心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

山あれば山を観る 雨の日は雨を聴く 春夏秋冬 あしたもよろし ゆうべもよろし

瓦施工の側部を見る。伝統構法の雨仕舞。

2013年06月29日 | 日記・エッセイ・コラム
一文字軒瓦の施工を、側部から見る。
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改質アスファルトルーフィング面に凸凹加工の施された白い縦桟が乗り、その上に瓦を引掛ける為の瓦桟(木材)がルーフィング面から浮いて設置されているのがよくわかる画像。

この僅かな隙間が有るか無いかで、木材の耐久性⇒屋根の防水性は左右されます。

しかも瓦の下はご覧の様に、外気に面した空気層。
この外気に面した空気層が屋根の防水性を高め、断熱性、耐久性の向上をもたらします。

専門的には『等圧原理』により成立している防水メカニズム。
瓦の内外の圧力が近似である事から圧力差による浸水を防止出来る仕組みです。

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【 建築士定期講習テキスト 最近の技術動向② 雨仕舞 (2013年4月改定版) 
   講師 東海大学名誉教授 石川廣三氏 】 より。

瓦がルーフィング面に密着していないので、毛細管現象による雨水や結露水の呼び込みも無し。
瓦下部で発生する結露水には、この様に外部に排出する仕組みが出来ています。

瓦は、シーリング処理(いつかは切れる)に頼らない、何げに見られる伝統構法の雨仕舞い。


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軒先の瓦は一文字瓦

2013年06月28日 | 日記・エッセイ・コラム
N邸北バルコニーに掛かる軒出1.2mの軒先瓦には、一文字瓦を使用しました。
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すっきりとした、瀟洒で洗練された趣のある軒先の外観になります。ヒューマンスケール設計により、屋根瓦を単なる雨露を凌ぐものとしてだけでなく、意匠としても見ています。

一文字軒瓦は、瓦職人にとっては施工精度を要求される瓦。手塩にかける腕の見せ所。

背後に、白い縦桟の上に浮く瓦桟(木材)が見られます。

改質アスファルトルーフィング面からこの様にして浮かす事で、瓦の下で発生する結露水から瓦桟を保護します。屋根の耐久性を高める数ある対策のうちの1つです。


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長持ちする屋根材といえば瓦

2013年06月27日 | 日記・エッセイ・コラム
建て主さんのたっての要望が耐久性。よって答えは簡単、『瓦』です。
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新しい素材の新商品も次から次に出ますが、瓦を超える耐久性は未だありません。

『耐久性が高い』という事は、街並みの屋根の景観がほぼ100年単位で変わらないという事を意味します。なので、設計者には意匠設計の責任が伴います。

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動く自動車と違って、住宅は街並みの景観を構成する重要な要素。風景になるのです。

人はその風景の中で暮らし、生まれ、育ち、遊び、働き、そしてこころの中のかけがえの無い原風景としてその人の一部になっていくと思うのです。

住宅は個人の嗜好に違いないのですが、景観には配慮しなければいけないと私は考えます。

私は、最初から建て主さんに対して、『屋根は瓦にしませんか』と提案をしました。当初はコストの事もあり、乗り気では無かった建て主さんでしたが、私の熱意に押されたのか、瓦で決定しました。

建て主さんに感謝致しております。

2005/05/30私の原風景のひとつ 京都鴨川、三条京阪から四条方向の俯瞰。
100年変わらない鴨川の流れと京町家の屋根瓦の景観。
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ヤマケイ私鉄ハンドブック11京阪/山と渓谷社 写真/廣田尚敬氏より。

建て主さんにとって、そして、この地域に暮らす住民の人達にとって、景観に溶け込める意匠設計を行えたかどうか、重責を感じております。住まいは文化の容れ物でもあるからです。


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屋根葺き準備完了

2013年06月26日 | 日記・エッセイ・コラム
2重屋根の大工工事が終了して、いよいよ屋根工事です。

屋根葺き材の下葺きは《JIS A 6005》適合の改質アスファルトルーフィング。
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田島ルーフィング㈱HPより、下葺材の構成はこちら

