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●袴田冤罪事件 ――― 冤罪であるという《真実を明らかに》した時、被害者遺族は、捜査機関や検察にどう責任をとってもらうのだろうか?

2024年06月15日 00時00分39秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2024年06月03日[月])
捜査機関による証拠捏造》された袴田事件…冤罪であるという《真実を明らかに》した時、被害者遺族は、捜査機関や検察にどう責任をとってもらうのだろうか?
 袴田巌さんの再審裁判、検察は再び死刑を求刑した。なんという冷酷…。(大谷昭宏さん)《この期に及んでなお、「死刑を求刑する」と言い放つ検察官に、いまも背筋が凍りついている》。さらには、検察の所業は被害者やその遺族をも欺く酷い仕打ちだ。検察は《被害者遺族の「真実を明らかにしてほしい。尊い4人の命が奪われていることを忘れないで」とする意見陳述書も読み上げた》そうだが、冤罪であるという《真実を明らかに》した時、被害者遺族は、捜査機関や検察にどう責任をとってもらうのだろうか? 遺族の意見陳述では《袴田さんに言及することはなかった》そうだが、検察はその理由をどう考えるか。袴田巌さんや姉ひで子さん、親族の皆さんの人生を滅茶滅茶にした上に、検察や捜査機関は真犯人を取り逃がした訳だ。被害者遺族にどう説明するのか?

 《被害者孫の心情「真実明らかに」を胸に刻み込むべきは》誰か? それは、少なくとも、袴田巌さんやひで子さんではない。
 日刊スポーツのコラム【大谷昭宏のフラッシュアップ/袴田さん再審裁判 被害者孫の心情「真実明らかに」を胸に刻み込むべきは】(https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202405270000098.html)によると、《陳述で孫は被害家族のなかで、ただ1人生き残った自分の母が事件後どれほど苦労したか切々と訴え、袴田さんにふれることは一切なかった。そして最後に「事実を再度精査し、真実を明らかにしてくださいと強く訴えたのだった。この言葉を胸に刻み込むべきは、代読した検察官、そう、あなたたちではないのか。》

   『●袴田巌さんに無罪を…《死と隣り合わせの生活が心にもたらした影響
     …暗黒の日々の長さを思わざるをえない…夜は終わったわけではない》
   『●《読者はこうした報道を何日もシャワーのように浴びた。…裁判官
     たちも例外では》ない…袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》
   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
   『●袴田冤罪事件…タンパク質に糖分が触れると「メイラード反応」が
     進み、1年2カ月後には《常識的な範囲で『赤みは残らない』》はずだ
    「《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。すぐさま、袴田巌さんに
     無罪を! マスコミももっと後押しすべきなのではないか。裁判所も
     自分たちの先輩の誤りを受け入れるべき…『●《読者はこうした報道を
     何日もシャワーのように浴びた。…裁判官たちも例外では》ない…
     袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》』」

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過
     ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》
   『●《「証拠は再審請求の段階でも捜査側に偏在している」…検察は
     掌中の証拠をあまねくオープン》にするよう裁判所は訴訟指揮すべきだ
   『●48年も獄中に囚われていた袴田巌さん…《検察は再収監を諦めて
     いません》って、正気なのかね? すぐさま、袴田巌さんに無罪を!
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》
   『●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、
      姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》
   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たし
     て人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》
   『●《冤罪を起こしてはならない。再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井
       さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい》
   『●再審法の改正を…桐山桂一さん《冤罪ほど人生や人権を踏みにじる不正義
     はない。…袴田巌さんの再審が決まった…大崎事件は…冤罪が疑われる》
   『●冤罪で死刑執行、飯塚事件…『正義の行方』木寺一孝監督《が描いたのは、
      死刑執行後だからこそ、より鮮明に浮かび上がる「人が人を裁く重み」》
   『●ニッポンの《刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》
        …《法曹三者が「冤罪を学び、冤罪から学ぶ」こと》が重要だが…
   『●高杉晋吾氏「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」…いつまで《耐えがたいほど
     正義に反する日々は…続く》のか? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん
   『●袴田事件、《捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である
      可能性が極めて高いと思われる》というのに、またしても検察は死刑求刑

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https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202405270000098.html

コラム
大谷昭宏のフラッシュアップ
2024年5月27日8時0分
大谷昭宏袴田さん再審裁判 被害者孫の心情「真実明らかに」を胸に刻み込むべきは

事件から58年、この秋、無罪が確定するとみられる袴田巌さん(88)の静岡地裁再審裁判が22日、検察側論告求刑、姉ひで子さん(91)の意見陳述を最後に結審した。この期に及んでなお、「死刑を求刑する」と言い放つ検察官に、いまも背筋が凍りついている

メディアの姿勢にも問題はないか。論告は検察の求刑を義務づけているものではない。現に、いずれも再審無罪となった滋賀県東近江市の看護助手患者殺害事件熊本県松橋町男性刺殺事件の再審裁判で、検察は「量刑は裁判所の適切な判断を」として求刑はしなかった。だが、今回このことにふれたのは地元紙、静岡新聞だけだった。

袴田さんは、いま社会に出ているものの、長期の拘禁で心神喪失状態にあることに鑑み、検察は「刑の判断は裁判所に委ねたい」とすべきだったのではないか。

唯一の証拠となった5点の衣類について検察は、再審開始を決定した東京高裁の大善文男裁判長が「捜査機関によって捏(ねつ)された可能性が極めて高い」とした点については、これまで同様の主張をしてきた弁護側に対して「非現実的だ」と反論しただけで、高裁の指摘には、ふれようともしなかった

被告、弁護側には刃(やいば)を突きつけてきても、裁判所という権威とはことを構えたくない。検察の小狡さ(こずるさ)小賢しさ(こざかしさ)ばかりが目につく

検察側は結審で、被害者の孫にあたる男性の心情を代読陳述したいと主張。弁護側は、男性は事件当時、生まれてもいなかった。さらに無実の被告側に聞かせる言葉ではないとして反対したが、検察は強行した。

陳述で孫は被害家族のなかで、ただ1人生き残った自分の母が事件後どれほど苦労したか切々と訴え、袴田さんにふれることは一切なかった。そして最後に「事実を再度精査し、真実を明らかにしてくださいと強く訴えたのだった。

この言葉を胸に刻み込むべきは、代読した検察官、そう、あなたたちではないのか


大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
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●袴田事件、《捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》というのに、またしても検察は死刑求刑

2024年05月27日 00時00分01秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2024年05月23日[木])
袴田事件、《捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》というのに、検察は死刑を求刑》しました。ヒトデナシの所業です。第三者には《みそタンクに隠すのは不可能》ですが、唯一、《捜査機関の者》はそれが可能だったのではないですか。《捜査機関の者》には《「実行不可能で非現実的な空論だ」》となぜ言えるのですか?
 とにかく、91歳の袴田ひで子さんが気の毒でならない。また、検察の所業は被害者やその遺族をも欺く酷い仕打ちだ。検察は《被害者遺族の「真実を明らかにしてほしい。尊い4人の命が奪われていることを忘れないで」とする意見陳述書も読み上げた》そうだが、冤罪であるという《真実を明らかに》した時、遺族は、捜査機関や検察にどう責任をとってもらうのだろうか? 遺族の意見陳述では《袴田さんに言及することはなかった》そうだが、検察はその理由をどう考えるか。袴田巌さんや姉ひで子さん、親族の皆さんの人生を滅茶滅茶にした上に、検察や捜査機関は真犯人を取り逃がした訳だ。
 《白山聖浩弁護士は「間違えましたということができない検察の姿勢は、事件発生時から何も変わっていない」と批判した》。《被害者が「冤罪の共通点」を語った…袴田事件と大川原化工機事件 半世紀以上変わらぬ長期拘束、自白強要、イジメ》。大川原化工機冤罪事件同様、間違いを認めない、謝ることの出来ない検察。そして裁判官の責任。

