心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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消防隊員が4名も亡くなる事故

2012年07月29日 | 日記・エッセイ・コラム
前回記事【構造材現わしでの金物使用方法2012.07.27 の続編。

神戸新聞Web News より。

平成15年6月2日深夜、神戸市西区伊川谷小寺で発生した民家火災で、突如2階が崩落し、消防士4人、家人1人が亡くなった痛ましい事故がありました。


私は市井の1建築士兼大工として、事故再発防止策と構造材現わしの家の発展とを考え、前回記事【隠し金物2本引き工法】を考案したいきさつがあります。


『火災という最悪事態を想定した場合、木が金物を火災から守る事で材の接合が外れて崩れ落ちる事が無く、住人の避難のみならず消化活動を担う消防士の安全も保つのです。』の私なりの根拠です。


①中・大断面木材の燃焼メカニズム。表面は燃えて炭化するが、炭化層が転じて保護層となり、内部迄は燃え尽きない特性がある。


②建築士なら全員知っているはずの鉄骨造の耐火被覆の必要性。
 解決方法:①により金物を木材内部に隠す事で、耐火被覆化を実現させる。


③凸オス木側の荷重と材の拘束(上下・左右・ねじれ)を考慮。


④凹メス木側の材(通し柱など)の断面欠損を考慮。
 解決方法:メス木側の材の寸法や差し口の数や位置で、簡易木組みの技法を使い分ける。


④で、通し柱の場合の、最も欠損量の少ない簡易木組み技法が下の画像。
  (注:但しこの画像、大壁構造+天井を貼る仕様なので、金物は木材内に隠していない。)

【凸オス木側(梁側)】
2007_07070013

ほぞを省略して、”大入れ:おおいれ”のみ。上下も3分割にする。


【凹メス木側(通し柱)】
2007_07070018

ほぞが無いので、大入れ用の穴のみ。3分割により中央部にも肉が残る。


通し柱で、最も断面欠損の多い4方向から梁が差さる場合でも、①②③④を考慮した私なりの最善の解決策。


よく『金物工法は通し柱の断面欠損が無いから強い』といった意見がありますが、耐火被覆をせずに金物を現わしにしてしまうと、②の問題をクリア出来ないので、私は100%賛同は出来ません。


火災のメカニズムにはド素人の私ですが、現わし金物の方が木部よりも早く高温に達し、周囲の木部を巻き込む形で接合部の燃焼スピードを加速させるのではないか? つまり、崩落を加速させるのではないか? と思ってしまうからです。


最悪を想定した場合、地震だけではダメですね。火災での消化活動を担う消防士の安全まで想定した木造建築の在り方をディテール迄含めて追求しなければ、この事故で亡くなられた方々に申し訳が立ちません。


この事故、神戸市消防局による事故調査のやり直し陳情があったらしく、神戸市会議員(北区)高山こういち氏のブログに記事を見つけました。記事はこちら【2007年06月28日     (注:ちなみに私は高山こういち氏の後援者ではありません。)


前回記事 と【今回記事】が、何らかの形で事故再発防止に役立てられる事があれば、幸いです。


この痛ましい事故でお亡くなりになられた方々のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

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構造材現わしでの金物使用方法

2012年07月27日 | 日記・エッセイ・コラム

隠し金物工法、設計(意匠・構造)承ります。

2016年7月14日【隠し金物工法、設計(意匠・構造)承ります。】を参考まで。

 

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【隠し金物2本引き】伝統大工の技法の紹介。

組んでしまうと解りませんが、安全性と意匠美を追求して、私はここまで細工します。

2007_07120009_2

構造材現わしの家でも、予算により、【100%木組みによる伝統構法】から、【簡易木組み+構造金物併用構法】のグレードがあります。これは後者の例で、【ピン構造的木組み+構造金物を見えない様に仕込む】例。前者に比べてローコスト構法です。


オス木とメス木の寸法、特にメス木の断面欠損の危険性を勘案した上で、荷重処理と無垢材の暴れ(上下・左右・ねじれ)の拘束の為に採用した木組み。材の緊結には接合ボルトを使用して、隠し金物+ボルト+座金を【引き独鈷:ひきどっこ】的に使用します。

