心にうつりゆくよしなしごと / 小嶋基弘建築アトリエ

山あれば山を観る 雨の日は雨を聴く 春夏秋冬 あしたもよろし ゆうべもよろし

木組みによる隅木③大入れ兜

2012年07月06日 | 日記・エッセイ・コラム

設計仕事の次は大工仕事

木組みによる隅木②捻組と渡腮2012.06.25】の続編。
今回は剪断破壊しない木組みの紹介。


まず剪断破壊してしまった木組み(仮に①とする)の画像。
C11

次いで、剪断破壊しない木組み(仮に②とする)の例。
Img7dc276c979a4Img7dc276c97985Img7dc276c979c3Img7dc276c979b4_2

違いが解りますか?


Img7dc276c979d3Img7dc276c979e3

受け材(メス木)側である水平材の2箇所ある凹部のうち、右側が望ましい形状②。
左側の45度斜めに欠き取っている方は、欠き取り部から先の伸びしろ量との兼ね合いで剪断破壊してしまう凹形状。つまり、画像①と同じ凹形状。


①は、水平材側だけを欠き取っていて、隅木側の欠き取りは無し。
②は、水平材側に深さ1.5センチ程度の窪みを加工して欠き取りは無し、隅木側には複雑な形状の欠き取り加工。


安全な木組みは②の方。伝統大工にしか出来ない木組みです。
(ただし、適材適所適技法により、伝統大工は欠損量を考慮して、①と②を使い分けます。)
引き付けには鵯栓(ひよどりせん)または鵯ボルトを使用します。


さて、ここで一番の問題は、強度が一瞬でゼロに低下する剪断破壊を起こしてしまう種類の木組みを強行採用してしまう理由。


◇まず、安かろう悪かろう建築で良しとする姿勢。
  1円でも建築コストをかけまいとするのですからね。②より①の方が断然ローコスト♪。


◇次いで、99.9%の設計士の木組みの理解不足。
  設計士にとっては①も②も十把一絡げ。つまり性能の違いがわからない。


部材寸法を決定する要因は許容応力度設計によるものだけで、オス木とメス木の接合バランスまで考慮して設計していない(というよりも、木組みを知らないのだから、設計出来る訳がないでしょ)。よって剪断破壊のメカニズムを知る由もなし。

それも、許容応力度設計はパソコンソフトが整備されマニュアルがあるので、素人に毛の生えた程度の設計士(意匠・構造を問わず)でもコンピューターが勝手に計算してくれるだけ。但し、梁成のOK・NGだけネ。


◇そして、伝統大工以外の大工の技術・技能の未熟さ。
 ①は大工であれば規矩術の勉強を少しすれば何となく形には出来てしまえる。多少間違ったとしても現場でパッキンを噛ませれば誰にも知られずに事無きを得る。(私は見た


大工のモラルの低下と、構造が隠れてしまう大壁構造が、それを助長している。


見えなくなってしまうのだから、丁寧な仕事をしなくて済む。コストダウンの為、丁寧な仕事をしてはいけない。つまり腕の良い伝統大工を使わなくて済む雇用主側は人件費カット可能。


負のスパイラル的に、行き過ぎたローコスト化がもたらした全ての質の低下が理由ですね。


ですが、人命に関わる事だからと、コスト度外視で②の木組みによる剪断破壊防止を自主的に行う伝統大工もいます。


鑿や鉋といった刃物の砥ぎが上手な大工はほぼ間違いなく伝統大工。
②の木組みによる隅木の墨付けと刻みが出来る大工は、間違いなく伝統大工。


伝統大工の仕事に嘘は無く、誠実です。適正な対価を支払って下されば、建物の質の低下は防げます。設計士が単なるプランナーやデザイナーだったとしても。


平均寿命26年住宅】ではなく、50年、75年、100年~ と、愛着の持てる住まいがご希望なのであれば、伝統大工のような、仕事に真摯で正直で嘘の無い人達、またそのような伝統大工を雇用している工務店や建設会社に家を建てて貰った方が良いと思います。


追伸:EURO2012優勝はスペインでしたネ。7月に2012ロンドン五輪サッカー男子で、U-23日本代表とU-23スペイン代表が1次リーグで対戦しますが、楽しみ。なでしこも楽しいゲームを見せてくれるかな。優勝はどうでしょうか? 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