 共同通信の速報【再審でも死刑求刑、結審へ 捏造「理由ない」、袴田さん公判】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/328643)によると、《検察側は論告で、袴田さんが金品を得るために犯行に及んだと指摘。最大の争点となっている「5点の衣類は袴田さんのものだとし犯行着衣と認められる」と述べ、死刑を求刑した》。

   『●袴田巌さんに無罪を…《死と隣り合わせの生活が心にもたらした影響
     …暗黒の日々の長さを思わざるをえない…夜は終わったわけではない》
   『●《読者はこうした報道を何日もシャワーのように浴びた。…裁判官
     たちも例外では》ない…袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》
   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。
      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》
   『●袴田冤罪事件…タンパク質に糖分が触れると「メイラード反応」が
     進み、1年2カ月後には《常識的な範囲で『赤みは残らない』》はずだ
    「《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。すぐさま、袴田巌さんに
     無罪を! マスコミももっと後押しすべきなのではないか。裁判所も
     自分たちの先輩の誤りを受け入れるべき…『●《読者はこうした報道を
     何日もシャワーのように浴びた。…裁判官たちも例外では》ない…
     袴田事件の《冤罪に加担したメディアの責任》』」

   『●布川冤罪事件…《合計二〇人の裁判官が揃いも揃って、冤罪を見過
     ごし、検察の嘘を素通りさせた。彼らこそ裁かれるべきかもしれない》
   『●《「証拠は再審請求の段階でも捜査側に偏在している」…検察は
     掌中の証拠をあまねくオープン》にするよう裁判所は訴訟指揮すべきだ
   『●48年も獄中に囚われていた袴田巌さん…《検察は再収監を諦めて
     いません》って、正気なのかね? すぐさま、袴田巌さんに無罪を!
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》
   『●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、
      姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》
   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たし
     て人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》
   『●《冤罪を起こしてはならない。再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井
       さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい》
   『●再審法の改正を…桐山桂一さん《冤罪ほど人生や人権を踏みにじる不正義
     はない。…袴田巌さんの再審が決まった…大崎事件は…冤罪が疑われる》
   『●冤罪で死刑執行、飯塚事件…『正義の行方』木寺一孝監督《が描いたのは、
      死刑執行後だからこそ、より鮮明に浮かび上がる「人が人を裁く重み」》
   『●ニッポンの《刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》
        …《法曹三者が「冤罪を学び、冤罪から学ぶ」こと》が重要だが…
   『●高杉晋吾氏「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」…いつまで《耐えがたいほど
     正義に反する日々は…続く》のか? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん

 東京新聞の記事【袴田巌さんの姉が白いジャケット姿を選んだ理由 死刑求刑にも表情変えず「検察側の都合でやっていること」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/328784)によると、《「死刑を求刑します」。被告のいない法廷に検察官の声が響いた。22日、強盗殺人事件で死刑が確定している袴田巌さん(88)の再審公判が結審した。検察側が求めたのは56年前と同じ刑。袴田さんの姉ひで子さん(91)は改めて、心神喪失で不在の弟は無実と訴えた。事件発生から58年余となる9月、判決が言い渡される》。

 それにしても、《元検事の高井康行弁護士》…酷いね。「検察側は、捏造は不可能なことを詳細に立証した」って、正気で言っているのかね? 赤みが残る可能性も立証」されただって??
 東京新聞の記事【袴田巌さんに検察が再び死刑を求刑 再審公判、9月に判決 「5点の衣類」証拠捏造めぐり主張は対立したまま】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/328785)によると、《だが、展開した主張や示した証拠は、半世紀以上前の一審時とほぼ同じ血痕の赤みについても「残る可能性があると従来の主張の域を出なかった》。また、《◆「有罪の立証になっていない」 関東学院大の宮本弘典教授(刑事法)…》、一方、《◆「検察側は、捏造は不可能なことを詳細に立証した」 元検事の高井康行弁護士…赤みが残る可能性も立証しているので、確定判決までの証拠によって(袴田さんの)犯人性は裏付けられる》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/328643

再審でも死刑求刑、結審へ 捏造「理由ない」、袴田さん公判
2024年5月22日 14時39分 (共同通信)

     (自宅前で取材に応じる袴田巌さんの姉ひで子さん
      =22日午前、浜松市)

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)のみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第15回公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。検察側は論告で、袴田さんが「金品を得るために犯行に及んだ」と指摘。最大の争点となっている「5点の衣類は袴田さんのものだとし犯行着衣と認められる」と述べ、死刑を求刑した。

 一連の証拠を捏造とする指摘に対しては「合理的理由がないと否定した。袴田さんの服と酷似した衣類を用意し、従業員に知られないようにみそ工場に侵入してみそタンクに隠すのは不可能だとして、捜査機関の捏造だとする指摘は「実行不可能で非現実的な空論だ」と強調した。

 被害者遺族の「真実を明らかにしてほしい。尊い4人の命が奪われていることを忘れないで」とする意見陳述書も読み上げた。

 同日午後、弁護側の最終弁論や、姉ひで子さん(91)の最終意見陳述を経て結審する見通し。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/328784

袴田巌さんの姉が白いジャケット姿を選んだ理由 死刑求刑にも表情変えず「検察側の都合でやっていること」
2024年5月23日 06時00分

 「死刑を求刑します」。被告のいない法廷に検察官の声が響いた。22日、強盗殺人事件で死刑が確定している袴田巌さん(88)の再審公判が結審した。検察側が求めたのは56年前と同じ刑。袴田さんの姉ひで子さん(91)は改めて、心神喪失で不在の弟は無実と訴えた。事件発生から58年余となる9月、判決が言い渡される。

 旧清水市一家4人強盗殺人事件と袴田さんの再審 1966年6月30日、旧清水市のみそ製造会社専務宅から出火、焼け跡から4人の他殺体が見つかった。従業員だった袴田さんが強盗殺人罪などで起訴され、無罪を主張したが80年に最高裁で死刑が確定した。第2次再審請求審で2014年に静岡地裁が再審開始を認め、死刑執行と拘置が停止に。袴田さんは約48年ぶりに釈放された。検察の異議申し立て(即時抗告)で審理は続き、昨年3月、東京高裁は「5点の衣類」が捜査機関に捏造(ねつぞう)された可能性を指摘した上で、再審開始を決定。検察側の特別抗告断念で確定し、同10月27日に再審の初公判が開かれた。

     (自宅でくつろぐ袴田巌さん=浜松市内で
      (袴田さん支援クラブ提供の動画から))


◆再審7カ月 ようやく結審

 「強固な殺意」「生命軽視の態度は顕著」—。

 静岡地裁の202号法廷。男性検察官は論告で、袴田さんの罪状などについて淡々と口にしていった。読み上げは数時間。「特段くむべき事情も認められない」と極刑が相当とした。

 求刑時、ひで子さんは正面を見つめたまま、表情も変えなかった。この日は白色のジャケット姿。「白(無実)ということを強調するように」との考えからだ。再度の死刑求刑については「検察側の都合でやっていることだから、当たり前だと思う」と受け止めた。

 袴田さんが待ち望んだ再審の開始が確定したのは昨年3月。同10月に始まり、7カ月をへて結審した。ひで子さんは記者会見で「ようやく終わった。判決が出たら、巌に裁判のことを伝えようと思っております」。「もうこれで勝ったようなものだと思っている」と晴れやかな表情で語った。


◆弁護団「検察官は汚点残した」

 ひで子さんの会見には、弁護団も同席。検察側の死刑求刑への怒りを示し、角替清美弁護士は「検察官は今日、汚点を残した」。白山聖浩弁護士は「間違えましたということができない検察の姿勢は、事件発生時から何も変わっていない」と批判した。

 検察側が証拠捏造(ねつぞう)を否定したことにも不満を示し、小川秀世弁護士は「5点の衣類が(犯行時の着衣との)根拠は何もない」と批判。「裁判所に捏造をはっきりと認定してもらいたい。弁護側はそれだけの立証はできた」と自信をのぞかせた。

