ベストセラーとなった新人ミステリー作家の話題作です。
昨年の「本屋大賞」を受賞したというので、期待して読みましたが、結果は最悪。後味の悪い小説でした。
物語~愛娘を校内で殺されたシングルマザーの中学教師が、犯人である受け持ちクラスの男子生徒2名に復讐すべく、彼らが飲む牛乳にエイズウイルスに感染した血液を混入する。そして、精神的に追い詰められた犯人らは母親やクラスメートを殺す・・・。
とご紹介しただけで、この小説の異常さがわかろうというものです。「犯罪は法と正義に照らして処罰する」という現代社会の掟を無視するところから、この小説は出発しています。しかも、それを聖職者とも称される教師が行うのですから驚天動地です。
これは、9.11後、テロリストを法によって裁くのでなく、「テロとの戦争」と称してアフガニスタンとイラクに侵攻したブッシュの論理そのものです。つまり、この小説は、壊れつつある現代社会の人間不信を色濃く反映しているようで恐ろしくなりました。
また、この本が「本屋大賞」を受賞するにふさわしかったのか大いに疑問です。04年の同賞が小川洋子氏の「博士が愛した数式」だったことを思うと、その落差の大きさに戸惑いを禁じえません。