『化粧振れ隅木の製作承ります』(反り軒を除く木造一般住宅の振れ隅木関連材の手墨・手加工)。
☆振れ隅木編☆
2016/08/04【木組みによる隅木④振れ隅木(都市型)その1】
2016/08/08【木組みによる隅木⑤振れ隅木(都市型)その2】
2024/04/21【木組みによる隅木⑥振れ隅木(薬研・都市型)その3】
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ちょいとややこしい(+o+)、 振れ隅木(都市型)のお話し。
隅木の記事は【2012年7月6日 木組みによる隅木③大入れ兜】以来。続編。
今回記事は振れ隅木の規矩をマスターした大工だけがうなずける内容かも(^-^)凸。
都市型振れ隅木の特徴。
まず、ここ2年程過去に、大工として私が手掛けた振れ隅木の屋根勾配の組み合わせを見て欲しい。
\(◎o◎)/!
[4.5寸&24.75寸]、[5.5寸&6.0寸&22.9091寸]、[5寸&10寸]、[6寸&12.5寸]、
[6寸&20寸]、[5寸&8.27寸]、[3.5寸&4.67寸]、[2.5寸&7.5寸]、[14.5寸&35.13寸]、
[2.77寸&6.1033寸&6.925寸]、[4.8寸&6.0寸]、[4.0寸&4.1719寸]・・・・・・
(-_-;) まだまだ大量にあるのだけれど、もう調べるの嫌だ。
この数字を見て一目瞭然。 つまり、
意匠設計で意図的に振れ隅木にしたのでは全くなくて、苦し紛れに『こうなっちゃった/(-_-)\』のネ。
[5.5寸&6.0寸&22.9091寸](3方向異勾配)、[2.77寸&6.1033寸&6.925寸](3方向異勾配)、
[14.5寸&35.13寸](もう屋根じゃないよ、壁!)なんてのも、意匠設計士は平気でプランニングCAD入力。
平面図だけ入力すると、後は勝手にパソコンが自動で立面図や屋根伏図を立ち上げる意匠ソフトの乱暴さには、
実際の物作りの現場で 『こまったちゃん、またキタ━(゚∀゚)━!』 なんですよね。( ◠‿◠ )
あのさあ、皆さん、コストダウンしたいんじゃないの? (+o+)
安く早くなんて出来ないですよ、いくら規矩をマスターした伝統大工でも、こんな無茶苦茶な意匠設計では。
安くやろうと、業界初の全自動プレカット振れ隅木製作マシンに飛びついても、適用範囲外で不可でしょ?
つまり都市型振れ隅木とは、構造無知な意匠設計を震度7の地震にも安全な構造として架構すべく、
参考書記載の振れ隅木の基本をマスターした者がその次のステップにこなす様な、高難易度仕事。
”構造金物、配付け垂木(軒先カット含む)、全てコミコミ” ですよ、勿論。 ”完全プレカット”
さて、”百聞は一見に如かず” 。
全自動プレカット振れ隅木製作マシンによる加工と比較してみてください。
今回画像は、全て私の手墨・手加工による、都市型振れ隅木の ”プレカット部材” だけになります。
私の仕事は、仮組みしながらぶつける事は一切無し。勿論、加工終了後にミス確認の為の仮組みも一切無し。
部材単独での墨付け・刻みで終了。だから私、上棟現場に行かないと組んだ画像を残せないんです。(´・_・`)
振れ隅木の拝み部分は『大入れ兜+ひよどりボルト』。伝統大工の技法です。
構造金物用加工も全て”プレカット”o(^▽^)o 蛇足ですけど、作業馬にある「〇〇ホーム」の仕事ではありません。
振れ隅木は途中でスパン変更により、材成を絞って、腰掛けで継ぐ。 もう何から何まで面倒な仕事。
でも、組んだ画像が無いから、振れ隅木をマスターした大工以外の人には、何が何だかちんぷんかんぷんでしょ?
