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よろずよもやまよろずたび

地元の写真と日々の雑感、写真日記です.
最近は陶芸三昧の日々ですが・・・

過剰な人

2012-03-21 | 

ドフトエフスキーの小説に登場する人物を紹介しながら人間の味わい方を説いた本です。
「罪と罰」 「白痴」 「カラマーゾフの兄弟」 などなど有名な小説ですが、恥ずかしながら一度も読んだことはありません。
それでも、なんとなく読んだような気にさせてしまうのですが、話の筋を紹介するというよりも、登場人物たちの灰汁の強さというか、皆々尋常ならざるエネルギーの持ち主たちの内面を語るので、まるで映画の予告編を観ているような感覚といえるのかもしれません。
まえがきにて 『現代日本で問題なのは人間のパワーが減ってきていることであり、それを回復するには人間の理解力が必要』 といいます。 そのためには 『つい一言多い人、加減を知らずに仕事をしすぎる人、厚かましくて鬱陶しい人 』 などなど、それら典型な登場人物たちが 『過剰な人』 であり、その博覧会が、ドフトエフスキーの小説なのだそうです。
そういえば、そういう人は、団塊の世代まで多くいたように思いますが、最近では草食系なんていわれて、どうも少なくなっているかもしれません。
でも、わたしのような目立たずに生きている 「不足な人」 もいれば 「過不足ない人」 そして 「過剰な人」 と、バランスの取れた社会構造がやっぱ平和なんでしょうね。やっぱバランスだな・・・などと思いつつ、過剰な人 の方が人生面白いでしょうね。 幸不幸は別として。


冬のライオン

2012-03-20 | 

ノンフィクションの短編集です。
アフガニスタンの従軍記、エボラウィルスと闘う医師たちなどなど、TVの報道などで聞きかじっていても、どこか遠い世界の出来事だと冷めた目で見てしまいがちですが、読んでみて分かる実情というか、生暖かい日本に住んでいては分からない厳しい現実というのが有るということを突きつけられる一冊であります。

ところで、この中に「死の迷路からの帰還」というのがあります。
森の中で迷ったときに人間はどうなるのかといった内容で、これが一番身近なものです。
数年前のことですが、まだ雪が残る標高1000mほどの山へ行ったときのこと、帰りは足跡を辿っていけばいいと思っていたのですが、なんと途中で見失ってしまいました。
そろそろ夕暮れが近づく頃で、早く帰らなきゃという思いが強かったせいか、大いに焦ったものです。 

ベテランのハイカーであっても初めての森で道に迷った場合、死の危険が大いにあるそうです。 道が整備され外れさえしなければ大丈夫というような山でも、何が起きるか分からないので、低い山でも気をつけたいものですね。


久しぶり

2012-03-17 | 



久しぶりに漫画・・・『 信長協奏曲 』

飄々とした性格で勉強嫌いな高校生が戦国時代にタイムスリップします。
タイムスリップしたその場所に居合わせたのが織田信長で、なんと二人は
瓜二つ・・・。

信長本人は病弱で、家督を継ぐには荷が重いと、代わってくれと頼んで去って行きます。
何が起きたのか分からない主人公は、周りの状況を少しずつ理解しながら
、おぼろげな歴史の記憶でもって 『天下をとらなきゃ』 と思いたち・・・。

歴史について疎い読者(私)にとって 主人公は、一緒に勉強しているような存在で、物語の中に身を置いているような感じというか、じつに感情移入しやすいのです。
そんでもって明るく気さくで行動的なんで、楽しくてしょうがありません。

というわけで、友人N氏に勧められ、借りた ①から⑥巻まで、楽しく読まさせてもらいました。

久しぶりに楽しいマンガです。 これお薦め!


「センス・オブ・ワンダー」を探して「猫まみれ」

2012-03-12 | 

生物学者の福岡氏と阿川佐和子さんの対談です。

主に阿川氏が聞き手となって福岡氏が語る生命の不思議について記されていて、とてもワクワクする内容です。主に生物の動的平衡について説明されているのですが、それは川の水が絶え間なく入れ替わっていても全体として恒常性が保たれているように、生物も同じように分裂しない細胞(心臓や脳など)であっても摂った分子や原子と入れ替わってるのだそうです。そして、そういう動的平衡にあって様々なことが関連つけられているというのに、現代医学ではパーツに分けて機械論的に扱っているとして、疑問を呈しています。 ただし動的平衡は科学界では主流じゃないそうです。というのも「メカニズムとして身体を考えるから医学が成立し、薬が開発され・・・というのに対し動的平衡では、できることなら薬は飲まないほうがよいとしているので、それじゃ経済が回らないから資本主義の社会には馴染まないから・・・」 とのことです。

