心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

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木組み:台持ち継ぎ5比較2

2012年08月25日 | 日記・エッセイ・コラム
構造材現わしの家、木造伝統構法の設計 【純粋木組み方式】と【金物方式】との比較について。


【純粋木組み方式】 
木組み:台持ち継ぎ2実践型2012.08.07木組み:台持ち継ぎ3実践型2012.08.11より。
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【金物方式(目違い継ぎ・引きボルト)】 真継ぎの柱のほぞ穴が下端に見られる。
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【金物方式(目違い継ぎ・引きボルト)】 側面の木目が連続している点にも注目して欲しい
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やはり【金物方式】の方が仕事は圧倒的に簡単。そしてローコスト。


【金物方式】は、接合をボルトに任せて、木組みは軸方向の芯ズレを防止する為の凸凹である”目違い”を設けるだけ。但しボルトの為の断面欠損は互い違いに設けて、片方の材に巨大な欠損を生じさせない様に配慮をする。


片や【純粋木組み方式】はご覧の通り。極めて高度な知識と技能が必要。


コロンブスの卵” と同じで、この【純粋木組み方式】を見ないで接合部を設計したら、おそらく【金物方式】になるでしょうね。【木組み:台持ち継ぎ3実践型2012.08.11を参考にして欲しい。背割れ材である。【鎌継ぎ】【追っ掛け大栓継ぎ】【金輪継ぎ】は使えないのだから。


『では、どちらが強いか?』


私はこの部材では、【純粋木組み方式】の方だと思う。
少なくとも”30年・50年・75年・100年・・・200年先の強度・耐久性”という観点では、間違いなく【純粋木組み方式】である。理由は【木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25による。


しかしながら、最も大切なのは、コストに応じた適材適所適技法。


安全性、経済性、木目を揃える事まで配慮する意匠、大工伝統技術・技能の継承、文化的側面まで含め、考え得る限りの計算をして、私は設計・施工をします。


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木組み:台持ち継ぎ4比較

2012年08月21日 | 日記・エッセイ・コラム
構造材現わしの家、木造伝統構法の設計【台持継ぎの真継ぎと持出し継ぎの比較】について。


【真継ぎ(芯継ぎ):柱芯で左右材を継ぐ方法】
【持ち出し継ぎ  :柱芯より持ち出したポイントを中心にして左右材を継ぐ方法】


過去記事【木組み:台持ち継ぎ1標準型2012.08.04と見比べて欲しい。
文章よりも図にした方が理解されるでしょう。 画像クリックで拡大。

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こうして比較すると、台持ち継ぎの持ち出し継ぎ使用の危険さが理解されると思います。


今迄、持ち出し継ぎ使用をされていた方にとって、”目から鱗” である事を願います。
真の設計士、真の大工(伝統大工)を目指す方の参考になれば、幸いです。


台持ち継ぎは、引っ張り力対策を講じて、真継ぎで用いる。


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木組み:台持ち継ぎ3実践型

2012年08月11日 | 日記・エッセイ・コラム
構造材現わしの家、木造伝統構法の設計【台持ち継ぎ実践型】について。


この木組みは、【台持ち継ぎ標準型】と【打ち抜きほぞ割り楔】と【栓】と【蟻】の合成型


【蟻継ぎ】大工の手仕事 木組み・伝統技術から。
Kosikakeari1Kosikakeari2Kosikakeari3Kosikakeari4


【アラレ組み】
木工が200%楽しくなるルーター&トリマー使いこなしマニュアル・立風書房より。
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【蟻】を【アラレ組み】にすることで、接合強度が向上。机の引き出しの角などで見られる技法。


そして【台持ち継ぎ実践型】木組みの様子。 
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台持ち継ぎの設計では、左右材が離れない様に、”引っ張り力対策” が必要
 私なりの回答。過去記事【木組み:台持ち継ぎ1標準型2012.08.04と見比べて欲しい。


【台持ち継ぎ標準型】 【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。
DaimochiaDaimochibDaimochicDaimochid


24cm×24cm断面の背割れ材 を横架材使用で継ぐ事の難しさ。
背割れがあるので、【追っ掛け大栓継ぎ】【金輪継ぎ】【鎌継ぎ】は使えない。
そこで、私が採用したのが【台持ち継ぎ実践型】だった訳です。