2007_07120010

しかも、強度と二重の安全性の為に、ボルト2本を上下で使用します。ここで言う安全とは耐火性・耐久性の面も含まれ、木が金物の耐火被覆的作用を発揮します。


つまり、火災という最悪事態を想定した場合、木が金物を火災から守る事で材の接合が外れて崩れ落ちる事が無く、住人の避難のみならず消化活動を担う消防士の安全も保つのです。

2007_07120011

予算により、構造材現わしの家で金物を併用する場合のグレードでも、こうして意匠性・安全性・耐久性・耐火性等にしっかり配慮したディテールの設計と施工を私は採用します。


ちなみに、一般住宅で、一部に現わしの木を使う場合が下の画像。

Image003

全自動プレカット加工によるものなので【羽子板ボルト】という構造金物が見えてしまいます。
インテリアデザインの調和の問題、構造材の持つ意匠美を損なう問題、耐火被覆の問題等、比べれば違うものです。

 

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隠し金物工法、設計(意匠・構造)承ります。

2016年7月14日【隠し金物工法、設計(意匠・構造)承ります。】を参考まで。

 


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合掌(トラス)その5スパン≒9.1m

2012年07月25日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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設計の出来る大工、つまり伝統大工の仕事。


今回の仕事は私の設計施工によるもの。よって、【仮組みは行いませんでした。

合計で5セット程の製作。

Img7dc276c97a21_3


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場所は【心身障害者の自立支援と地域の生活支援NPO法人「ぶどうの会」
〒350-1327 埼玉県狭山市笹井3212-1 TEL・FAX:04-2955-8900

 

圏央道と国道299号飯能狭山バイパスが入間川を橋梁で越える、自然豊かな場所にある
「ぶどうの会」の【オアシス作業所】に行けば、9メートルスパンの合掌(トラス)が見られますヨ。



代表の吉野房子さんによると、見学者も多いらしいです。設計士と大工が見に来ているのかな?

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合掌(トラス)その4

2012年07月22日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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設計の出来る大工、つまり伝統大工の仕事。


但しこの仕事は全て(実施設計・施工図作成・墨付け・刻み)、私に3年程付いて修行していた20代前半の若い子によるもの。【木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】と同じ彼。


しっかりした木組みのディテール。画像クリックで大きく見られます。

Photo

【げんぞう】や【ぶっつけ】等の ”なんちゃって木組み” ではありません。
(参考過去記事【しっかり組む①2005.12.18】、【しっかり組む②2006.01.09


【渡り蟻腮:わたりありあご】【重ほぞ:じゅうほぞ】【輪薙込み:わなぎこみ】etc。合掌材(斜材)と陸梁(注:『ろくばり』と読む)接合部は【傾ぎ3枚ほぞ入れ:かたぎさんまいほぞいれ】。はさみ束も【顎掛け:あごかけ】。【げんぞう】仕事は一つもなし。


材端部の剪断破壊防止も考慮して、ベストと思われる木組みを採用しています。


高性能である、こうしたしっかりした木組みが出来るのは伝統大工だけです。
(この画像の木組みの高性能が理解出来るのも、伝統大工だけともいえますが。


お施主様に理解していただかねば。

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合掌(トラス)その3

2012年07月21日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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設計の出来る大工、つまり伝統大工の仕事。

この仕事は全て(実施設計・施工図作成・墨付け・刻み)、私に3年程付いて修行していた20代前半の若い子によるもの。【木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】と同じ彼です。

Photo

木組み部の凸凹に注目(画像をクリックすると大きくなる)。
在来材を【げんぞう】ではなくしっかり木組みして、その上で構造ボルトによる接合方式を採用。


ツーバイ材を【げんぞう】で合わせて、接点部を合板ガセット釘打ちにしたものや、メタルプレートコネクターによる、”ぶっつけ方式” ではありません。


ボルトは釘に比べ、初期ガタつきはあるものの、終局耐力と耐久性は上、特に耐久性は格段に上。その初期ガタつきを低減する為には【げんぞう】ではダメで、凸凹加工を施したしっかりした木組みが必要。


また、合板の耐久性の危うさは、リフォームで一階床に貼られた合板の”ベリべりめくり”を体験した大工は皆理解している。6mを超えるスパンにその様な合板に釘の【げんぞう】構造は、こと耐久性については疑問符が付く。


よって、おそらく大工が自邸で合掌(トラス)を計画した場合、ツーバイフォー構法大工以外は合板ガセット+釘打ち方式を採用しないのではないか?