で、それやらこれやら話しがいろんな方面へと及ぶ福岡氏の博識と洞察には驚かされるばかりですが、そういったことの基になっているのが子供の頃に受けたセンス・オブ・ワンダーなんだと。

「センス・オブ・ワンダー」というのは、レイチェル・カーソンの本によれば「神秘さや不思議さに目を見張る感性」とのことで、後に知識や知恵の土壌になるというのです。 でも大方の子供は不思議に思うことがあったとしても、大人になれば 「まぁそんなもんだ」と忘れてしまうと思います。もし忘れずにいたとしても簡単に解けるものは少ないだろうから、いつしか諦めちゃうのですよね。 でもでも、こういう話が面白いと思えるのは、誰しも子供の頃に得た感性を残しているからかもしれません。 それと、その本によれば「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要じゃないのだとか・・・物覚えのワルイ自分としては何だかとっても助かる言葉です。 え、そりゃ子供の頃の話だって・・・ぅ~む。

・・・とかなんとか思いつつ、猫の絵や彫像を集めた本 「猫まみれ」 を炬燵に入って眺めています。

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「中国化する日本」

2012-03-05 | 



経済や軍事で圧倒されて中国に呑みこまれてしまうというような話ではありません。

で、中国化とは
1000年前の中国は宋の時代から始まる
『 皇帝が儒教思想を基に権威と実権を掌握。科挙制により能力次第で地位や冨を得られる。また貨幣の普及により市場原理が導入されて個々人は地縁に関係なく流動的で、血縁関係よりも個人的なコネクションが優先される社会 』 のことだそうです。

それに対して日本は、平氏・鎌倉時代に封建制を確立し、『 権威者(天皇)と権力者(将軍)が別人で、世襲により社会・組織への帰属意識が強く、階級が固定され能力があっても権力や富が得られにくい、流動性の低い社会 』 というように、中国化とは真逆で、これを江戸化と呼んでいます。

その江戸化は、第二次大戦後も 護送船団方式とか終身雇用のようなかたちで、連綿と受け継がれ、明治維新に一時的な中国化の動きがあったものの、馴染めずに今に至っているのだとか。

しかし、終身雇用なども廃れ、首相がコロコロ代わる現在、ついには世界標準的な中国化をやらなきゃ持たないところまで来ているんじゃないかというわけです。

はたして、それが幸せな日本になるのかどうか分かりませんが、状況はその通りのような気がします。

お薦めの一冊です。




 


かたち

2012-02-28 | 

貝殻のかたち、蝶の羽の模様、シマウマの縞模様、ヒョウの斑点模様、そういったものがどうして出来るのかを、遺伝、化学、物理学者たちの仮説・実験を概観しながら説明した本です。

ほんとうは数学的な素養が必要と思われる内容ですが、数式はほとんどありません。代わって図、写真が各所にちりばめられているので、何となく分かったような気分にさせてくれるので、淀みなく読み進められて面白い本です。

さて、生き物の形や表面の模様がどうして出来るのかということですが、「遺伝子に刻まれている」 というのが様々なメディアから知るところだと思います。しかし『ダーウィニズムでは有利な模様や形態が生き残ることを説明するが、そもそもどうして生れたかという問題には沈黙している』とのことで、それだけでは説明できないといいます。そして化学的な実験により生き物と同じようなパターンを 試験管の中やコンピューターによるシミュレーションで再現できることを証明し、モルフォゲンと名付けた化学物質が組織の中に拡散することで、生物も化学的な作用を受けて形になるのだというのです。
ちなみに、実験の一つに 「BZ反応」 というのが紹介されているのですが、その様子がYouTubeにも沢山乗っていますので、御覧になってみてください。面白いです。

 


LIMIT 2・3・4

2012-02-21 | 

1巻目の帯に「3・4巻目を待て」とあったので、2巻目も退屈なんだろうと覚悟していたところ、上海を舞台に大活劇が始まって にわかに面白くなった。

以下ネタばれ含む

舞台は2025年の近未来。化石燃料に代わるエネルギー源として、核融合が実用化される。その燃料となるヘリウム3は月の地表にあって、採掘をアメリカ・中国が競ってやろうとしている。埋蔵量は700年分。ヘリウム3を月から地球へ運ぶ手段として宇宙エレベーターが民間企業によって開発され低コスト化が実現する。その結果、化石燃料は暴落し扱っていた企業や産油国は窮地に追込まれる。

そういう状況下、ネット犯罪専門の探偵であるイギリス人の主人公が、友人の中国人実業家から、そのまた友人の娘であり超美人でパンクバンドの歌手であり、ソフトウェア開発の才能があり、反体制活動家でもある女性が失踪したので捜索して欲しいと依頼される。その超美人は、中国人の殺し屋から付狙われるのだが、主人公の活躍により難を逃れる・・・