【追掛大栓継】背割れ材では使用不可)【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。
Okkakedaisen1Okkakedaisen2Okkakedaisen3Okkakedaisen4

【金輪継ぎ】背割れ材では使用不可)【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。
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【鎌継ぎ】背割れ材では使用不可)【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。
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【台持ち継ぎ実践型】と【台持ち継ぎ標準型】を見比べて欲しい。
【台持ち継ぎ】を吹き抜けの化粧梁に持ち出し継ぎで用いる危険さが理解されると思う。


結論:台持ち継ぎは、引っ張り力対策を講じて、真継ぎで用いる。


お盆休み。続く。

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長男の大冒険(^-^)

2012年08月08日 | 日記・エッセイ・コラム
『一人で電車に乗って、じいじの家に行きたい』と、小学生の長男が今日、じいじの家に行きました。

Photo

妻が出発駅まで見送り、じいじに到着駅まで迎えに来て貰う初めての一人旅ですが、息子にとっては大冒険だったと思います。


親として、涙が出る程嬉しかった。   抱きしめてあげたいと思います。




木組み:台持ち継ぎ2実践型

2012年08月07日 | 日記・エッセイ・コラム

構造材現わしの家、木造伝統構法の設計【台持ち継ぎ実践型】について。


大工であれば、他人に見せたがらない自分の技法の詳細画像を、私はUPします。
真の設計士、真の大工(伝統大工)を目指す方の参考になれば、幸いです。


引っ張り力の発生する部位に、【台持ち継ぎ標準型】 を用いてはいけない
特に、吹き抜けでの持ち出し継ぎ使用は、大地震で間違いなく崩落する(前回記事)

なので、
台持ち継ぎの設計では、左右材が離れない様に、”引っ張り力対策” が必要


ではどうするか? 私なりの回答が↓下の画像。


使用材は檜(無節)24cm×24cm断面の背割れ材。 お寺の庫裡の仕事でした。

Img7d91f97b73c8

まず、【真継ぎ】にする。(私は、台持ち継ぎは、絶対に持ち出し継ぎで使用しない)


ほぞを引っ張り力対策として、【栓:せん】扱いにする。


つまり、左右材が離れない様に、柱のほぞを上下材で貫通する【打ち抜きほぞ割り楔:うちぬきほぞわりくさび】として、上下材のほぞ穴に通す。この技法は上下材の緊結効果(縫いボルト及び柱頭金物効果)も発生する一石三鳥。


その際、引き抜き強度を左右する【楔:くさび】には、材料強度の大きな欅や樫を使う。


ほぞの栓扱いでは、材先端の剪断破壊を絶対に発生させてはならない。ほぞの大きさと材先端の距離のバランスを考慮して、台持ち継ぎの勾配も決定する。まずはじめに台持ち継ぎの勾配を決定しないのがポイント。


軸方向の芯ズレ防止と左右材が離れない様に、更に【蟻:あり】を切る。背割れ材であることから【アラレ組み として、接合強度向上を図る。それを、”上端:うわば” と”下端:したば” とで同時に設計する。

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私はこの木組みでは【銚子口:ちょうしぐち】を省略しました。理由は、梁成と台持ち継ぎの勾配とダボを母材に埋め込んだ時の断面欠損を考慮して、バランスが悪いと判断したからです。


【銚子口】は、大工により、鉛直に設ける方法と、勾配に垂直に設ける方法があります。勾配に垂直に設けてしまうと、引っ張り力に対しては更に弱くなります。ダボの埋め込み深さも要注意で、”効かす” 為には相応の深さが(4.5cm以上)必要な反面、母材凹側の断面欠損量にも細心の注意が必要になります。


次回に続く。

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木組み:台持ち継ぎ1標準型

2012年08月04日 | 日記・エッセイ・コラム
構造材現わしの家、木造伝統構法の設計について。


引っ張り力の発生する部位に、【台持ち継ぎ標準型】 を用いてはいけない
特に、吹き抜けでの持ち出し継ぎ使用は、大地震で間違いなく崩落する


設計士は何故か【台持ち継ぎ】が好きみたいです。斜めに入り組んだ接合線が材の側面に出る意匠がデザイン心をくすぐるからでしょうか。しかも吹き抜けの化粧梁で、真継ぎではなく持ち出し継ぎの指示ばかり。