仮組みしないし、全て私一人でやるし、場所はとらないし、ミスは皆無だし、相当コストダウン出来てるでしょ (^-^)v
安さがウリだけの全自動プレカット工場は、まず現場対応で逃げますネ。だいたい、出来る大工が勤務していない訳だから。
見るからに面倒臭そうでしょ? 建築大工一級技能士実技試験問題の方がはるかに簡単です、現実は。
現場対応と違いボルトも全て添付。構造安全性・正確性・高精度・現場施工性は◎ 現場では簡単だしはかどりますよね
↓こちらはまた違う物件の ”伝統大工による手墨・手加工” プレカット部材。(全自動プレカット工場が受注・出荷)
構造安全性とコストの両立から、私は様々な最適解を施します。基本をマスターしていないと出来ない応用でしょ?
母屋材といえども、接合部の構造金物は絶対! 全て墨付け・刻みます、勾配が都市型の振れ隅木であっても。
構造無知な意匠設計だからこそ、一級建築士として震度7の大地震にも万全な構造に処方してあげている心境です、私。
”大入れ兜・ひよどりボルト1本+羽根金物併用六角ボルト2本のボルト計3本引き” の頂部拝み部の木組み。
建築大工一級技能士実技試験にも構造金物は出題されないでしょ? 現場対応だと、釘で済ませてしまうんですよね。
老婆心ながら、”大入れ兜” にしないと材成バランスの悪さから、横架材先端部がこの様にせん断破壊しますよ。
【2012年7月 6日 木組みによる隅木③大入れ兜】
【2012年6月25日 木組みによる隅木②捻組と渡腮】の過去記事を参考までに。
震度7でも安全でしょうか?これで。私は一級建築士として、こんな仕事は絶対にしません、出来ません。
コストダウンだろうが、可能な限りPC加工する会社方針だろうが、間違っています、この様な納め方。
といった経験を踏まえ、私は費用対効果を考慮して、かつ、安全な構造の実現の為に【職責】を全うしています。
ちなみにこれ、建売住宅の仕事 (-_-;) なので、最上級仕事ではもちろんありません。
伝統大工によらない場合、これらの加工を現場でぶっつけ大工が正にぶつけているんですよね、恐怖(・・;)。
また、プレカットといっても『何でもやる!』という方針の割には、少々の手加工しか併用しない全自動PC工場。
『振れ隅って何?』というレベルの人達が営業をやっていました。
『大工なら誰でもすぐに振れ隅木が出来る』と思い込む体質が、全自動プレカット工場にはありますね。
思考が全自動慣れするのでしょうか。CADオペがデータ作成して、材をラインに投入すれば加工出来ると。
逆に、プレカットCADを使用しないで伏図が作成出来るオペレーター、一体プレカット工場にどれだけ居るのでしょう?
木組みも断面欠損も無知な無資格者による構造材加工は、建築士法3条の3がある以上、問題なのではないか?
鉄筋の数を抜いた耐震強度偽装や欠陥工事と、特に通し柱でこれだけの断面欠損を作る事って、五十歩百歩なのだけれど。
どちらも恐怖(・・;)。
それにしても、大工技能について余りにも無知な業界人(設計士も含めて)の何と多い事。
今回記事を見たとしても学習しないんだもの、いつまでたってもコストダウンは無理だろうなぁ。(+o+)
これらの画像は、たとえ建売住宅でも、私が構造で絶対に手を抜かない事の証明です。
私は一級建築士として、”建築士法第2条の2【職責】” を果たす仕事を、どんな時でも必ずします。
次回【2012年8月8日 木組みによる隅木⑤振れ隅木(都市型)その2】、
『棟木を受ける小屋束の無い切妻屋根の、山振れ隅木・谷振れ隅木の現場画像』 に続く。
追記:【2023年1月21日(土)】
(私の3回目の一級建築士定期講習当日)
時は推移して、
PC工場(伏図作成と構造材加工)の建築士事務所登録云々、
現在はどうなっているのだろう?
