赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

台湾有事と中国軍の動向――真実の中国⑤ topics(595)

2022-09-23 09:47:02 | 政治見解



topics(595): 台湾有事と中国軍の動向――真実の中国⑤


台湾有事について

中国の軍事問題で一番関心が高いのは、台湾有事はあるのか、沖縄侵攻はあるのかという2点です。結論から言えば、習政権の政治的思惑としては直ちに台湾をとりたいというのが本音ですが、ウクライナの反転攻勢とロシアの国際的孤立からは躊躇せざるをえない状況にあります。一方、反習近平派にとっても習氏をつぶすために、台湾侵攻は望ましいと考えています。ただ、軍部が言うことを聞くか、ここが最大のポイントです。

現在、軍は士気が低く、軍幹部は汚職まみれ。その上、兵器と銃弾は別々のところに管理されている現状に加えて、台湾に侵攻するほどの用意ができていない現状です。せいぜい、得意とする言葉の威嚇だけであまり戦争はしたくないようです。軍といっても、軍を理由にした利益集団にすぎないからです。だから、台湾に侵攻せよと言われて銃弾を渡されても、銃口は政権中枢部に向ける可能性もあります。

今回は、軍についての知りえた最新の情報を提供したいと思います。


威嚇は得意でも

台湾ボイスの林建良さんによると、先日、台湾軍が領空侵犯してきたドローンを撃ち落としたところ、これまでは台湾軍を罵倒し、あざ笑っていた中国が急にトーンダウンし台湾に向かって「冷静になれ」呼びかけたとのこと。中国人は強いのは口先だけで、本気で怒ると委縮してしまうようです。張り子のトラなのかも・・・。

事の発端は、8月の中ごろから中国が台湾の領空にドローンを飛ばしたのですが、それを見た台湾兵が石を投げました。この映像がネットにあげられると中国人は大笑いして台湾を侮辱しました。これに対して、蔡英文総統が「強力的な反撃措置を取るよう」指示し、8月30日に発砲、9月1日撃墜となったわけです。

8月30日の発砲の際には、外交部報道官の趙立堅が「中国の領土を飛んで何が悪い?」、環球時報前編集長の胡錫進は「中国のドローンに対する発砲は攻撃であって、中国は台湾の施設に反撃する」と意気軒高だったのですが、9月1日に撃ち落とされてからは「台湾側はいたずらに緊張を高めてはいけない。冷静になるように」と言う始末。以降、民間のドローンにも領空侵犯させないよう規制をかけています。台湾の後ろにアメリカの影を見てビビっているわけです。

要は、「必ず反撃する」と言っておきながら、本当にその事態になったら何もできなくなってしまうのが中国軍ということなのです


汚職激しい軍幹部、武器と銃弾は別々に

中国政府の要人にとって最も恐ろしいのは、民衆の反乱ではなく軍部のクーデターのようです。銃口から生まれた政権ですから、銃口を向けられる恐ろしさは人一倍なのかもしれません。そのために、軍隊は鉄砲などの兵器はあっても、銃弾は全く違う場所で管理して、演習のときに政権の許可を得て持ち出すことができるとのことです。したがって、衛兵の銃は空砲で、武装集団が襲ってきた場合はみんな逃げ出すと思われます。

なぜ、そのようなことになったのかと言えば、クーデターも恐ろしいし、別の問題として、みんながみんな兵器や装備品、弾薬に至るまで横流しをしているからだそうです。特に軍幹部になるには横流しで利益をえたら、それを賄賂にして出世してゆく。これが日常の風景で、軍の士気が全く上がらないのも頷けます。なお、軍監察の前の日には、横流しの証拠隠滅のため火災が必ず起きるというのも中国らしいことなのかもしれません。

一方、兵士も少子化の影響をもろに受け、一人が親族6人の面倒を見なくてはならないと言われ、戦争になったら真っ先に逃げ出すよう親から厳命されています。


台湾への侵攻能力

ここは軍事専門家の言葉を借りるしかありません。軍事アナリストの小川和久さんはこう語ります。

じつは中国の軍事力は、台湾への上陸作戦を実行する能力を備えていないのです。これは米陸軍と海兵隊の専門家には周知の事実で、当の中国軍自身も自覚しています。

第1に、海上輸送の問題があります。台湾に上陸侵攻して占領するためには、計算上、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に匹敵する100万人規模の陸軍部隊を投入する必要があります。それだけの部隊を運ぶためには、3000万トンから5000万トン規模の船腹量が必要です。ところが、中国が保有する民間商船を全部かき集めてきても、6200万トン。つまり中国には、台湾侵攻に必要な兵員を輸送できるだけの能力がないのです。

第2に、「上陸適地」の問題があります。仮に中国が上陸作戦に必要な船舶を確保したとしても、海から兵士を送り込むためには、3000人あたりにつき岩礁などの障害物のない幅2㎞ほどの海岸線が必要です。ところが台湾の海岸線1139㎞のうち、上陸適地はわずか10%ほど、13カ所しかありません。この限られた地点を目指し、中国軍は台湾側の砲兵部隊の射程圏外70㎞あたりの海域で輸送船から上陸用舟艇やホバークラフトに移乗し、殺到することになります。しかし、航空優勢を確保できない中国側には、上陸部隊を上空から支援するエアカバーに限界があります。

