コラム(96):ヘイトスピーチ ~言葉で世界が変わる~
自分の所属する集団や組織を純粋な気持ちで愛する行為は、人間の自然な感情の発露として当然のことです。
人間は一人で生きていくことはできません。なんらかの集団に帰属します。
家族、郷土、国を大切に思い、愛することは、自らを尊い存在だと認識しているからなのです。つまり、国を愛するということは、自らの尊厳性を証明することなのです。
ナショナリズムや愛国心はそうした心の表現形態であるといえます。
しかし、そうした感情が屈折すると、ヘイトスピーチやテロリズムに変容することがあります。
ヘイトスピーチやテロリズムに共通している感情は根底に深い怒りや悲しみ、恐怖心が内包されています。彼らは、自らの尊厳性に気づかず、差別や抑圧が自分にふりかかるのではないかと怯えているのです。この不安が、言葉として爆発するとヘイトスピーチとなって人の心を傷つけ、行動となった時にテロを生み出し人を殺傷します。
相手を言葉や暴力で屈服させることは、必ず報復を招き、新たなテロや戦争の脅威が生じます。
彼らは、愛国主義や正義の名のもとに私怨を晴らしているにすぎないのです。
ヘイトスピーチの源
実は、ヘイトスピーチを助長しているのは他ならぬマスコミです。マスコミは報道を通して、ことさら憎しみを煽り、人びとの不満を増幅させ、意図的に対立の構図をつくることがあります。
また、マスコミは権力の監視のためとして、憎悪や敵意のある批判を政権に向けることがあります。こうしたマスコミの精神態度が、毎日のように新聞やテレビ報道として社会に流れ、人々の不満のはけ口をヘイトスピーチへと向かわせています。
悪意の垂れ流しは不正を糾すことでもなく、表現の自由や報道の自由ではありません。
自らの尊厳性を大切に
地上からテロや戦争をなくすためには、まずヘイトスピーチをなくさなければなりません。ヘイトスピーチは憎悪と破壊の感情に満ちているため、それを向けられた人は人間性さえも否定され、人としての尊厳が著しく傷つきます。ヘイトスピーチが大多数の人びとから支持されない理由はここにあるのです。
古来から、日本人は「言霊の幸ふ国」として、「良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こる」という思想を持っていました。言葉で発したことが実現すると考えていたのです。
蔑みや差別の感情に基づく言葉は、人の苦しみや憎しみを増幅させて、結果的に自分自身を傷つけることになるのです。
日本の伝統的な文化の中に、他人の尊厳性と自らの尊厳性は同じものでありそれぞれを尊重し合う心が深く根付いています。
私たちは日本の良き文化を心に、これからの時代に日本人としての矜持を示していきたいと思います。
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