 一方、公判後に会見した静岡地検の小長光健史次席検事は死刑求刑について「極めて悪質な事案であることを踏まえた」と理由を述べ、「被告人が有罪であることは立証されている」と説明。証拠捏造の疑いの指摘には「現実的に行い得ない」と反論した。

 取材に応じた検察幹部は「法と証拠に基づき、証拠を十分に検討し、慎重に見極めて事案に見合う量刑として求刑した。メンツのために死刑求刑したということはこれっぽっちもない」と強調した。(東田茉莉瑛、長谷川竜也)

     (袴田巌さんの再審公判で、静岡地裁に入る姉ひで子さん(左)
      と弁護団事務局長の小川秀世弁護士)


 


◆みそ製造会社専務の孫「真実を明らかにして」と意見陳述

 再審公判では、事件で殺害されたみそ製造会社専務の孫が書面で意見陳述した。書面は検察官が自席で代読。冒頭で「尊い4人の命が奪われたことを忘れないで」と訴え、「事実を精査し、真実を明らかにして」と願いを伝えた。袴田さんに言及することはなかった

 孫は、自身の母である専務の長女が、事件で家族を失ったことで「計り知れないほどの悲しみと恐怖を感じ、重度のうつ病にかかった」と述べた。2014年に静岡地裁が再審開始を決定する直前に亡くなったという。

 読み上げられた書面では、事件で生き残ったことなどを理由に長女がネット上で犯人視されてきたことや、「自殺した」とうわさされたことを明かし、「根拠のない話」と強調。再審公判で、事件の真相が解明されることを望んだ。(佐々木勇輝)


 


◆「お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね」

  再審公判も終盤に近づいた午後5時過ぎ。袴田巌さんの姉ひで子さんは最終意見陳述で証言台に立った。国井恒志裁判長と正対し、片手にはA4判の用紙。「今朝方、母さんの夢を見ました、元気でした、夢のように元気でおられたらうれしいですが、お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね」と読み上げた。

 袴田さんが獄中から母にあてた手紙だった。無実を信じた母は一審の公判に通い続け、1968年の死刑判決の2カ月後に亡くなった。ひで子さんは、袴田さんが体験した苦悩や無念を代弁するように読み上げ、用紙を持つ手は震えた。

 手紙部分を伝え終えると、時折、裁判長に視線を向けながら「(袴田さんは)釈放されて10年たちますが、いまだ拘禁症の後遺症、妄想の世界にいる心は癒えておりません」と言葉をつないだ。(足達優人)


【関連記事】袴田巌さんに検察が再び死刑を求刑 再審公判、9月に判決 「5点の衣類」証拠捏造めぐり主張は対立したまま
【関連記事】獄中の袴田巌さんが手紙につづった「無実」 高杉晋吾さんと往復書簡 「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」
【関連記事】袴田さんに検察は求刑どうする 検察組織は変わったのか…OBは語った 
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/328785

袴田巌さんに検察が再び死刑を求刑 再審公判、9月に判決 「5点の衣類」証拠捏造めぐり主張は対立したまま
2024年5月23日 06時00分

 1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きた一家4人強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判をやり直す再審公判が22日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で結審した。検察側は、事件現場近くで見つかった「5点の衣類」は袴田さんの犯行時の着衣と認められるなどとして死刑を求刑。弁護側は、捜査機関が証拠を捏造(ねつぞう)したと主張し、無罪を訴えた。判決は9月26日。


◆検察側 捏造は「非現実的で実行不可能な空論」

 長期間拘束された影響による拘禁症状が残る袴田さんに代わって出廷した姉ひで子さん(91)は最終意見陳述で、「巌を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます」と訴えた。

     (支援者とドライブへ出かける袴田巌さん
      =22日午後2時59分、浜松市内で)

 刑事訴訟法は再審公判について、「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が認められた場合に開かれると規定。袴田さんも無罪の公算が大きい。

 検察側は論告で、金品を得るための袴田さんの犯行と指摘。最大の争点となった5点の衣類に付着した血痕を巡っては「赤みは残りうる」と弁護側に反論した。証拠を捏造した、との指摘には「非現実的で実行不可能な空論」と否定した。その上で「強固な殺意に基づく極めて冷酷で残忍な犯行」と述べた。検察側は論告に先立ち、「事実を精査し、真実を明らかにしてほしい」との被害者遺族の意見陳述書を読み上げた。

 弁護側は最終弁論で、東京高裁による再審開始決定などを引き合いに「検察側の証拠はすでに否定されているか、ほとんど価値がないものだ」と主張。5点の衣類について「袴田さんを犯人に仕立てあげるために捜査機関が捏造した証拠」と改めて訴えた。

 5点の衣類は事件発生から1年2カ月後、袴田さんの勤務先のみそタンク内で見つかった。確定判決は袴田さんの犯行時の着衣と認定。再審請求審では、長期間みそ漬けにされた血痕に赤みが残っていたことは不自然かが争われ、東京高裁は昨年3月、弁護側の主張を認めて赤みは残らないと判断。捜査機関による証拠捏造の可能性を指摘し、再審開始を認めた。再審公判は昨年10月に始まり、この日は15回目。

 戦後、被告の死刑確定後に再審公判が開かれた4事件では、いずれも検察側が死刑を求刑したが、無罪となっている。(足達優人、佐々木勇輝)


◆検察がこだわった「証拠捏造」への反論

 記者解説 7カ月の審理の末、検察側は56年前と同じ死刑を求刑した。再審公判で袴田さんの有罪立証に改めて取り組んだが、過去の主張の繰り返しが目立った。その一方で、証拠捏造(ねつぞう)の疑いを払拭することには強いこだわりを見せた。

     (袴田巌さんの再審公判で、支援者らに手を振って
      静岡地裁に入る姉ひで子さん(前列左)と弁護団
      事務局長の小川秀世弁護士(同右))

 再審公判は、過去の判決や決定に拘束されない。再審請求審では検察側、弁護側双方の争点は5点の衣類に付いた血痕の赤みに絞られたが、検察側は再審公判で「一から立証し、裁判官に総合判断を求める」と表明していた。

 だが、展開した主張や示した証拠は、半世紀以上前の一審時とほぼ同じ。血痕の赤みについても「残る可能性がある」と従来の主張の域を出なかった

 5点の衣類を捜査機関が捏造した疑いに対しては、当時の状況や発覚のリスクなどから「非現実的で、不可能」と多くの時間を費やして否定した。この日の論告でも、「捏造の主張に合理的な根拠はない」などと否定の言葉を繰り返した。

 弁護側は5点の衣類だけでなく、他の一部の証拠も捏造されたと主張。捏造を認定した上での無罪判決を求めている。再審開始を判断した静岡地裁、東京高裁に続いて三たび裁判所が捏造の疑いを指摘すれば、捜査当局への打撃は計り知れないだろう。(山本真嗣)


◆「有罪の立証になっていない」

 関東学院大の宮本弘典教授(刑事法)の話 1年以上みそ漬けされた「5点の衣類」の血痕には赤みが残らないと判断した再審開始決定で、確定判決の証拠構造に疑いが出た。再審では検察側に「赤みが残る」ことを証明する必要があった。どのような状況であれば赤みが残り、実際にその状況で5点の衣類がみそタンクに漬かっていた事実を証明しなければならなかった。検察側は「赤みが残りうる」という可能性の指摘にとどまった。有罪の立証になっていない


◆「検察側は、捏造は不可能なことを詳細に立証した」

 元検事の高井康行弁護士の話 当時のみそタンク内の状況を再現できない限り、「5点の衣類」の血痕に赤みが100%残らないとは言えない。再審のポイントは、捜査機関が5点の衣類を捏造(ねつぞう)したかどうか。検察側は、捏造は不可能なことを詳細に立証した。赤みが残る可能性も立証しているので、確定判決までの証拠によって(袴田さんの)犯人性は裏付けられる。


【関連記事】袴田巌さんの姉が白いジャケット姿を選んだ理由 死刑求刑にも表情変えず「検察側の都合でやっていること」
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●高杉晋吾氏「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」…いつまで《耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》のか? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん

2024年05月22日 00時00分11秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2024年05月19日[日])
一体いつまで耐えがたいほど正義に反する日々は…続くのか? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん。そして、いまも奔走する姉・袴田秀子さん。(こちら特報部)《対する検察や警察は、担当者が交代して争い続ける後任に引き継げば、歳月の痛みは感じないのか組織も人間らしく対応すべきだ》。
 (筆洗: 2018年6月12日)《狼は本音を明かす。「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」▼袴田さんの無実を信じる人にとってはどうあっても狼に許されぬイソップ寓話(ぐうわ)の羊を思い出すかもしれない…検察と裁判所を納得させる羊の反論の旅はなおも続くのか事件から五十二年長すぎる旅である》。

   『●鎌田慧さんインタビュー: 「一人の人間として勇気をふるった名判決」
   『●袴田事件…検察=《狼は本音を明かす。

      「おまえがどんな言い訳をしても食べないわけにはいかないのだ」》

 (こちら特報部)《第三者で最初に冤罪を訴えたのが、今は病床にあるルポライター高杉晋吾氏(91)だ》…《高杉晋吾氏写真【ToPICs静岡・東京 袴田さん再審決定に検察が即時抗告 自由と命を奪うな!】、「犯人でっち上げ 権力の自由自在…「犯人づくり」に加担するマスコミの連係プレー」。画期的判決(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/5d4efa73778f16f9497f3dfa6ecb2ed8)》。
 東京新聞の記事【こちら特報部/獄中の袴田巌さんが手紙につづった「無実」 高杉晋吾さんと往復書簡 「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/327973)によると、《1966年の静岡一家4人強盗殺人事件の犯人とされ、長く死刑囚の身に置かれてきた袴田巌さん(88)。第三者で最初に冤罪(えんざい)を訴えたのが、今は病床にあるルポライター高杉晋吾氏(91)だ。未公開の往復書簡に目を通すと、強要・誘導された疑いが濃い供述調書捜査機関の証拠偽造の可能性に着目し、無実の証明に奔走する様子がうかがえる。22日の再審公判結審を前に2人のやりとりを振り返る。(西田直晃)》。

   『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、再審開始決定…せめて
    《一刻も早く「無罪」とすべく、検察は不服を唱えるべきではない》
   『●袴田巖さん、袴田秀子さん ――― 《捜査機関による証拠捏造》とまで
     言われているのだ、検察側が特別抗告を断念するのも、当然の結果だろう
   『●袴田冤罪事件: 《「…第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査
      機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで…》
   『●<コラム 筆洗>《高裁は捜査機関による証拠捏造の可能性まで踏み
     込んでいる…袴田さんをただ犯人にしたいという卑劣なトリックだろう》
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃ
     にした《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》
   『●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、
      姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》
   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たし
     て人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》
   『●《冤罪を起こしてはならない。再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井
       さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい》
   『●再審法の改正を…桐山桂一さん《冤罪ほど人生や人権を踏みにじる不正義
     はない。…袴田巌さんの再審が決まった…大崎事件は…冤罪が疑われる》
   『●冤罪で死刑執行、飯塚事件…『正義の行方』木寺一孝監督《が描いたのは、
      死刑執行後だからこそ、より鮮明に浮かび上がる「人が人を裁く重み」》
   『●ニッポンの《刑事司法はおそろしいほどに後進的…代用監獄…人質司法》
        …《法曹三者が「冤罪を学び、冤罪から学ぶ」こと》が重要だが…

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/327973

こちら特報部
獄中の袴田巌さんが手紙につづった「無実」 高杉晋吾さんと往復書簡 「彼はなぁ、本当に正しいんだよ」
2024年5月19日 12時00分

 1966年の静岡一家4人強盗殺人事件の犯人とされ、長く死刑囚の身に置かれてきた袴田巌さん(88)。第三者で最初に冤罪(えんざい)を訴えたのが、今は病床にあるルポライター高杉晋吾氏(91)だ。未公開の往復書簡に目を通すと、強要・誘導された疑いが濃い供述調書捜査機関の証拠偽造の可能性に着目し、無実の証明に奔走する様子がうかがえる。22日の再審公判結審を前に2人のやりとりを振り返る。(西田直晃

 たかすぎ・しんご 本名は石川晋吾。1933年、秋田市生まれ。戦時中は満州(現・中国東北部)の鞍山市で過ごし、米軍の爆撃で母と姉を亡くす。早稲田大卒業後、「社会新報」記者を経てフリーに。冤罪のほか部落問題や産業廃棄物、精神医療などをテーマに取材。1981年の著書「地獄のゴングが鳴った 無実のプロボクサー袴田巌」は、2014年に「袴田事件・冤罪の構造 死刑囚に再審無罪へのゴングが鳴った」として復刊された。


◆最初の手紙に「近いうちに面会に行きます」

     (ルポライター高杉晋吾氏)

 〈多くの無実を叫ぶ人々の場合、有罪の判決が出たところで、その有罪の根拠となった証拠そのものが、自白、物証、証言等々、あらゆる偽造が無人の野を行くがごとく、まかり通っている(中略)近いうちに面会に行きます〉

 1979年8月1日。一、二審で死刑判決を受けて上告し、東京拘置所にいた袴田さんに、高杉氏が初めて送った手紙だ。この直後、雑誌「現代の眼」(廃刊)9月号に「袴田事件 元ボクサーの落ちた陥穽(かんせい)」と題した記事が掲載された。

 この記事ですでに、高杉氏はいくつかの不審点に触れている。犯行着衣が起訴時のパジャマから、袴田さんの勤務先のみそタンク内で事件の1年2カ月後に見つかった5点の衣類」に変更されたこと。控訴審での装着実験の際、そのズボンを袴田さんがはけなかったこと。捜査段階の45通の自白調書のうち、1通の検察官調書を除く44通が証拠から排除されたこと…。最高裁で死刑が確定する1年4カ月前のことだ。


◆「権力の魔手に徹頭徹尾かけられ…」

 袴田さんはこう返信し、両者の交流が始まった。

 〈権力の魔手に徹頭徹尾かけられた、いわゆるイケニエにある弱い衆人達の筆舌に尽(つく)せない心底からの憤怒の念を、やがて一掃してくれる〉(同年8月4日)

 〈先(ま)づ、第一にやらなければならないことは、いっさいの虚偽を虚偽として確認することだと思います〉(同年8月20日)

     (日課のドライブに出発する袴田巌さん=4月、浜松市内で)

 袴田さんの再審弁護団が訴える「捏造(ねつぞう)」という文言こそ見当たらないが、証拠のでっち上げが存在したという認識で両者は一致していた。その後の手紙のやりとりは主に、高杉氏の質問に袴田さんが回答する形で進む。証拠採用された66年9月9日付の検察官調書については、こうだ。

 〈本件調書内容のような型で押し付けられたら万事休すの筈(はず)です(中略)検察官は前以(も)って、九月九日付調書の如(ごと)く、その内容のストーリーを自らの大学ノートに書き込んでいたと思われます。その理由は九月九日の取調べの際、大学ノートを書記官に手渡し、何んのことはない丸ごと写させたのです。それ故に、文字通り、矛盾の大集成たる調書が存在する〉(79年9月1日、検察官は実名表記)


◆消火に加わった様子を説明

 往復書簡は現在、高杉氏と親交が深い「袴田巌さんの再審を求める会」の十川正さん(71)=東京都小平市=が中身を精査している。「回答を足掛かりに無実を証明するため、さまざまな質問を袴田さんにぶつけていた。再審支援の井戸を掘った人。他の取材でも同じだが、弱い立場にある袴田さんの目線で動いてきた」と回想。「死刑確定直前の手紙には特に、切迫感に満ち、鬼気迫る袴田さんの思いが伝わってくる」と話している。

     (東京拘置所の袴田さんが初めて高杉氏に宛てた手紙)