平成27年(2015年)6月施行、改正建築士法のリーフレットがこちら。
建築士法第24条(建築士事務所の管理)で、
管理建築士に【責務の明確化による設計等の業の適正化】を総括せよとある。
ここで、
PC工場による木造建築構造設計(伏図作成)にまだ法の網を掛けていないのであれば、
無法地帯と呼んで差支えない状況が現在も進行形ということになる。
建築士法第24条3項一
『受託可能な業務の量及び難易並びに業務の内容に応じて必要となる期間の設定』等、
2023年現在でも、は?『そんなの関係ねぇ! おっぱっぴー』(お笑いタレント・小島よしお氏)
といった具合で、全く知ったこっちゃないといった状況は相変わらず。
一級建築士であり構造設計と墨付け・刻みの双方が出来る大工である私に、
納期・難易度・業務量等全くお構いなしで、無茶振りしてくるパワハラマネージャーしか相変わらず居ない。
この様は、世間一般的にはブラック企業と言いますよね。
さて、
経済を停滞させない為に ハッキリ申し上げると、
建売住宅パワービルダー型大量生産PC工場には、
汎用な木造住宅以外の物件は、品質が低くなるので、頼まない方が良い。
なぜなら、
彼らの生産システム設定が、
本格設計事務所型こだわり木造建築の要求を許容出来ないからである。
建売住宅パワービルダー型大量生産PC工場側の言う手加工とは、
全自動加工機の補佐としての手加工を指している。
(あれもこれも出来ます・ウチには高い技術があります・安く出来ますって、
所謂建売住宅品質なのがポイント。参考までに元/末、腹/背は100%考慮しない)
つまり彼らが背負っているビジネスモデルのタスクとノルマゆえ、
物件に多大なコスト(人的スキル及び時間)をかけていられない現実がある。
逆に、
建売住宅型汎用木造建築であれば、
彼らが得意のビジネスモデルであり、
発注側は低コストになるがゆえに、頼むメリットがある。
但し、『こまったちゃん設計』の振れ隅木など、
PC加工のデフォルト(守備範囲)を逸脱したデザインの場合、
低コストは逆立ちしても無理。
『こまったちゃん設計』の場合、
建売住宅パワービルダー型大量生産PC工場は逃げるか、現場対応になります。
構造安全性そっちのけで、ぶっつけ大工に現場でぶつけて貰ってください。
工作機械が白旗を揚げた振れ隅木は、伝統大工にしか墨付け・加工が出来ないので。
餅は餅屋でも、得意とする餅は千差万別で、
いろいろな餅屋があるのである。
これもまた、適材適所。
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【追記 2024年3月17日】
比較の為、建売住宅の隅木を掲載しておきます。振れ隅ではなくて棒隅ですけど。
一目瞭然。
日本で一番施工棟数が多いといわれるパワービルダーの施工現場。
部位は隅木と棟木の接合箇所。プレカット加工。
それにしても見事なまでの建売的施工(゚∀゚ ;)
かすがい金物が施工されているだけマシですが。
但しかすがいの使い方が適切ではありません。
材の上端に打っているのが、アウト。
下の画像が、国が指導するこの様な部位での適切な使い方。
《写真でみる接合金物の使い方》(材)日本住宅・木材技術センター刊より。
材の上端の表現は何処にもありません。
かすがいは『材が割れないよう』との文言が最も重要です。
材の割裂破壊=脆性破壊=強度が一瞬でゼロになる破壊だから。
それに、かすがいは強度最低金物なんですよね。
短期許容耐力はべいまつ類で1.27kN、べいつが類で1.18kN、すぎ類で1.08kN。
《平成12年建設省告示第1460号に対応した木造住宅接合金物の使い方》
(財)日本住宅・木材技術センター刊による。
N値計算では、N=0以下の部位にしか使えない最低耐力金物。
金物補強といっても、最低の補強にしかならない訳です。
これが現在のプレカット加工とぶっつけ大工による、
建売住宅・分譲住宅・一般住宅の現実です。
それを完璧に答えて仕事されていてすごいと思います。
どの様に墨付けされているのか知りたいです。
作図も慣れてくれば急所を端的に把握する事が出来るようになるので、木の見返し法に近い要領で墨付けが出来るようになりますよ。