☆今日は七夕。息子は短冊に『もっとにんじんが食べられますように!』と書いたそうです。(o^_^o)
画像は大黒柱の柱脚、つまり根元です。樹種はクリ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/bb/022dca7eb863b130ae107ed4fb91b82c.jpg)
『おーきなクリのぉきのしたでぇ♪』とみんなが唄うあのクリの木です。この唄って、外国の民謡・童謡なんですか? 作詞 作曲者不詳らしいのですが(2、3番の作詞は阪田寛夫さんとの情報がありますが…)、歌詞は次のようです。私は一番しか知りませんでした。(^^;;
♪大きな栗の木の下で あなたとわたし たのしく遊びましょう 大きな栗の木の下で
♪大きな栗の木の下で お話しましょう みんなでわになって 大きな栗の木の下で
♪大きな栗の木の下で 大きな夢を 大きくそだてましょう 大きな栗の木の下で
この住宅の設計者は私ではありませんが、この歌詞と同じような思いを込めて、大きなクリの木を大黒柱として設計したのでしょうか。
ちなみに建築用材としてのクリは水・湿気に大変強く耐久性大の重硬な樹種で、鑿や鉋を入れると樹液に含まれる成分(タンニン?)で黒がかった褐色に道具も手も染まり、手は2~3日色が落ちません。
木造の世界では土台に使うと『へぇ~!』と感嘆があがる程高級で高性能な木材でして、他には数奇屋建築で柱に名栗(なぐり)仕上げとしても用いたりします。注文住宅で、この木を贔屓とする設計事務所以外ではあまり使わないんじゃないかなぁ。
クリは”あの”三内丸山遺跡で超有名になった木ですね。私もこの遺跡を見学に行きましたが、いやはや、圧倒されました。縄文人も手を黒がかった褐色にして建築していたのでしょうね。
建築用材では高級扱いでも、かつては鉄道の枕木で使われていました。
ただし、クレオソートといって今はシックハウス要因で使われなくなった防腐防蟻用薬剤をインサイジング処理(料理でいう隠し包丁といった感じの加工)をした加圧注入材(それも最高に毒性の強い等級)としてですけど。鉄道の枕木としては25年程の耐用年数がある旨を訊いたか読んだかした記憶があります。薬剤処理材とはいえ、そんな過酷な使用環境に25年も耐える樹種なのです。
ここで、話題を前回の続き、耐久性のことに。
耐久性とは、『人間がそこに住み続ける限りは維持しなければならない構造安全性』とも言い換えることが出来ます。耐久性能こそが構造安全性能なのだと。また、それは雨・結露等の水・湿気に極めて影響されるものであることにも触れました。
耐久性能の伴わない構造強度性能は、こと住宅については危険だと私は思っています。
当然ながら、人は自分の身体のようには住宅を捉えられません。
つまり、人は風邪をひいたり、怪我をしたり、病気になれば自分から病院に行き、健康を回復しようとします。しかしながら、住まいの柱や土台が壁体内結露で腐っていても、シロアリの食害でスカスカになっていても、雨漏りや漏水で腐っていても、その”痛み”に自覚症状は出ません。その違いです。
住まいの劣化、特に構造安全性能は”痛み”という自覚症状が無いまま進行し、低下してしまうのです。メンテナンスフリーを求めがちな現在の住宅ではこのことは致命傷になり兼ねない危険性をはらんでいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/cf/bd27dea258801953647ec76f0af203aa.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/8f/e450eacaa0753fc3eb2dae92ab2d05ee.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/d8/fcf68b3af4358c8c8bd4ca5a01fe8089.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/e0/ffc5f53a45ddbde15d300db26fddaa03.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/50/c79bf40515501ad315f5349152dab184.jpg)
画像は【阪神大震災に見る木造住宅と地震/坂本功監修・鹿島出版会、第2章第8節蟻害・腐朽と木造住宅の被害】よりピックアップさせて頂きました。