 袴田さんは高杉氏への手紙に、「アリバイがない」とされた事件当日の6月30日の行動も記載。出火した被害者宅の消火に加わった様子などを説明していた。

 〈サイレンと、火事だ、近いぞというような声で起こされました。同僚2人が慌てて寮の階段を降りていったようでした。私も跳ね起きて彼等(かれら)に続きました〉

 〈裏口に駆けより扉を探しました。(中略)断片的には、同僚が私に消火品、消火品といっていたこと。ホオスを誰かと共に出し、それに三、四人たかって引張(ひっぱ)り伸したこと。線路の下の石を取り、ホオスをそこに通したこと〉

 〈(土蔵の物干し場に立った)男は土蔵を指差し、この中に人が居るといいました。そして、よしバールを持ってくるといって降りていきました。その男は赤シャツを着ていた〉(いずれも79年12月25日、同僚は実名表記)

     (高杉氏が月刊誌「現代の眼」1979年9月号に掲載した記事)

 捜査官の調書にはこれらの内容は記されず、確定判決では「鎮火に近いころ、被告人が火災現場に姿を見せるまでの間、被告人の姿を何処(どこ)かで見たという者も認められない」と袴田さんの訴えは退けられた。十川さんは「手紙には当日の状況が詳細に描写され、現場にいた人の服装や行動も詳しく書かれている。十分、反証になり得る内容だ」と強調する。


◆袴田さんの行動を細かく質問

 高杉氏はさらに、その後の4日間の行動も細かく尋ねていた。

 〈できれば午前・午後。さらに詳しくは、午前何時ごろは誰々とこう云(い)うしごとを、どう云う場所でやったのかを困難ですが想い出して下さい(中略)これが確定して行けば、(5点の衣類を)味噌(みそ)タンクに仕込む時間が成立しなくなる〉(79年12月12日)

 静岡県警が最初に袴田さんを任意聴取したのは、7月4日。この日の早朝、寮の袴田さんの部屋を家宅捜索し、新聞各紙はこぞって有力容疑者と報じた。以降逮捕される8月18日まで、常に警察やマスコミの監視下に置かれていた

     (ルポライター高杉晋吾氏)

 5点の衣類がタンクに入れられた時期について、二審の東京高裁は事件直後と認定。袴田さんの犯行着衣とすれば、本人が怪しまれずにタンクに隠せるのは7月4日までしかあり得ないと、高杉氏は検証を試みた。袴田さんは同僚の氏名や具体的な時刻を交えながら、どのような仕事をしたか、約70キロ離れた実家にいつ帰省したかなどを返答。高杉氏は「常識で考えて隠せるわけがない」との思いを強くした。

 その後の支援者の検証実験が奏功し、5点の衣類は有罪証拠でなく、無罪証拠に変化しつつある。静岡地裁は2014年、衣類を犯行着衣でも袴田さんのものでもないと指摘し、48年ぶりに釈放。あらためて再審開始を決定した東京高裁は昨年3月、袴田さんが衣類をタンクに入れることは事実上不可能と認定第三者がタンクに隠した疑いに触れ捜査機関の可能性が高いと言及した


◆1989年ごろまで文通と面会は続く

 袴田さんの死刑確定後、高杉氏は「無実の死刑囚・元プロボクサー袴田巌を救う会」を立ち上げ、袴田さんの拘禁症状が悪化する1989年ごろまで文通と面会を続けていた。高杉氏のもとに届いた手紙は280通を超える。90年代以降は直接の支援から離れた。

 数年前に脳梗塞を患い、会話が不自由になっている。今月中旬「こちら特報部」の取材に応じ、「(袴田さんへの思いは)これまでに書いてきた通りだ」と短く語った。再審開始決定が一時取り消された6年前を思い出した様子で、「再審無罪の結果がひっくり返ってしまわないか、心配だ」と話し、涙ぐんで、こう繰り返した。

 「彼はなぁ、本当に正しいんだよ


◆デスクメモ

 袴田さん捜査の矛盾とボクサーの日々を描いた高杉さんは今91歳、袴田さんは88歳ひで子さんは91歳だ。1月に死去した西嶋勝彦弁護士は82歳。対する検察や警察は、担当者が交代して争い続ける後任に引き継げば、歳月の痛みは感じないのか組織も人間らしく対応すべきだ。(本)


【関連記事】被害者が「冤罪の共通点」を語った…袴田事件と大川原化工機事件 半世紀以上変わらぬ長期拘束、自白強要、イジメ
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●再審法の改正を…桐山桂一さん《冤罪ほど人生や人権を踏みにじる不正義はない。…袴田巌さんの再審が決まった…大崎事件は…冤罪が疑われる》

2023年12月28日 00時00分37秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(20231108[])
〝叫べなくなる〟のを待つ冷酷な司法…原口アヤ子さん、一貫して「あたいはやっちょらん」。
 大崎事件、(第4次再審請求の即時抗告審)再審開始認めず。福岡高裁宮崎支部・矢数昌雄裁判長殿、一体どうなってんのかね、裁判所は? ――― 原口アヤ子さん、一貫して「あたいはやっちょらん」。《「無辜(むこ)の人の救済を目的とする再審の理念》はどこに? (西日本新聞)《医学の専門家でない裁判所が十分な根拠も示さず、専門家による科学的証拠を退けた不当な判断と言える》。
 原口アヤ子さんの懸命の叫びは裁判官には届かない…。(2022年07月)《これまでに地裁、高裁で3度再審開始が認められたが、いずれも検察側の不服申し立てを受け、2019年には最高裁が、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部の開始決定を取り消していた》、かつて、最「低」裁ちゃぶ台返ししている。一体どこまでボンクラ裁判官なのか?

   『●《周防正行さんが「あたいはやっちょらん。大崎事件第4次再審請求
     ・糾せ日本の司法」と銘打ち、インターネット上に立ち上げた…CF》
   『●憲法《37条1項が保障する『公平な裁判所による裁判を受ける権利』が
       侵害され》ている…飯塚事件、大崎事件の裁判に「公正らしさ」は?
   『●原口アヤ子さん・大崎冤罪事件…《被害者は自転車事故による出血性
     ショックで死亡した可能性があり「殺人なき死体遺棄事件」だった》?
   『●大崎事件、再審開始を認めず ――― 終始一貫して「あたいはやっちょ
     らん」、原口アヤ子さんの懸命の叫びはなぜ裁判官には届かないのか?
   『●大崎事件冤罪・原口アヤ子さん「あたいはやっちょらん」「やっちょ
     らんもんはやっちょらん」「ちゃんと認めてもらうまでは死ねない」
   『●大崎事件《無辜の人の救済》の理念はどこに? 《医学の専門家でない裁判
      所が十分な根拠も示さず、専門家による科学的証拠を退けた不当な判断》

 東京新聞のコラム【<視点>大崎事件の新鑑定 殺人でなく事故死では 論説委員・桐山桂一】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/287218?rct=shiten)。《1979年に鹿児島県大崎町の牛小屋で遺体が見つかった大崎事件は、そんな状況から起きた。親族の原口アヤ子さんらが絞殺したとして、殺人罪などで有罪確定。既に服役を終えてもいる。だが、客観証拠がほとんど存在しないのだ。実際に過去3回も裁判所で再審開始が決定されたが、その都度、検察の抗告により上級審で退けられた》。

 再審法改正が必要。袴田事件…事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ。(西日本新聞)《日本弁護士連合会は…再審法(刑事訴訟法の再審規定)の整備を求める集会を国会内で開いた。法曹関係者に加え、与野党の議員が約60人(代理も含む)出席。証拠開示の制度化や、再審請求審での検察の不服申し立て(抗告)禁止を法制化する必要があるとの認識で一致した。再審を規定する刑事訴訟法の条文はわずか…》。
 東京新聞のコラム【<考える広場>冤罪はなぜ生まれるか? 桐山桂一・論説委員が聞く】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/271962)/《冤罪(えんざい)ほど人生や人権を踏みにじる不正義はない。静岡県の四人殺害事件で犯人とされた袴田巌さんの再審が決まった。鹿児島県の大崎事件は再審請求が高裁で退けられたが、冤罪が疑われる。再審法改正を求める日弁連の中心として、全国を走り回る鴨志田祐美弁護士に「なぜ冤罪は生まれるのか?」を聞いた》。