一方、迎え撃つ台湾側は、海空軍の強力な対艦戦闘能力で過半の中国軍を洋上で撃破し、残りの中国軍も上陸適地を固める陸軍部隊によって阻止できます。航空優勢だけでなく海上優勢(制海権)を持たない中国の上陸部隊は海の藻くずと化します。


どうもこれが真実のようで、中国は威嚇だけで台湾を落としたいというのが本音のところでしょうか。


台湾の能力

本年、6月29~30日にかけてのNATOの首脳会議では、12年ぶりに新しい戦略概念が発表されました。ここでは、中国を制度的挑戦、体制を脅かす存在であると位置づけ、ヨーロッパも中国を脅威とみなすコンセンサスができあがりました。

さらに、9月14日には、米上院外交委員会で「台湾政策法」が可決された。これは、全部で107ページに及ぶ法案で、台湾を全面的にバックアップする内容になっています。この法案を見て台湾の人は震えるほどの感動があったようで、冒頭には「台湾の安全を支持する。そして台湾の自決の権利を支持する。」と記載されているからです。

しかも重要な点は。「攻撃能力を持たないと抑止力にならない。攻撃も一つの防衛、台湾に攻撃の能力を与える」とし、「台湾を非NATO同盟国と同じ待遇にする」として準同盟国扱いにしています。これでは中国は手を出しづらいものになっています。



さて、結論として、台湾有事があるかどうかは、軍部のふがいなさは除外して考えると、「ある」と言わざるを得ません。習近平氏と反習近平派のそれぞれの思惑が戦争を望み、とくに後者は習近平氏を倒すための手段と考えているからです。

もし、習近平氏が主導する場合は、アメリカ大統領選挙と台湾の総統選挙がともに2024年ですから、それまでに。とくにバイデン政権後によりももっと強硬派が出てくる可能性を想定して、大統領の交代期間という空白を利用しての侵攻が懸念されます。

ただ、習派、反習派、いずれかが戦争を起こせば中国は終わりになります。場合によっては軍のクーデターも可能性があるとみます。群雄割拠の時代に後戻りするかもしれません。また、戦争を起こさない場合でも、中国は内部から崩壊する兆しが見えていますので、5年も持つはずはありません。中国は破滅の方向に進んでいるようです。


(補足) 自衛隊の現状

中国軍の士気が異様に低いということなどは喜ばしいことではあるのですが、日本の自衛隊にもいくつか問題点があり、実は、果たしてこれで日本を守り切れるのかという不安材料もあります。この問題を、学内で同じサークル出身の評論家の江崎道朗氏がこう指摘します。

「身を切る改革」を迫られた自衛隊は、隊舎・宿舎の補修・近代化を諦めただけでなく、継戦能力の維持に必要な弾薬の備蓄を減らし、実弾訓練を減らし、装備品の可動向上のための部品購入といった維持整備費を減らしてきた。

要は、武器・弾薬が不足して、まともに戦えない状態に追い込まれているのだ。(中略)この実態を知った安倍政権は18年度から、ミサイル、魚雷を含む弾薬購入費を19%増加するようになった。

しかし、これだけでは不十分なのだ。この20年間、お隣の中国、ロシア、北朝鮮は技術開発に努めてきており、いまやミサイル、宇宙、サイバー、無人機(ドローン)、電磁波といった「新たな脅威」にも自衛隊は対応しなければならない。だが、いまの自衛隊はこの20年、設備投資を怠り、現代戦に対応できる状態ではない。



自衛隊のドローン研究が遅れているという話は、小池都知事の希望の塾で講演した三浦瑠璃氏から聞いたことがあります。もう6年も前のことです。しかし、今度のウクライナ戦争で防衛研究者の口ぶりでは、それに対してやっと取り掛かった風なことを聞きましたので、日本の防衛は思っていた以上に深刻だと思います。

しかも、これからの時代の戦争は、物理的なものよりも、電子戦や文化的なサイレント・インベージョンになる可能性もあり、物心両面で守りを固めないとなりません。したがって、中国からの脅威をいたずらにあおるのではなく、中国という国家が、どの分野に何を仕掛けてどのように日本を攻撃し破壊してくるのかを観察分析し、これを上回る策で対処していかなければならないと思います。そのために今回は、「中国の真実」を5回にわたって分析したわけですから・・・。

「厚黒学」を実践する中国人――真実の中国①
無頼漢が建てた国、中国――真実の中国②
華夷秩序とそれに抗う日本――真実の中国③
中国の外交戦略「六韜(りくとう)」――真実の中国④

台湾有事と中国軍の動向――真実の中国⑤
(完)

(明日の24日と明後日の25日は、「安倍晋三論」を掲載します)




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