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従来の汎用アスファルトルーフィング940の改良版で、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を混合してアスファルトの低温性状・高温性状を改良したもの。アスファルトルーフィング工業会が推奨するARK規格-04s適合品。

設計図書に『アスファルトルーフィングJIS A 6005適合品』としか記載しなかったのですが、請負工務店であるフォレストブレスさんが、汎用品よりグレードの高い製品を使用してくれました。

屋根葺き材は和型桟瓦。木材は瓦を引っ掛ける為の瓦桟。白い帯はその瓦桟をルーフィングから浮かす部材。瓦の下で生じる結露水から木材である瓦桟を守る大切な役割を担っています。


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空気の通り道⑤

2013年06月25日 | 日記・エッセイ・コラム
二重目の屋根の施工。
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【空気の通り道④】での屋根断熱材《ネオマフォーム》と起り通気垂木が見えます。
頂部の黄土色は現場発泡ウレタン断熱材。ネオマフォームの隙間を補完します。

通気垂木上の直交する板が野地板(のじいた)。無垢の杉板で、屋根葺き材の下地。構造用合板では調湿作用が劣り、過酷な使用環境での耐久性に疑問があるので、無垢材を使用しました。

野地板の施工は、互い違いに配置する『千鳥貼り』。

『千鳥貼り』は、板の継ぎ目が一本の通気垂木に集中しないので、下地の挙動を少なく抑える事が出来ます。より良い雨仕舞いの為のベースです。

隠れて見えなくなる部材も、無垢材使用と丁寧な貼り方で、”超高耐久”を設計施工しています。

この、『屋根断熱材と通気垂木と野地板との空間』が、屋根面での上昇空気の通り道。
終着は頂部に隙間を開けておき、棟換気から外気に排出させるのです。

【外殻通気システム】は空気の圧力差を利用した上昇空気を建物外殻に纏わせて、外壁と野地面にこもる湿気を外気に排出し、耐久性、断熱性、遮音性etc.を次元の高い性能に向上させる為のエア・システム。

空気の通り道も”設計”です。


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空気の通り道④起り通気垂木

2013年06月24日 | 日記・エッセイ・コラム
屋根断熱材《ネオマフォーム》の上の木材が、二重目の屋根の為の垂木。
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意匠設計として”起り”(むくり)を施しました。やわらかな建築を目指したからです。

バックナンバー【2012/05/30やわらかな建築・私が残したいものより。
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起り屋根と直線屋根のスカイラインを比較してみて欲しい。
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断熱材と起り通気垂木との空間を、土台下及び軒先外気導入スリットから上昇空気が流れます。

【外殻通気システム・屋根】では、断熱効果が更に向上。特に夏、”空冷”になるからです。
更に断熱材継ぎ目の防水気密テープ貼りにより、防水性と気密性(断熱材の補完作用)もアップ。

二重屋根は一重屋根に較べて遥かに高性能・超高耐久。メリットずくめです。

ちなみに、ネオマフォーム断熱材の厚み9cmは、4.5cm厚+4.5cm厚の2枚重ね。

性能低化につながる『目地の重なり』を避ける為に、設計図で【屋根断熱材割付図上段】と【屋根断熱材割付図下段】を作図して、施工を依頼しました。

起り通気垂木は設計で全寸法を出して、塚田大工さんに作って貰いました。現場加工一切無し。
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空気の通り道③

2013年06月22日 | 日記・エッセイ・コラム
N邸屋根軒下の天上見上げ。
軒の出は標準で1メートル、最も深い部分で1メートル20センチあります。
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左側スリットが軒天からの外気導入口。右側スリットが外壁通気口。

防虫の為のステンレスパンチングメタルが途切れる事なく、一直線に連続しています。
意匠設計により、市販の換気部材製品の取り付けでは無く、素材から加工して頂きました。

反対に、屋根の上側から見た【外殻通気システム】のスリット箇所。二重屋根構造の一重目。
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左側が外壁通気用、右側のパンチングメタル部が軒先の外気導入用。

