時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

後期高齢者診療科の登録は、診療所の14%

2008年05月15日 | 医療・社会保障
後期高齢者診療科(担当医制)を登録した内科診療科数が明らかになった。
それによると、現在、63,286診療所のうち、8,876診療所(約14%)が名乗りを上げているという。
後期高齢者医療制度では、診療報酬が月額6,000円(1割は患者負担)の定額制になるため、もし、6,000円未満の診療報酬で治療が可能な患者の場合は、診療所として損失は発生しない。たとえば、3,000円、4,000円分の治療しかしなくても6000円が支払われ、診療所としては「もうかる」ことになる。一方、合併症などの治療で、6,000円以上の治療が必要な場合でも、診療報酬は6000円しか支払われず、この場合は診療所の持ち出しになる。
名乗りをあげた14%の医療機関には、どのような思惑があるだろう。
一つは、比較的に軽症の患者が多いので、1人当り6,000円の定額報酬が入れば、全体としては十分に採算が取れると判断している診療所である。
もう一つは、重症の患者が多く医療費は6,000円以上かかるが、仮に診療所の持ち出しになったとしても定額の6,000円で今までどおりきちんと治療しますよ、という親切な診療所である。
こういう診療所は、良心的な方であろう。
更にもう一つ、最悪のケースでは、どんな重症であっても、定額の6,000円までしか治療しませんよ、という診療所であろう。6,000円分の治療が終われば、結果的には、翌月までは診療拒否でほったらかしということも考えられる。定額の診療に達したら、後は、別の病院で診療を受けて下さい、というケースもあり得るだろう。
後期高齢者診療科(担当医制)を登録した診療所は、いったいどういう思惑があって、登録を申し出たのだろうか?
30都道府県の医師会は、後期高齢者医療制度を「粗診粗療で済ませる制度」、「受診制限になる」という理由で、反対を表明しており、傘下の診療所に対して、後期高齢者診療科(担当医制)に登録しないように呼びかけている。
ちなみに、現時点での75歳以上の高齢者にかかる診療料は6,980円と言われており、定額の6,000円を超えている。
すなわち、もし、全国的にこの定額診療が普及すれば、75歳以上の高齢者への治療は確実にレベルダウンすることになる。
最先端の医療が受けられない制度、年齢によって差別される制度は、どう考えても異常である。しかも、後期高齢者が必要な治療を受けられないことによって困るのは、本人ばかりではなく、その子供や家族であろう。また、いずれは全ての国民が対象になることも念頭に置いておくことだ。
制度の対象になっている高齢者のみならず、今後の日本の医療制度そのものを左右する重大問題である。
広く国民の中にこの制度の本質が明らかにされ、制度そのものの廃止の世論が高まることを望んでいる。