 何度でも、飯塚事件…既に死刑執行してしまった。山口正紀さんの記事《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。…オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。…布川事件冤罪被害者桜井昌司さん…「こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない。再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です」》。

   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たし
     て人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》

 鴨志田祐美さん《日本の刑事司法のガラパゴス化は、法務省が考えているよりも深刻です》。小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たして人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は、まだまだ続く》(大谷昭宏さん)。
 袴田冤罪事件、日本の司法は中世なみ》《日本の前時代的な刑事司法制度の例ではないか。《残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている》、《日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている法務・検察はそのことも自覚すべきである》(東京新聞社説)。何十年にも渡って無実の袴田巌さんを牢屋につなぎ、しかも証拠が捏造されていたとまで裁判所が指摘。再審裁判で、「有罪」を主張するのはいったいどういう神経か? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、一体どこまで人権侵害すれば気が済むのか。(東京新聞社説)《無実の訴えから半世紀日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/287218?rct=shiten

<視点>大崎事件の新鑑定 殺人でなく事故死では 論説委員・桐山桂一
2023年11月1日 06時00分

 被害者の男性は朝から酒に酔っていた。午後5時半ごろには雑貨店で焼酎を買った後に自転車ごと深さ1メートルの側溝に転落してしまった。

 誰かに引き上げられ、道路脇に横たわったままの状態で放置された。夜になって近隣の男性2人が小型トラックの荷台に被害者を乗せ、自宅まで運んだ。それが午後9時ごろのことだ。

 1979年に鹿児島県大崎町の牛小屋で遺体が見つかった大崎事件は、そんな状況から起きた。

 親族の原口アヤ子さんらが絞殺したとして、殺人罪などで有罪確定。既に服役を終えてもいる。だが、客観証拠がほとんど存在しないのだ。

 実際に過去3回も裁判所で再審開始が決定されたが、その都度、検察の抗告により上級審で退けられた

 第4次の再審請求は高裁に棄却されてしまい、弁護側は現在、最高裁に特別抗告を申し立てている。新鑑定により、殺されたのではなく「事故死だったとの主張だ。「自宅に運ばれた時点で既に被害者は呼吸停止か心停止だった」ことを示す。

 埼玉医科大学総合医療センター長の澤野誠教授による医学鑑定である。重症外傷患者の診療を専門とする日本随一の外傷センターで、頸椎頸髄の損傷症例数は国内でトップだ。澤野氏は救護活動についての専門家でもある。

 「遺体には三つの明らかな出血があった」と澤野氏は指摘する。「溝への転落による限度を超えた頸部の後屈と右捻り。飲酒と低体温による脱水と腸管動脈の収縮からの広範囲な小腸壊死を出血が示します」

 溝への転落で頸髄損傷による運動麻痺や頸椎を支える靱帯の損傷をきたしたことも分かるという。さらに近隣の2人がトラックに乗せた際、頸椎保護をしない手荒な救護だったため、頸髄損傷が悪化し、呼吸停止した可能性が高いともいう。

 だが、搬送した2人は「被害者は歩いて自宅に入った」と供述した。確定判決のよりどころだが、新鑑定とは合致しない。かつ2人の供述を立命館大学の稲葉光行教授が分析したところ、「2人で被害者を抱えて玄関に入った」「千鳥足で被害者1人で玄関に入った」と食い違う

 さらに「被害者を自宅土間に置いた」という点は「覚えていない」とか、沈黙や言いよどみが高い頻度で起きているという。稲葉教授は「搬送した2人が実際に体験したことを述べたものではないと考えるのが妥当」と結論づけている。

 これら医学鑑定と供述分析を合わせると、確定判決が殺人事件と決め付けたことに疑問が湧くであろう。つまり被害者は自宅に運ばれた時点で既に死亡しており、殺人事件にはなり得ない―そう指し示していよう。原口さんは一貫してやっちょらん」。最高裁は新証拠に真摯に向き合ってほしい。


【関連記事】<考える広場>冤罪はなぜ生まれるか? 桐山桂一・論説委員が聞く
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/271962

<考える広場>冤罪はなぜ生まれるか? 桐山桂一・論説委員が聞く
2023年8月23日 08時00分

     (コラージュ・小河奈緒子)

 冤罪(えんざい)ほど人生や人権を踏みにじる不正義はない。静岡県の四人殺害事件で犯人とされた袴田巌さんの再審が決まった。鹿児島県の大崎事件は再審請求が高裁で退けられたが、冤罪が疑われる。再審法改正を求める日弁連の中心として、全国を走り回る鴨志田祐美弁護士に「なぜ冤罪は生まれるのか?」を聞いた。


再審法> 刑事訴訟法の再審規定。500以上も条文のある同法のうち、再審の条文は19のみで、規定が不備なまま、70年以上も放置されている。再審請求審は裁判所の裁量に委ねられ、証拠開示の基準や手続きは不明確なうえ、再審開始が決定されても検察官の不服申し立てなどによって、冤罪被害者の早期救済が妨げられている


◆証拠開示ルールを今すぐ 弁護士・鴨志田祐美さん

 桐山 全国キャラバンの手ごたえはどうでしょう。

 鴨志田 ここ一カ月だけでも沖縄や島根、三重などを回りました。各地の弁護士会が企画したシンポジウムなどです。東京の中学のPTAからは生徒と保護者向けに話を頼まれました。京都の高校では生徒自身が再審法改正の立法論まで研究している。それだけ広がりはあるし、共感を持ってくれています。
 私自身は二十年近く再審弁護に関わっています。日弁連では二〇一九年の人権擁護大会で再審法改正の決議を採択しましたが、直前に最高裁による大崎事件の再審取り消しがありました。そのころからマスコミの論調も法制度そのものがおかしいと変わってきた感じがします。


 桐山 大崎事件は一九七九年に男性の遺体が発見された事件ですが、物証がなく本当に殺人事件なのか事故死だった可能性が指摘されます。事件当初の鑑定も「他殺か事故死か不明」と変更され、第四次再審請求で出された救命救急医の鑑定では「被害者は家に運び込まれるまでに既に死亡していた」です。それなら殺人事件にならず、犯人とされる原口アヤ子さんも再審無罪のはずです。ところが、福岡高裁宮崎支部は今年六月に「再審認めず」の判断をした。不可解に思えました。

 鴨志田 原口さんは一度も自白せず無実を訴えています。共犯者とされた親族の「自白」が確定判決の支えなのです。でも、その人たちは「供述弱者」。知的障害などがあって、厳しい取り調べに迎合してしまう。今なら供述弱者には録音・録画すべきことが捜査機関内でも共通認識ですが、当時は違った。それなのに裁判所まで供述を信用できると安易に判断するのは、本当におかしい。
 第四次再審請求ではクラウドファンディングで寄付を募りました。集まった千二百万円で映画監督の周防正行さんに再現動画を作ってもらいました。被害者は酒に酔い側溝に転落。道路に引き上げられ、近隣の二人にトラックの荷台に乗せられました。自宅に搬送されるまでを裁判記録に従い忠実に再現しました。CGアニメも制作し、関係者の供述どおりに人を動かすと、近隣の二人の供述の食い違いがビジュアルに分かりました。


 桐山 六六年に起きた袴田巌さんの事件では過酷な取り調べがあり、「自白に至りました。確定判決の証拠である「五点の衣類」は何と事件から一年二カ月もたって発見。その衣類に付いた血痕の変色を手掛かりに再審決定が出ましたが、東京高裁は証拠の捏造(ねつぞう)の可能性に言及しました。