木造住宅に携わっている人は職種を問わず、必ず目を通して勉強しなければならない内容の本です。もちろんこれから住まいを建てようとされる方、既に住まいを建てられた方にも是非見て頂きたい本です。かなりショッキングだとは思いますが。
ここで、大阪市立大学の宮野道夫先生・土井正先生らの調査によれば、「蟻害を受けている家屋については、その用途に拘わらず、ほとんどが全壊になっている。一方、蟻害を受けていない家屋については、(中略)軽微被害の方が多い結果が得られた」とのこと。
また、奈良女子大学の疋田先生らの調査でも「被災度が大きいほど、腐朽やシロアリの被害を受けた住宅が多くなっている」とのことです。
そして「…中には土台が形を留めないほど、蟻害に侵されていたものもある。この場合、柱脚は宙に浮いているような状態であった。…」と続き、締めくくりとして「…モルタル外壁の内部結露で、断熱材のないものや、あっても不十分な施工の場合に、内部で結露を生じたものと考えられる。(中略)旧来のモルタル外壁構法が防腐上も問題の多い構法であることには、異論がないであろう。モルタル外壁とする場合には、少なくとも土台の腐朽の具合が確認できるような構法とすべきであろう。」としています。
どんなに新築時に強度性能が高くても、20、30、40、50、…X年後に柱や土台、木材や建築金物が腐食していてはいけないのですよ。画像の本にも築2ヶ月!の外壁サイディング貼りの新築住宅の倒壊が2例掲載されているように、大地震がそれを証明しています。
『大地震で人は命を落とすのではなく、大地震で倒れた建物で命を落とす』
災害列島である日本では諦念にも似て誰もが見て見ぬフリをしているように思えてしまうのですが、厳然たる事実はこういうことです。
詐欺師としてではなく、本物のプロとしてこの業界に携わっている人は、このことを肝に命じなければダメだ。家族の幸福の為に建てた家によって家族が命を落とすなんて、絶対に馬鹿げています。
建築基準法の目的はその第一条『この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。』なのですから。
私は自分のHPで、『真壁構造の木組みの家』を勧めていますが、それは建築に長けていない人にでも構造が『目に見える、触ることが出来る』ことが大きな理由の一つです。
痛みという感覚が無いのだから、耐久性つまり構造安全性が維持されているか否かが見えれば、手抜き工事もインチキ一級建築士によるおかしな提案にも大壁構造の比ではない程の高い確率でストップをかけられるでしょうし、社会的大問題にまでなっている悪質リフォーム集団に付け入られるスキもかなり低くなるのではないでしょうか。
”見える”のだからおかしな仕事は出来なくなるはずです。嗜好により一概には言えないのですが、真壁構造の木組みの家には、腕の良い大工による惚れ惚れするような美しい手カンナ仕上げの木肌があるではありませんか。
さて、初めの画像に戻りましょう。
クリの大黒柱の柱脚木口が白いのは何だか分かりますか?実はこれ、割れ止め・防水剤を塗っているのです。
木口は植物としての特性上、水分の通る導管が幾本も束ねられた、いわばストローがまとめられて一本の大きな筒を構成している面のようなものなのです。伐採されて木材となった後もこの面は吸水性が大変大きい性質があります。耐久性を考える時、この生物材料としての特性を理解していなければなりません。
そしてこの柱の立つ基礎は鉄筋コンクリート造なので、水を必ず使います。コンクリートの性能はその水が大変影響するのですが、コンクリートの設計基準強度は打ち込み後4週間目の強度のことを言い、日数が経たないと強度が出ない特性があります。それは硬化の為の水分が抜けるに従って、強度が発揮されてくることを意味しているのですが(実はこんなに簡単に言えない程、様々な諸要素・諸条件が複雑に絡み合っています)、乾いているように見えていても、5年は水分を出し続けていると言われています。
ここで、話がようやくつながりましたが、木口に塗った割れ止め・防水剤は、このコンクリートから出る水分と床下の高い湿気から構造材を少しでも守る為に、大工が自分の手で塗るのです。
どの木造技術書にも書かれていないことを、良心のある大工の自発的な心意気で施工しているのです。『少しでも長持ちしてほしい…』と、鑿を主とした道具を使って自らの”手”で加工し終えた後に。誰もそんな事は知りませんし、立柱してしまえば痕跡さえも何も分からないことです。しかしながら、これもたいへん重要な、大工の手仕事なのです。
私は四十一級建築士ならびに四十一級施工管理技師でもあります(笑)
追伸
2015年、私は五十一級建築士ならびに五十一級建築施工管理技士になります(笑)