時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

いびつな経済成長路線

2007年07月21日 | 経済問題
日銀がゼロ金利政策を解除してから、早1年が経ったそうだ。短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標は追加利上げを経て0.5%となり、預金金利や住宅ローン、企業向け貸出金利などが上昇した。懸念された景気の失速は起きていないものの、物価の下落傾向が続いている。一方、国際的には超低水準の金利が円安の進行を招いていると論評されている。
さて、景気が拡大しているにもかかわらず、物価が低下しているというのは、どういうことだろうか?
流通する貨幣量が増えると、貨幣価値が下がり、物価は上昇するわけだが、物価が下落しているということは、貨幣の流通量が減り、貨幣価値が上がっているということなのだろうか。
今、景気が拡大しているとはいうものの、それを実感できるのは、一部の大企業や輸出企業(とその経営者である資産家)のみで、こういう企業では給料は上昇しているが、売り上げの拡大ほどには上昇せず、むしろ、アジア諸国との競争を理由に、個々の企業を見れば、サービス残業の横行、非正規雇用者の増加や違法な偽装請負の活用などで、人件費総額を抑制し、結果として商品価格を廉価に抑えている。安い商品を作るために、人件費にしわ寄せをしているという構図が見えてくる。
したがって、景気が拡大し、貨幣流通量は徐々に増えているが、そのお金は、一部の大企業、資産家などに溜め込まれ、実際に流通している貨幣量はむしろ減っているという図式にならないだろうか。
たとえば、日銀券が1兆円発行され、これが日本に流通しているとする。このうち、5000億円は庶民に給料として支払われ、貯蓄をする余裕のない勤労者層は、これを生活費として使用するため、5000億円は実際に流通するが、残りの5000億円は企業などに蓄えられ、実際には流通しない。もちろん企業も設備投資なども行うが、結果的にそれ以上の利潤を上げ、これがどんどん蓄蔵されていく。
景気拡大に伴い、日銀がさらに1000億円を追加発行すると、流通量は1兆1000億円になり、物価が上昇するかに思われるが、企業は人件費を削り、さらに儲けを上積みするので、企業には6500億円が溜め込まれ、給料の総額は削られ、実際上流通するお金は4500億円になる。こうして、実際上の流通量が減って、貨幣価値が上がり、物価は下落する。こういう図式にならないだろうか。
編集長は、経済の専門家ではないが、日本の経済状況を見ていると、どうも、上述のような現象が起きているように思われるのである。
儲かっている企業や資産家の手元には、使われない、流通しない貨幣がどんどん蓄えられ、その一方で国民が所有し、実際に市場に流通する貨幣量は縮小しているという現実がありそうである。
この結果、持つ者と持たざる者の格差はますます広がっていく、こういう現象が起きているのではなかろうか。
安倍内閣が主張する「成長路線」の中身は、概ねこのような内容ではないだろうか。
そして、この路線を続ける限り、物価は上昇せず(給料も上昇せず)、日銀は、なかなか金利引き上げに踏み切れないだろう。その結果、欧米諸国との金利差は縮小せず、ますますの円安になり、ガソリンや食料など、輸入物価の上昇につながるが、その一方で、国民所得が下がり、国内生産品の価格は低下するので、結果としてそれほどの物価上昇は起こらず、現在のような物価の下落状況が続くことにならないだろうか。
今や世界の上位950万人の億万長者(1億2千万円以上の資産を有する)が保有する資産額合計は4,500兆円という途方もない金額になっており、世界中の資産家は、だまっていても資産が増えるという循環に入っている。
こういう状況は、多くの国民が生活できなくなる極限まで続き、どんどんと給料が下落することにほかならない。この悪循環を断ち切る方法は簡単である。
一部の大企業や資産家が溜め込んだ流通していない貨幣を税金として取り立てて、庶民減税、医療、福祉、教育などに支出し、国民負担を軽減することである。また、最低賃金の引き上げなどを国として決め、大企業などに儲けの一部を吐き出させることである。
安倍政権に任せておく限り、最悪の結果を招くことになることは言うまでもないことである。


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