というのが2巻目で、月のホテルへ向かう登場人物たちの冗長な会話が続く1巻目とは大違い。謎が大きく膨らんでスリリングで面白い。

3・4巻目は、中国人殺し屋の組織や陰謀について徐々に明らかになっていくが・・・最後の最後になって明らかにされる黒幕は、誰もが予想する通りで、意外性はない。 だから終わり方は淡々としている。

近未来ということで、SF的な部分を期待したけれど、そうしたアイデアは見当たらない。一言でいうなら、既存の科学・技術の延長および現在の世界状況等々を大きな鍋に入れ、かき混ぜて、出来上がった 中国人ウケしそうな サスペンス巨編といったところです。

小説も中国市場を意識して書かれる時代になったようです。

 


日本のデザイン

2012-02-17 | 

豪華絢爛な宮殿や美術品の数々は、国を統治する 力 の表象であったが、人々が平等に幸福に生きる権利を基礎とする社会に舵を切ったときから、複雑からシンプルへとデザインも変わった・・・それは世界的に見れば今から150年ほど前になるが、日本では東の外れに位置し海にも隔てられていたせいで、なんと500年も前の応仁の乱を契機として独自の文化を醸成した。その文化を引き継いで、発展させて、経済大国じゃないけれど世界で機能するようなデザインを発信できる日本にしようじゃないか!
そして、個々の製品や美術や工芸では既に高いデザインを持っているのに、街を村を見渡せばお粗末な日本を変えていかなきゃいけない。

って感じです。

コレ お薦め。

※応仁の乱が契機となったというのは、文化・歴史の集積地であった京都が戦乱により壊滅し、新たに作りなおすことになったとのことです。当時の将軍、足利義政は美に沈溺し政治を怠ったせいで戦乱を招いたとのことですが、家督を譲り隠居するときに自らの美意識の集大成として建てた東山御殿は、それまでの日本の美意識を覆すシンプルな作り、さらには何も無い「エンプティネス」がすばらしいとのことです。

自分の身の回り、すごくゴチャゴチャしています。 本当に必要なものだけを残し全部棄ててしまえばシンプルに素敵な生活が出来るのかもしれません。 が、なかなか棄てられないんですよね・・・


LIMIT (1)

2012-02-16 | 

本の帯にある宣伝文句に吊られ、ついつい買ってしまった 『LIMIT』 全4巻。

作者「フランク・シェッツィング」の前作 『Yrr』 が面白かったのと、『・・・Yrrを超えるスケールと抜群のリアリティ。これが本物の近未来サスペンスだ!』 などと言われたら、退屈しのぎには最高じゃないか!と誰しも思うはずです。

で、一巻目を読み始めると、宇宙エレベーターで月へ向かう富豪たちの会話を中心に時代背景や登場人物の説明や宇宙エレベーターの概要についての説明が延々と続き・・・「退屈だっ!」 と投げ出してしまいたくなります。

それでも、途中に中国を舞台にインターネットにまつわる事件が進行するので、その方が面白くて何とか最終行に辿りつくことが出来ました。

本を閉じて改めて帯にある文をみると『・・・最初の800頁は壮大なプロローグにすぎない。・・・怒涛のクライマックス(3・4巻)を刮目して待て』 とあります。

「わ~、二巻目も退屈しなけりゃダメなんだ・・・」

というわけで、いつ読み終わるやら分からない「LIMIT」


「続・スカートの風」

2012-01-15 | 


著者の呉善花氏は、略歴によれば1956年・韓国生まれの女性で、大卒後軍隊生活を4年経るなどしたあと1983年に渡日されている。
本書は1991年出版とこのことで、8年間の日本及び他海外での生活経験を基に、日本と韓国の文化について書かれたものである。
当然、韓国女性の視点から書かれているわけだが、日頃TVなどでみる 反日的な内容ではなく、日本人が不可解に思う韓国人の行動や言動について、そして行き違いになる原因について、冷静に客観的に自体験を踏まえながら、両者の心理面から説明している。 それにしても隣の国であり、ほとんど一緒な顔をしているというのに、文化・考え方の違いが大きいことに驚かされっぱなしの一冊だった。 
ただし、本書は今から20年ほど前のものであり、今では現代自動車・サムスンなど世界有数の大企業もあり、変った面も大きいのではないかと思う。
それでも、いまだに色んな問題が提起されることを思うと、心の中は何も変っていないのかもしれない。
尚、著者はその後も毎年のように新本を出されているようなので、最近出されたものについて目を通すのがいいかもしれない。
ところで、副題の「恨を楽しむ人びと」というのがある。 恨は「ハン」と呼ぶのだそうで、日本語のウラミ とは少し違うとのこと・・・読んでもなかなか理解しにくい感覚だ。 とにかく全体を通して感じる、ぼんやりとしたイメージは、"病的なナルシシズム" に辿り着いたりする ・・・