ここでの仕事は、合板を使わず、無垢材にしっかりした木組み+構造ボルトによる安全性向上(耐震性・耐風性・耐久性・経年変化低減等)の為の最上級仕事。


【げんぞう】:木組み部で凸凹を加工しないでただ突き合わせるだけの、最もローコストな大工技法。釘やビスでとまっているだけなので、安全性や経年変化に対しては問題がある。

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合掌(トラス)その2

2012年07月19日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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設計の出来る大工の仕事。合掌(トラス)の続編。今回は建て方の現場にて。

この仕事は、私に3年程付いて修行していた20代前半の若い子によるもの。
木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】と同じ彼の仕事です。

Photo

彼には建て方にも行って貰いました。合掌(トラス)の部分は全て(実施設計・施工図作成・墨付け・刻み)その彼が担当したので、達成感は格別だったと思います。


ただし、一度組んで確認しているので、『間違っていたらどうしよう(゜_゜>)』のハラハラドキドキ感は無かったかな。

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合掌(トラス)

2012年07月17日 | 日記・エッセイ・コラム

木造トラス(合掌)の製作、承ります。

2016年8月2日【木造トラスの製作・施工図作成承ります。】を参考まで。

 

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設計仕事の次は大工仕事。設計の出来る大工の仕事。

スパンは≒6.4メートル。
和小屋と違い、柱抜きでスパンの大きな大空間を作る為の構造方法。

Photo_2





この仕事は、私に3年程付いて修行していた若い子によるもの。
木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】と同じ彼の仕事です。


私が指導(アドバイス)こそしましたが、彼自身単独で図面を描き、墨付けをし、手刻みをして、形にしたもの。頑張りました。素晴らしい!


私が『せっかくだから、組んで画像を残しておこう!』と記念撮影をしておきました。
(私の仕事では仮組みをしないので、こうした画像は残しませんが)


若い子は、こうして、自信が付いていくのですよね。
大工で合掌(トラス)の設計が出来る人、そういませんし。
【合掌(トラス)の設計が出来る設計士もそういませんね】


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私のエスキース(平面計画案)

2012年07月13日 | 日記・エッセイ・コラム
設計仕事。【開放的な間取りのヒント】の続編。


私のスケッチによる平面計画案の一部を紹介。(画像中央)
決定案ではないので、お施主様のプライバシーは守られると判断しました。

Photo_3 Photo_4 Img_0009


平面図右下に3案の表記がありますが、最終第9案まで練りました。更にその九つの案をベースに詳細を詰め、合計20案ものプレゼンテーションをお施主様に行いました。


当該敷地が北側道路なので、南側敷地の建物に配慮する必要がありました。お施主様との打ち合わせから、1階リビング案と2階リビング案それぞれを試案して欲しいとの要望により、20案もの計画案を熟考した次第です。


プラン集からの転用・引用は一切ありません。
(私はハウスメーカーのプラン集を作成した実績がありますが)


正真正銘、お施主様の為だけの世界でただ一つの設計。建築地の気候風土や諸条件にも全て配慮し、予算内での最高品質を設計してあります。基本設計に3ヶ月、実施設計に3ヶ月。


さて、平面南側を凹状に穿ち、凹部に庭を計画してあります。ダイニング・リビング・居室がこの庭に面します。つまり計画の重心がこの庭。『この庭で、炭火焼肉パーティが出来ますヨ』、『日向ぼっこやゴロ寝が出来ますネ』などと、私はお施主様とお話をします。(^。^)


矢印は通風経路の図示。お施主様いわく、『夏、エアコンに頼らないで済む風通しの良さが現在も実現出来ている』との事でしたので、それを踏襲しました。


この案の特徴の一つは、平面形状を凹状に穿ち、庭とする事で、陽当り・通風・彩光・開放感・季節感等の要望の回答とした事。


また、北側にもバルコニーデッキを計画。外部からの動線経路に加えて、”北庭” とする発想で設計。浴室をただ単なる入浴機能の為だけの空間にするのはもったいないとの私の持論から、ピクチャーウインドウを介して庭を眺める事で、くつろぎの空間としても機能させる為の手法。露天風呂の趣(おもむき)を計画しました。