 鴨志田 無実の人が死刑になっていたかもしれない事件です。民主化されていないどこかの国でなく、この日本で何の落ち度もない人が犯人に仕立て上げられる冤罪は多重構造だと思います。まず警察が誤った見込みで捜査すると、そのストーリーに沿った証拠しか集められない。「見立ての呪縛」です。
 国家権力が地引き網みたいに集めた証拠の中には、被告人に有利な無罪の証拠も紛れているわけです。しかし、検察も見立てが固まると、そこから引き返すことができません有罪方向の証拠だけを選択して裁判所に出しているのです。


 桐山 なぜ裁判所は見抜けないんだろうと一般の人は受け止めます。裁判所は本当にちゃんと判断しているのだろうか。司法の根底を揺るがす事態が起こっている気がします。

 鴨志田 無罪方向の証拠は隠され、有罪方向の証拠ばかりをもとに判断するから裁判所も間違えるのですね。再審段階になってもなお、なかなか無罪方向の証拠が開示されない点も大問題です。開示が実現するか否かは裁判官次第という再審格差」がそこにあります。
 大崎事件では、ある裁判官が証拠開示を勧告したら、それまでないと言っていた証拠が二百十三点も出てきました。第三次再審ではさらに十八点の証拠が警察から見つかりました。その中に確定判決を覆す珠玉の証拠があったのです。
 裁判所が職権で取り寄せることができるから証拠開示ルールは必要ないと法務省は言いますが誤りです。袴田さんの事件でも第二次再審になって初めて、確定審で提出されていなかった証拠が六百点以上も開示されました。「五点の衣類」のカラー写真などですね。
 つまり「再審格差」があるから、開示のルールが必要なのです。どんなにやる気のない裁判官の下でも証拠開示せねばならないルールにしないと永久に格差は埋まりません


◆刑事司法はガラパゴス化

 桐山 先進国では例外的に日本には死刑制度が残ります。米国でさえ死刑執行する州は少数派です。一度執行したら取り返しがつかない刑だけに、もっと慎重にチェックすべきです。

 鴨志田 米国では死刑の選択には通常事件以上に慎重で厳格な手続きを要求しています。日本では裁判のどの段階にもそんな配慮はありません。少なくとも死刑という特別な刑には特別な手続きが必要です。確定有罪判決の手続きに憲法違反があれば、新証拠がなくても、再審に入れる制度にすべきです。
 日本には「確定力神話」もあると思います。三審制で裁判官が三回も吟味して有罪だったら、間違いはないだろうと。ひっくり返したら四審制になると。三審制の結論を動かすべきでないという考えに縛られることを確定力神話というのです。検察も、起訴したものは99・9%有罪でしょ、間違いあるはずがないと。真犯人が出てくるとか、DNA鑑定で別人だったとか、そんなことでもない限り再審を認めない考え方ですね。


 桐山 八〇年代には死刑事件の再審無罪が続きました。その後も冤罪が相次いでいますが、再審決定まで歳月がかかり過ぎる問題もありますね。

 鴨志田 冤罪はヒューマンエラーではなく、システムエラーの問題だと捉えないと、永久に解決しないと思います。袴田さんの事件などは「証拠の捏造まで指摘されたのですから、「真相究明委員会」を設けるべきです。航空機事故のように、徹底的に当時の警察や検察、裁判所などの関係者を呼んで、どこに間違いがあったのかを究明しないといけないと思います。
 日本の刑事司法のガラパゴス化は、法務省が考えているよりも深刻です


かもしだ・ゆみ 1962年生まれ。神奈川県出身。早稲田大法学部卒。会社員などを経て2002年に司法試験合格、弁護士に。大崎事件再審弁護団事務局長。日弁連再審法改正実現本部本部長代行。著書に『大崎事件と私 アヤ子と祐美の40年』(LABO)。共著に『見直そう!再審のルール』(現代人文社)。
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●《冤罪を起こしてはならない。再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい》

2023年12月27日 00時00分35秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2023年11月05日[日])
捜査機関による証拠捏造》…《いまも、死刑囚のまま》から脱却させないニッポンの司法。 再審裁判でも《裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠》をまたしても持ち出す気か? どこまで非道なのか。
 《日本の司法は中世なみ》《日本の前時代的な刑事司法制度》の例ではないか。《残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている》、《日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている法務・検察はそのことも自覚すべきである》(東京新聞社説)。何十年にも渡って無実の袴田巌さんを牢屋につなぎ、しかも証拠が捏造されていたとまで裁判所が指摘。再審裁判で、「有罪」を主張するのはいったいどういう神経か? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、一体どこまで人権侵害すれば気が済むのか。(東京新聞社説)《無実の訴えから半世紀日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない》。

   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たして
      人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》

 西田直晃記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/袴田巌さんが獄中でつづった書簡に記した「世界最強のチャンピオン」 長期の拘束はどう精神をむしばんだのか】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/286458?rct=tokuhou)。《1966年の強盗殺人事件で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)に対し、27日に開かれた再審初公判。無罪の扉を開く法廷がようやく始まったが、48年間の身柄拘束で心神喪失状態となった本人の姿はなかった。今も元気だったら、どんな言葉を発していたのか。獄中書簡や証言により、拘禁症状が袴田さんから奪ったものを考えた。(西田直晃)》。

 琉球新報のコラム【<金口木舌>かなわなかった普通の人生】(https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2425585.html)。《2014年の釈放まで48年間も拘置された死刑囚の袴田巌さん。強盗殺人容疑で逮捕された30歳のプロボクサーは87歳に高裁で捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)が指摘され、再審公判が先週始まった ▼長年の拘禁で心神喪失状態にある。初公判は90歳の姉ひで子さんが出廷し「真の自由を訴えた。来春結審し、無罪となる公算だ。交流した人の中に強盗殺人の布川事件桜井昌司さんと杉山卓男さんもいた》。

   『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、再審開始決定…せめて
    《一刻も早く「無罪」とすべく、検察は不服を唱えるべきではない》
   『●袴田巖さん、袴田秀子さん ――― 《捜査機関による証拠捏造》とまで
     言われているのだ、検察側が特別抗告を断念するのも、当然の結果だろう
   『●袴田冤罪事件: 《「…第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査
      機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで…》
   『●<コラム 筆洗>《高裁は捜査機関による証拠捏造の可能性まで踏み
     込んでいる…袴田さんをただ犯人にしたいという卑劣なトリックだろう》
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃ
     にした《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》
   『●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、
      姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》
   『●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たして
      人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》

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https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-2425585.html

<金口木舌>かなわなかった普通の人生
公開日時 2023年10月30日 05:00
更新日時 2023年10月29日 15:01

 57年前の逮捕後、獄中から気丈な書簡を送っていた。次第に「私の生を支えるものは憎悪に成った」と書くように。死刑確定後、心は一層むしばまれた


▼2014年の釈放まで48年間も拘置された死刑囚の袴田巌さん。強盗殺人容疑で逮捕された30歳のプロボクサーは87歳に高裁で捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)が指摘され、再審公判が先週始まった 

長年の拘禁で心神喪失状態にある。初公判は90歳の姉ひで子さんが出廷し「真の自由を訴えた。来春結審し、無罪となる公算だ。交流した人の中に強盗殺人の布川事件桜井昌司さんと杉山卓男さんもいた

▼2人は無期懲役で獄中に29年、仮出所して再審無罪。「普通のおじさん」になろうと奔走した歳月はドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」(井手洋子監督)に詳しい

▼杉山さんは8年前に亡くなり、今年8月、桜井さんと井手監督が鬼籍に入った。冤罪(えんざい)を起こしてはならない再審法の改正が待たれる。杉山さんや桜井さんらが残した人間の笑い泣き、そして袴田さんの思いを見逃すまい
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/286458?rct=tokuhou

袴田巌さんが獄中でつづった書簡に記した「世界最強のチャンピオン」 長期の拘束はどう精神をむしばんだのか
2023年10月28日 12時00分

 1966年の強盗殺人事件で死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)に対し、27日に開かれた再審初公判。無罪の扉を開く法廷がようやく始まったが、48年間の身柄拘束で心神喪失状態となった本人の姿はなかった。今も元気だったら、どんな言葉を発していたのか。獄中書簡や証言により、拘禁症状が袴田さんから奪ったものを考えた。(西田直晃