【真継ぎ(芯継ぎ):柱芯で左右材を継ぐ方法】
【持ち出し継ぎ  :柱芯より持ち出したポイントを中心にして左右材を継ぐ方法】


実は、【台持ち継ぎ標準型(木組みだけ・ボルト無し)】の持ち出し継ぎ使用は禁じ手。
理由を説明します。


↓台持ち継ぎ標準型。【大工の手仕事 木組み・伝統技術から。

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引っ張り力(左右材が離れない様)に抵抗するのは、【銚子口】という2箇所のダボ(画像で凸部の材の事)だけ。3cm×3cm×3cm程度の2箇所の凸突起だけで、左右材が離れるのを防げる訳がない。


しかも直下型地震での突き上げ(垂直方向加速度)に対しては、上木の自重以外、無抵抗。
実際の地震動は、水平・垂直方向同時に揺れる。ダボを3cm×3cm×3cmのほぞと考えてみるとどうだろうか?


設計士にしろ大工にしろ、設計者は木組みのメカニズムを知らないといけない。部位に応じた木組みの技法を採用しなければいけない。接合線がデザインの売りになるからといって、ファッション的な木組みの使い方をしてはいけない。


引っ張り力の発生する部位に、【台持ち継ぎ標準型】 を用いてはいけない
特に、吹き抜けでの持ち出し継ぎ使用は、大地震で間違いなく崩落する


どうしても台持ち継ぎを持ち出し継ぎで用いたいのであれば、銚子口近辺にボルトを使用して上下材を縫い、引っ張り力に対してダボ+ボルトの剪断力を働かせる様な使い方をしないといけない。しかもM16以上の径のボルト。


続く。次回は、台持ち継ぎ実践型を紹介。

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『大工の手から鑿を奪え』今昔

2012年08月01日 | 日記・エッセイ・コラム
100回目記念記事。前回【消防隊員が4名も亡くなる事故の続編。

通し柱の断面欠損。↓まだまだこれが現場の現実。

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12cm角柱に、同一レベルで4方差し。これだけの断面欠損、折損で安全なはずがない。


この断面欠損を指示してきたのは設計士でした。


施工者は設計図通りに作るのが現在の建築制度。なので施工者が設計者の指示した木組みを変更する事は設計図通りに作っていない事になってしまい、制度には大変な矛盾をかかえた側面があります。(何しろ発注者の機嫌を損ねると次の仕事を貰えません。)


しかしながら、設計士の図面で ”絶対に危険” と判断した場合(例えば【台持ち継ぎの跳ね出し使用】など)、私は自らの職責で提案して、変更の許可を貰ってきたのですが、この画像の件は抗えませんでした。


ちなみに、前回記事で紹介した【最も欠損量の少ない簡易木組み】の画像をもう一度

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伝統構法にしろ木組みにしろ、木造で最も大切なのはバランス。


どうも、木造建築業界人の多くは、【凸オス木】ばかりに関心が行ってしまうようです。
なぜ【凹メス木】の断面欠損に関心が行かないのか?


それはオス木が担っている荷重を理解出来ていないから。荷重処理で少しでも大きく掛かり代を取りたい為に、メス木を大量断面欠損させる。それに、金物が無かった頃の竿ほぞのイメージもあるのかも知れない。


太い大黒柱でこそ出来る木組みを、12cm角柱でも採用してしまう危険性。


大工の手から鑿を奪え』とは永沢毅一・田辺平学の両氏。
新聞記事文庫 災害及び災害予防(7-041):神戸新聞1927.3.15(昭和2) より。


設計士と大工に木組みの凸凹の教育が必要』とは、私の8年間のべ320棟もの構造材の墨付けと刻みで得た率直な感想。


大量生産型コマーシャリズムプランナーやデザイナー設計士ではなく、墨付けと刻みの出来ない大量生産型大工ではない、真の設計士と真の大工(伝統大工)が必要です。未来の為に。


地震や火災で犠牲者を出さない為には、情報の公開と教育、何より当事者の向上心と学習がとても大切です。

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