これらの庭は【2006.05.21坪庭のすすめ】のバリエーション。


実は、この案から更に面積を絞り込んで、劇的にプラン変更を行いました。それが決定案に。
その劇的さ、それは住宅設計のセオリーからは思いもよらない発想の転換によるものなのですが、プライバシーの問題があり、ご覧戴けずに残念です。


お施主様から決定案平面図公開の許可が下りれば、いつの日かUPしたいと思います。


ちなみに、決定案の立面図が下。左から東・北・西・南。
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環境共生住宅の設計にあたり

2012年07月07日 | 日記・エッセイ・コラム

大工仕事の次は設計仕事。

京都・大徳寺孤篷庵・忘筌。
京都の名刹古刹である大徳寺に、【孤篷庵】(こほうあん)なる塔頭(たっちゅう)があります。

 

その孤篷庵内にある茶室が【忘筌】(ぼうせん:禅語「忘筌」: 臨済・黄檗 禅の公式サイト)。

 

 

月間京都史跡散策会 第63号 孤篷庵庭園】 

編集:山口須美男さんのHPより貼らせて頂きました。たいへん素晴らしいHPです。


環境共生住宅をデザインするということ、そのヒントになる建築。

この建築、障子(中敷居)から下は建具が無く、常に自然環境に開放されています。


茶室という用途なので、現代の住宅にこのまま引用する事は出来ませんが、豊かな住まいを実現する為の大きなヒントだと私は考えます。


キーワードは ”穏やかで心地良い刺激”。


設計開始にあたり、住まいの基本理念を策定する時、外部環境を”刺激”と考えるとします。
その ”刺激” を住まいの中でどう位置付けるか。


健常者にとっては、刺激に対する耐力は大きく、ハンディキャップを負ってしまった人にとっては小さい。ここで言う刺激とは、生存を脅かされる類の激しいものではありません。しかし、無理のない我慢程度は必要なもの。


それを ”穏やかで心地良い刺激” と呼ぶ事にします。


例えば赤ちゃんの育ち方に注目してみる。彼がおかれた環境全てが彼にとって ”刺激”。
刺激があるからこそ、彼はそれに反応する。そして、その積み重ねで五感が育まれていく。


もし赤ちゃんを、外的刺激を完全シャットアウトした保育器のみで育ててみたらどうでしょうか?
そこは環境工学から導き出された、生存に最も適した人工環境を完璧に実現するはず。


彼がいる環境は快適そのものだから、刺激は無い。よって彼には刺激への反応が無い。
反応が無いのだから、彼に豊かな五感は育まれないのではないか?


ここで言う保育器、それは、”究極の高気密高断熱住宅” といえやしないか?
環境工学の理想理論値を実現する通年空調、24時間換気、抗菌滅菌無菌建材etc.


豊かさを感じるのは、感性だと私は思う。つまり知覚する能力。それを養うのが ”刺激”。
それは人間の五感、感受性を豊かにする為には必要な要因なのだと。
だから外的刺激を完全シャットアウトしてしまうと、感性は育たないのではないか? 


つまり行き過ぎた経済至上合理主義や工業化を背景にした住宅の理性化路線は、正に理性の産物である高性能によって、感性の育まれる環境をこれからも否定し続ける事になる。感性が育まれない以上、住まいに豊かさを実感することは無いのではないか?


日本には春夏秋冬といった四季があります。


幸いにも日本の気候風土は比較的穏やかで、凍てつく寒さや茹だる様な暑さの期間はそう長くありません。本来、生存を脅かされる類いの ”刺激” ではないのです。


”本来” と言ったのは、夏の熱中症問題がクローズアップされているからです。しかしながら、熱中症は、いわば現代の都市問題・住宅問題が作り出した公害のような気がするのです。


