時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

なぜ、共働き家庭が増えるのか

2007年03月30日 | 経済問題
編集長はマンション暮らしである。マンション内の家庭をみると、会社をリタイアした高齢者宅を除くと、ほとんどが共働き世帯である。昼間、家にいない家庭が圧倒的に多い。
なぜ、このように共働き世帯が増えているのだろうか。少し考えてみた。
特定の地域社会のすべての夫婦が、夫は働き、妻は主婦と仮定しよう。
どの夫も、ほぼ同じ労働を行い、毎月の給料は10万円だとする。
賃金は、夫の「労働力」という商品の再生産と妻の生活維持(夫婦の衣食住と平均的な文化的生活に必要な費用)によって決まる。すなわち、夫婦2人の生活費が約10万円ということだ。(こういう数字は、社会統計によって明らかにできる。)
ところが、そのうち、1割の家庭で妻がパートに出て5万円の追加収入が得られるようになると、9割の家庭では10万円、1割は15万円の収入になり、この家庭では、他の9割の家庭に比べると少し贅沢な暮らしができるようになる。
この時点では、全家庭の平均収入は、10.5万円になる。しかし、社会的にみると、夫婦の基本的な生活費は、相変わらず10万円なので、企業としては、0.5万円余分に支給していることになり、0.5万円の賃金の切り下げが行われる。9割の家庭では、10万円の収入が9.5万円になっても、生きていけないほどではないが、やや生活が苦しくなるので、これらの家庭の主婦も徐々に働き始めるようになる。そして、やがて5割の家庭で15万円に収入が得られるようになり、残り半分では10万円となり、全家庭を平均すると、月収は12.5万円になる。
しかし、社会的にみると、夫婦の基本的な生活費は、相変わらず10万円でよいはずだから、企業とすれば、2.5万円は余分な給料ということになる。ここで更なる賃金の抑制が始まり、企業は余分な2.5万円を削減するようになる。
そうすると、5割の共働き家庭では15-2.5=12.5万円、夫のみが働く世帯では、10-2.5=7.5万円となり、夫のみが働く家庭では、10万円という平均的な生活が維持できなくなってくる。
これによって、残りの5割の家庭の主婦も、徐々に働きに出ざるを得なくなるのである。
こうして、共働きが増えるのが、資本主義社会の宿命なのである。
そして、その結果、共働きをしても、給料は2人合わせて10万円に切り下げられ、平均的な生活を維持できるだけの賃金に逆戻りしてしまうのである。
実際の社会では、このように単純にことが運ぶわけではない。共働き世帯では、妻の交際費や能力向上のための経費などが加わるため、単純に10万円では済まないことは言うまでもない。
さらに、共働きの増加や賃金の抑制は徐々に行われるため、実際の変化は目に見えにくい。もちろん、文化水準の向上によって、賃金(家族の生活維持費)そのものも上昇していくのだが、働ける者を次々と労働市場に吸収し、これによって、さらに賃金の低下をもたらすのが、資本主義社会の仕組みなのである。
これらの動きは、非常にゆっくりとしたものであるため、生活の中で賃金の抑制を実感することはほとんどない。
しかし、実際に、夫婦共働きでやっと家計を維持しているという家庭は非常に多くなってきているのではなかろうか。また、夫1人の稼ぎで、悠々とした暮らしを送れるという家庭は、現在では少ないのではなかろうか。
さて、男性、女性に関わらず、その能力を生かし、さらに伸ばしながら生活の糧を得るとともに、社会のために貢献することは素晴らしいことである。編集長はこのことを決して否定しない。
しかし、現代社会は、夫婦共働きでなければ基本的な生活すら維持できないような社会になりつつあるのではなかろうか。
こんな仕組みではなく、多くの人材が社会に進出することによって、生産性の向上が図られ、労働時間を短縮し、企業が削った賃金を元に戻し、生活にもゆとりが生まれ、家族とともに余暇を過ごせるような社会の到来を期待するものである。

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