【空気の通り道①②③】の3本の矢で、外殻通気システムを機能させます。

今回、建て主さんの一番の要望は耐久性。

そこで、高耐久を超える”超高耐久”として、一体打設ベタ基礎、無垢材、構造材現わし、屋根、深い軒の出、壁、調湿素材の活用、等々のパッケージ・システムとして、真壁構造と外殻通気を採用しました。

壁は後述するとして、屋根の2重構造は1重に較べ、断熱・通気・雨対策で大変優れます。
温故知新に加え、新技術、素材、構法、工法を融合して、次元の高い性能を獲得しています。

請負工務店の施工管理も、この様にしっかりと行ってくれています。
建て主さん本人も画像で確認出来るので、誠実かつ正直で、大変良心的な施工です。



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空気の通り道②

2013年06月21日 | 日記・エッセイ・コラム
N邸屋根平側軒下の天上見上げ。天井材は無垢の杉板。厚みは4cm近くもあります。
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右側スリットが外壁取り合い部。【空気の通り道①同様、土台下から上昇空気が流れます。
外壁通気⇒屋根通気⇒棟換気を行う【外殻通気システム】の為の空気の通り道。

バックナンバー【2005/08/27風をよむ では、換気についてしたためています。
外殻通気とは少し異なりますが、空気の通り道を設計する点については、参考まで。

同じくバックナンバー【2012/05/30やわらかな建築・私が残したいもの

意匠では、91cmピッチの大垂木の先端をご覧の様に。面もかなり大きくしてあります。
社寺建築の垂木の居定の様に、威圧感を減じ、やわらかな印象を醸し出す為の工夫です。

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空気の通り道①

2013年06月20日 | 日記・エッセイ・コラム
N邸屋根けらばの天井見上げ。
2013.06.18勾配天井だから屋根断熱ですで紹介したスリットを、下から見た画像。
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妻壁の天井から光が差し込んでいます。このスリットを土台下から上昇空気が流れます。
外壁通気⇒屋根通気⇒棟換気を行う【外殻通気システム】の為の空気の通り道。

このシステムは、建物の大敵である『壁内に籠る湿気』を排出させ、壁内を乾燥状態に保ちます。
常時、建物の外殻に、高低による空気の圧力差を利用して風が流れている状態を作るのです。

常に風に晒す事で、躯体と壁内の乾燥状態を維持させる、とても大切なエアー・システム。
例えば、梅雨時でさえ風を当てれば洗濯物が乾くのに似ています。

壁内結露で建物の寿命を縮める事も無く、カビの温床化で住人の健康を害する事もありません。

高性能、高耐久、そして何より健康住宅の為には、空気の通り道も設計施工します。



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N邸の屋根に用いた断熱材

2013年06月19日 | 日記・エッセイ・コラム
《A種フェノールフォーム保温板1種2号》 旭化成建材のネオマフォーム
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【フラット35】対応・木造住宅工事仕様書(平成24年版)に記載されている断熱材の種類で最高性能であり、平成12年「住宅の品質確保の促進等に関する法律」制定時にはまだ無かった断熱材。

ネオマフォーム4つの基本性能はこちら。Q&Aはこちら
性能、経年劣化の問題、着火性の問題等々、他のボード状断熱材を大きく凌駕しています。

そして、地球温暖化防止の為のノンフロン製品。

建築という行為が知らず知らずのうちに地球環境を破壊してしまっている事への配慮を忘れずに。
出来る限り、環境に優しい設計施工に努めています。

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勾配天井だから屋根断熱です

2013年06月18日 | 日記・エッセイ・コラム
クリーム色の部材が屋根断熱材。
N邸では2階の大空間の温熱環境を優れたものにする為に、断熱性能が最も高い《A種フェノールフォーム保温板1種2号》のボード状断熱材を使用しています。厚みは9cmあります。
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断熱材の下側が2階天井兼野地の杉3層クロスラミナパネル、上側の木材は通気垂木。ビス施工された手前側の木材と杉パネルとの隙間は外壁通気の為のスリット。

