馬糞風リターンズ

世ノ中ハ何ノヘチマトオモヘドモタダブラリト下ツテモオラレズ

「ハドソン川の奇跡」と「超高速参勤交代リターンズ」

2016年10月05日 | 映画
今月の映画を観る会は「ハドソン川の奇跡」でした。
映画を観る会恒例の「感想コメント」発表は前回から行わないようになったようです。ほかの人がどのように感じたかを知るのも楽しみでしたが、取りまとめてネットにUPするのも大変なことで、世話役の方のご苦労もよくわかります。また、半ば強制的にコメントを求められる側にしてもなかなか気の利いたコメントを考えるのも億劫なことで中止も仕方ないことかもしれません。
この映画の見所は何といっても離陸して間もなく大都会ニューヨーク上空でバードストライクにより両方エンジンが停止、飛行高度の維持が出来なくなり、緊急着陸に迫られ最悪の条件下で熟達した機長の冷静かつ沈着にして素早い判断、最寄りの空港への着陸ではなくハドソン川に着陸する決断。どれ1ツが欠けても成功できないまさに奇跡の水面着陸、その僅か数分間の不安、緊張、そしてそのあり得ない厳しい状況下での熟達機長の操縦。そして奇跡の水上着陸後の幸運ともいえる定期フェリーが現場近くを航行していたことなどの救出劇。それらを映像でどこまでリアルに表現できるかが見ものです。
映画ではこの肝心のバードストライク以降の緊迫した状況を期待とは程遠い素っ気無い表現に終わっていました。
 現在、映画館の99%はデジタル映写です。また技術革新で素晴らしいCG技法でフイルム撮影の映画では考えられなかった表現が可能になりました。この映画もIMAXデジタルカメラで撮影されました。撮影秘話によると、ハドソン川に着水、救出の場面は飛行機を後で入れこむ空間をあけて撮り、それから、飛行機を別に撮影して合成したそうです。ハリウッドではストーリーよりも、ツールについての映画を作っているように思える、と監督クリント・イーストウッドは語っていますが、今回の映画に限って言うならば離陸から着水、救出劇をいかにリアルに緊迫感をもって表現するかが監督の腕の見せ所のはずです。奇跡を成し遂げたヒーローのはずの機長が事故調査委員会の査問にかけられたことをメインテーマに据えていますが、これこそ予定調和の見本のようなものです。観客は事故発生からの結末を十分承知しています。事故調査委員会の査問がどうなるかについても先刻ご存じです。それをストーリーに仕上げてどうするの?とお聞きしたい。新聞週刊誌、ネットで大評判ですが・・・。
 事故の後、調査委員会で検証こそ大切なことで、もし羽田空港で起きた逆噴射での海面墜落事故と同じことがあったのかどうか検証しなければ分からないことです。何か事故調のメンバー敵役にされていましたがピント外れでは・・・。
因みにNHK BSプレミアム「アナザーストーリズ」で「ハドソン川の奇跡 ニューヨーク不時着 世紀の生還劇」が放映されました。こちらはドキュメントですからいかにこの事故が奇跡的かを余すところなく伝えています。

 文句なく楽しめた映画です。こんな映画にグチャグチャ講釈するのは野暮というものです。この映画の脚本家・土橋 章宏は豊中市出身、豊中高校卒だそうです。当ブログも豊中に住んでいます。豊中市報にも登場、また各メディアにも頻繁に登場する人気者になったようです。
映画は先ほども言いましたように大変面白い映画でしたが、時代劇がこのような形でないと生き残れないのは残念なことです。今話題の「真田丸」で長澤まさみ演じる「きり」のセリフや立ち居振る舞いがトレンディードラマと全く変わらないと苦情が寄せられているようです。時代劇を作った職人、俳優たちが絶滅したら・・・。水戸黄門、大岡越前、・・などがチョンマゲ姿のトレンディードラマでしか作れない時代はちょっと寂しい。