってまちまちであるが、私見は、「2週間連続労働」と「連日12時間以上労働」の両方を概ね満たせば、過重労働と認定される可能性が高いと考える。
労働基準法では、原則毎週1日の休日を義務づけている。
そして、1日12時間労働は1週間休み無く働けば週84時間労働であり、1週間で既に44時間も法定時間外労働となってしまう。
この状態が2週間続くようであれば、1カ月の法定時間外労働が100時間超である場合と比してもはるかに過重労働と考えられる。

過重労働である場合、その者が精神疾患等心の病が発症した場合、労働災害として使用者が責任を負う。

次にハラスメント。
最近注目されるパワーハラスメント(パワハラ)と、すっかり定着したセクシュアルハラスメント(セクハラ)が有名だ。
そのほか、ドクターハラスメント(ドクハラ)、アカデミックハラスメント(アカハラ)などの言葉もできている。
いずれも、人権侵害とされる。

被害者が精神疾患等の心の病になったときは、加害者であるハラスメントの実行者及びその使用者である会社が責任を負う。

ところで、会社が責任を負うとしても、本人としては心の病にならずに普通に幸せに生きていけるに超したことがない。
精神性の疾患であるため、まずは自分自身がそうならないように、セルフコントロールが必要だ。
それでも発症しそうな(又はした)場合は、早期対処が望まれる。
少なくとも、放置し続けた結果、精神的に追い込まれたりして過労自殺等に至ることだけは避けたいところだ。

会社としては、「今まで問題なかった」ことが「今後は大問題となるリスクがある」ことを強く認識する必要がある。
一般に、特に中小企業においてはトップ(社長)が変わらなければ変わらない、という構図があるため、リスク予防できるかどうかは社長次第、というところがある。

現在の30代後半以上くらいの世代は、サービス残業は当たり前、パワハラという言葉すら無い時代に厳しい上司・先輩と接した経験がある人が多い世代であり、現在の状況に合わせてリスク予防のために何か手を打とうにも根本的に何故そのような対策が必要であるか理解できないことが多い。
実際、小職も平成5年3月まで(もう16年前の話で恐縮)はサラリーマンだったが、残業代とかもらったことはないし、1カ月の法定時間外労働は100時間超だった。
そして、当時はこれらのことは、「当たり前」のことであり、社会習慣として何ら疑うことなく「こういうものだ」と思っていた。
しかし、当時のサラリーマンは、まだ終身雇用制も完全に崩壊したわけでもなく、事実上年功制賃金で将来の不安もそう大きなものでなく、「黙って勤めれば」将来は安泰だと思える背景もあった。

バブルが崩壊した。
そして、失われた10年があり、終身雇用制は崩れ、年功制賃金は成果主義にとって代わり、将来は安泰ではなくなった。
結果として「忠実なる従業員」が激減した。
そして現実に、リストラの嵐が吹きまくった。
このことが、退職者が過去のサービス残業代を請求する、という事件が続発することとなったが真の原因だろう。

精神的に追い込まれても、何とかついていけば何とかなる、という時代も過ぎ去った。
いつリストラ対象者となるかも知れない不安感も払拭できないため将来に夢を見いだすこともできない。
将来に夢や目標があり、それに向かって初めて生き生きと働けるのが人間であるが、これが無ければいつ心の病になってもおかしくない。
そして、実際に心の病が発症する者が続出する。

以上のように、時代背景が心の病を発症させる素因を有している。
そして個別的に過重労働やハラスメントがきっかけで、発症してしまう。
悪循環である。

会社は、どのような理由があろうとも、過重労働になりかねない長時間労働をさせてはならない。
そして、パワハラやセクハラの加害者となりかねない管理職クラス等への教育を通じて徹底的に周知しなければならない。
これらは、何よりも会社を守るためであり、同時に従業員を守り、ひいては社業を成長させるための必要最低条件といえるだろう。




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