つまりN邸の屋根は外壁通気⇒屋根通気を行う2重屋根構造。

断熱材と外殻通気構造による高品質高性能高耐久の設計施工です。
『住宅の品質確保促進等に関する法律』で温熱環境【等級4(最上級)】を満たす仕様の1ショット。

この、A種フェノールフォーム保温板1種2号の厚み9cmは、断熱材のトレードオフ制度は未利用。純粋に屋根面だけを考慮しているので、建物全体でのウィークポイントが発生しない様にしてあります。

ちなみに一般に用いられる住宅用グラスウール断熱材10K相当品だと、同じ性能を満たす為には20cmもの厚みが必要になってしまいます。

断熱材の敷き込みに関しては、設計図で割り付け図を作成しました。請負工務店の設計図に基づく施工管理もしっかり行ってくれていて、画像付きで監理者へ連絡してくれます。

設計と施工はクルマの両輪。誠実な施工で、建て主さんも安心されていると思います。

『設備に可能な限り頼らないで、夏涼しく冬暖かい家』の為の一つのエッセンス。

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N邸の大工さん

2013年06月17日 | 日記・エッセイ・コラム
塚田大工さんです。親子で大工をされています。
棟梁は60歳代ですが、好々爺の落ち着きのある方です。
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上棟準備で、2階床と屋根の杉パネルの加工をされているところです。

筑波大学教授・安藤邦廣先生設計の仕事もされた事のある腕の良い方です。

~上棟時の休憩での或る談笑~

『安藤先生の仕事、難しくて面倒で大変でしたでしょう?』(小嶋)
『小嶋さんのと同じだよ』(塚田棟梁)
『ははは(笑)』(一同)

『図面を貰った時は、俺んとこで墨付け・刻みをやるもんだと思ってたんだよ』(塚田棟梁)
『そうですか。今回は工務店さんに一任しましたので、次回はお願いしますね。』(小嶋)
まかせてよ』(塚田棟梁)
『ちゃんと私んトコ、通してくださいヨ』(工務店社長)
『ははは(笑)』(一同)

息子さんです。N邸屋根の曲線材の墨付け・刻みをしているところです。
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修行もお父さんの元で積んだそうです。人懐っこい感じがする穏やかな好青年です。
良き父であり師匠から、良い人間性と丁寧な仕事の流儀を育まれた感じが雰囲気として伝わってきます。

建て主さんにとって、素晴らしい大工さんに巡り合う事が出来て、良かったと思います。
請負工務店の社長には感謝です。

地方には、腕も人間性も素晴らしい職人が、まだまだ大勢います。

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工務店の誠実度は現場を見よ

2013年06月15日 | 日記・エッセイ・コラム

雨対策として、屋根と壁とにブルーシートを掛けて部材が濡れない様にしました。
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『上棟後、屋根と外壁が出来る迄は少しでも雨に濡れないでいて欲しい』
N邸に限らず、全ての建て主さんの願いであると思います。

そんな建て主さんの願いに、N邸請負工務店である茨城県石岡市のフォレストブレスさんは、真摯に対応してくれています。

当初は『とっさの雨にも対応出来る様に、図面には無い透湿防水シートを屋根面に施工しようと思うのですが、いかがですか?』と申し出てもくれました。追加料金無しでです。幸い、普段の行いが良いからか(笑)、天候に恵まれ、ブルーシートで十分対応出来ました。

また、屋根の杉パネルの釘ピッチも、こうして工事写真撮影をして、監理者に連絡してくれます。

とても誠実な工務店に施工して貰って、建て主さんは安堵しています。



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きめの細かい肌の美しさ

2013年06月14日 | 日記・エッセイ・コラム
『乙女のやわ肌の様な…』と私が形容した、国産材の杉のテクスチャー、質感。
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天然乾燥の杉特有の、きめの細かい肌の白さと淡い赤のコントラスト。
秋田美人の美肌というか、もち肌というか。

高級車の特殊塗装の様な、幾重にも光沢が折り重なって見えます。
良く切れる手鉋仕上げの場合ですが。

丸いグリグリは節穴の補修。埋め木といって、木の枝で塞いだもの。
美肌の為には大変重要なスキンケア。もちろん手仕事です。

やわらかい印象が素晴らしい。

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