春夏秋冬、四季とは ”穏やかで心地良い刺激” と考えてみましょう。
拒絶するよりも、寄り添うことの方がメリットが大きいと私は考えます。



その ”穏やかで心地良い刺激” に五感が研ぎ澄まされ、豊かな感性が育まれるからです。


例えば、通風。【風をよむ2005.08.27


忘筌は、住まいに対する ”穏やかで心地良い刺激” の必要性を教えてくれています。


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木組みによる隅木③大入れ兜

2012年07月06日 | 日記・エッセイ・コラム

設計仕事の次は大工仕事

木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】の続編。
今回は剪断破壊しない木組みの紹介。


まず剪断破壊してしまった木組み(仮に①とする)の画像。
C11

次いで、剪断破壊しない木組み(仮に②とする)の例。
Img7dc276c979a4Img7dc276c97985Img7dc276c979c3Img7dc276c979b4_2

違いが解りますか?


Img7dc276c979d3Img7dc276c979e3

受け材(メス木)側である水平材の2箇所ある凹部のうち、右側が望ましい形状②。
左側の45度斜めに欠き取っている方は、欠き取り部から先の伸びしろ量との兼ね合いで剪断破壊してしまう凹形状。つまり、画像①と同じ凹形状。


①は、水平材側だけを欠き取っていて、隅木側の欠き取りは無し。
②は、水平材側に深さ1.5センチ程度の窪みを加工して欠き取りは無し、隅木側には複雑な形状の欠き取り加工。


安全な木組みは②の方。伝統大工にしか出来ない木組みです。
(ただし、適材適所適技法により、伝統大工は欠損量を考慮して、①と②を使い分けます。)
引き付けには鵯栓(ひよどりせん)または鵯ボルトを使用します。


さて、ここで一番の問題は、強度が一瞬でゼロに低下する剪断破壊を起こしてしまう種類の木組みを強行採用してしまう理由。


◇まず、安かろう悪かろう建築で良しとする姿勢。
  1円でも建築コストをかけまいとするのですからね。②より①の方が断然ローコスト♪。


◇次いで、99.9%の設計士の木組みの理解不足。
  設計士にとっては①も②も十把一絡げ。つまり性能の違いがわからない。


部材寸法を決定する要因は許容応力度設計によるものだけで、オス木とメス木の接合バランスまで考慮して設計していない(というよりも、木組みを知らないのだから、設計出来る訳がないでしょ)。よって剪断破壊のメカニズムを知る由もなし。

それも、許容応力度設計はパソコンソフトが整備されマニュアルがあるので、素人に毛の生えた程度の設計士(意匠・構造を問わず)でもコンピューターが勝手に計算してくれるだけ。但し、梁成のOK・NGだけネ。


◇そして、伝統大工以外の大工の技術・技能の未熟さ。
 ①は大工であれば規矩術の勉強を少しすれば何となく形には出来てしまえる。多少間違ったとしても現場でパッキンを噛ませれば誰にも知られずに事無きを得る。(私は見た


大工のモラルの低下と、構造が隠れてしまう大壁構造が、それを助長している。


見えなくなってしまうのだから、丁寧な仕事をしなくて済む。コストダウンの為、丁寧な仕事をしてはいけない。つまり腕の良い伝統大工を使わなくて済む雇用主側は人件費カット可能。


負のスパイラル的に、行き過ぎたローコスト化がもたらした全ての質の低下が理由ですね。


ですが、人命に関わる事だからと、コスト度外視で②の木組みによる剪断破壊防止を自主的に行う伝統大工もいます。


鑿や鉋といった刃物の砥ぎが上手な大工はほぼ間違いなく伝統大工。
②の木組みによる隅木の墨付けと刻みが出来る大工は、間違いなく伝統大工。


伝統大工の仕事に嘘は無く、誠実です。適正な対価を支払って下されば、建物の質の低下は防げます。設計士が単なるプランナーやデザイナーだったとしても。


平均寿命26年住宅】ではなく、50年、75年、100年~ と、愛着の持てる住まいがご希望なのであれば、伝統大工のような、仕事に真摯で正直で嘘の無い人達、またそのような伝統大工を雇用している工務店や建設会社に家を建てて貰った方が良いと思います。


追伸:EURO2012優勝はスペインでしたネ。7月に2012ロンドン五輪サッカー男子で、U-23日本代表とU-23スペイン代表が1次リーグで対戦しますが、楽しみ。なでしこも楽しいゲームを見せてくれるかな。優勝はどうでしょうか? 

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