◆「人間らしさと誠実さがにじんでいた」メッセージ

     (支援者と一緒に日課のドライブへ向かう袴田巌さん㊨)

〈お母さんへ 私はこの事件となんの関係もないのだから、お母さんは自信を持って堂々と来て下さい

〈憎い奴は、僕を正常でない状態にして、犯人に作り上げようとした奴です〉

 「主よ、いつまでですか —無実の死刑囚・袴田巌獄中書簡—」(1992年、新教出版社)に収録された手紙は逮捕翌年の67年、母に宛てたものから始まる。「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」(東京)のメンバーが約5000枚のハガキや日記などから選別し、出版。人格面から無罪を証明する新証拠として、第1次再審請求審(81〜2008年)で静岡地裁に提出された。

 当時、編集に携わった救う会副代表の門間幸枝さん(82)は「家族へのメッセージに人間らしさと誠実さがにじんでいた」と回想する。この時期は無罪判決に望みを持ち、行く末を楽観視している様子も見て取れる。事件の1年2カ月後にみそタンクで見つかり、犯行着衣とされた衣類にも言及し、当時から「捏造(ねつぞう)」の疑いに触れていた。

私は、裁判所には無罪がわかって頂けると信じています
〈あの血染めの着衣が絶対に僕のものではないという証拠は、ネームがないことです。僕の着物はクリーニング屋に出すので『ハカマタ』と入っています。(中略)真犯人が動き出した証拠です。これでますます有利になりました〉

 「警察の取り調べで拷問された袴田さんは、裁判所では真実が明らかになると信じていたようだ」と推察する門間さん。だが、68年に静岡地裁が死刑を宣告。その2カ月後には最愛の母が亡くなった。

 最高裁での死刑確定(80年)までの文面には、死刑への恐怖に揺れる胸の内がにじむ。

     (2018年、袴田さんの支援活動で記者会見する
      門間幸枝さん(左)、袴田ひで子さんら=東京・霞が関で)

〈そして沈んだ灰色に汚れた白壁と、染みだらけの部屋には、何か死の匂いに近いものすら感じます〉
〈さて、私も冤罪(えんざい)ながら死刑囚。全身にしみわたって来る悲しみに耐えつつ、生きなければならない。そして死刑執行という未知のものに対するはてしない恐怖が、私の心をたとえようもなく冷たくする時がある。(中略)自分の五感さえ信じられないほどの恐ろしい瞬間があるのだ。しかし、私は勝つのだ〉

 肉親を失った悲しみを振り返る場面でも、精神的な動揺がうかがえる。

〈昭和四三年母からの便りが突然途絶えた。私はこの時自分の人生で最も悲しい時が迫るのを感じ、体中一気に凍るような衝撃を受けた。(中略)全てを呪いたい狂暴(きょうぼう)な気持ちの中で、また次第に絶望状況に陥ったものであった。その頃、獄中で両親の死を知った〉
〈死刑そのものが怖いのではなく、怖いと恐怖する心がたまらなく恐ろしい〉

 死刑確定後、次第に文面が長くなり、内省的、哲学的な表現が多くなる。「悪魔」という単語も現れた。

〈ドアに付いた染みが死を意味したり、壁の色が何か異様にみえて人間の姿に固まり、(中略)本当に悪魔が鍵孔(かぎあな)を操っているとしか思えない〉
〈調室の壁に絵がかけられていた。(中略)気がつくと私の顔を悪魔がのぞいていた。戦りつを覚えて手の平で顔をおおった。私は人類が逆に滅びるのだとその時思った〉

     (静岡市でチラシを配布するなどして袴田巌さんの
      無罪を訴える支援者たち)

 一方で「神」「愛」といった言葉が増えていった。81年に姉ひで子さん(90)宛ての手紙でキリスト教への帰依を伝え、84年暮れに洗礼を受けている。カトリック信徒の門間さんは「獄中で深く聖書を読み込んだのは、信仰によって恐怖を乗り越えようとしたのだろう」と話す。

 ボクサーだった過去も支えになっていた。こう日記にしたためている。

〈房に帰って腕立て伏せ百回。シャドーボクシングを用いて、全身の筋肉をほぐす。一五分間。(中略)もし、人生から愛を根こそぎ取り去ったら、生きるに値する何ものも残らぬ〉

 書簡集は、殺人罪で20年近く投獄され、後に無罪となった「ハリケーン」こと、米国の元ボクサー、ルビン・カーター氏に宛てた89年の手紙で終わる。「闘いと心の支えである国際的な同志」にこう伝えていた。

今、私は無実を晴らす闘いの世界最強のチャンピオンになることを願っています

 門間さんは言う。「逮捕後の袴田さんは、一度も声を出して心から笑えていないはずだ。叫ぶこと、笑うことができず、書くことしかできなかった。今は重い拘禁症状があるが、思いは書簡に詰まっている」


   ◇   ◇


◆「恐怖や絶望から、袴田さんの意識は虚構と現実が入れ替わってしまった」

 長期の身柄拘束は、袴田さんの精神状態にどんな影響を及ぼしたのか。

 姉ひで子さんが異変を感じ始めたのは、1980年12月に死刑が確定してから。拘置所に移って2、3カ月たったころ、面会で「昨日処刑があった。隣の人だった」と明かされた。このころから「毒殺される」「電波を出すやつがいる」などと漏らすようになった。90年ごろになると、支援者や弁護士の面会を拒否するように。92年以降はひで子さんも年数回しか面会ができなくなり、95年以降、途絶えた

 「99年1月にひで子さんと東京拘置所で面会を求めたが、ダメだった。拘置所に様子を聞くと、房の中をぐるぐる回っているという説明だった」と話すのは当時、衆院議員だった保坂展人・世田谷区長。2002年11月の衆院法務委員会で「心神喪失の状態にあるときは法務大臣の命令で執行停止とある。この状態を放置することはできないのでは」と質問した。

     (袴田巌さんの再審初公判が開かれた静岡地裁の
      法廷(代表撮影))

 森山真弓法相(当時)は「少し常軌を逸し始めた精神状態なのかもしれない。拘置所のほうで症状を見て判断してほしい」と答弁した。「大臣がここまで言ったことで、刑の執行は実質できなくなった」と保坂氏は振り返る。

 保坂氏は翌年3月、ひで子さんらと約30分間面会したが、袴田さんは「袴田巌はもういない。全能の神である自分が吸収した」。再審請求の話題を投げ掛けたが、自身が「東京国家調査所の所長」で「東京拘置所はなくなった。死刑執行をできないようにした」と答えたという。

 1994年の静岡地裁の再審棄却の決定文書を読んでからは、裁判関係書類の差し入れを拒否するように。その後も思うように面会できず、拘禁症状は改善しなかった。だが法務省は、2011〜12年に法相を務めた元衆院議員の平岡秀夫弁護士が健康状態について報告させた際、問題はないと答えたという。

 保坂氏は「死刑執行の恐怖や再審が実現しない絶望から、袴田さんの意識は虚構と現実が入れ替わってしまった釈放されて9年たっても、法廷に立ってやっていないと自分の言葉で言えない状態に精神が縛られていることがどんなにむごいことか法務省、検察庁はどこまで認識しているのか」と指摘し、一日も早い判決を求める。(山田祐一郎


◆デスクメモ

 普通、初公判で焦点となるのは、身柄を拘束されていた被告が初めて公の場で話す認否などだ。だが今回は袴田さん側の無罪主張は明らかで、むしろ検察が有罪立証をどう続けるのか、どれだけ時間をかけるのかが注目されている主客逆転裁かれているのは検察側かもしれない。(本)


【関連記事】「冤罪ごり押し…恐ろしい」検察に吹き荒れる逆風 袴田さん再審で有罪立証するのは結局「メンツ」のため?
【関連記事】幻覚、妄想…「拘禁反応」の恐ろしさとは? 袴田事件で浮き彫りに 再審無罪ならば回復するのか
【関連記事】袴田巌さんを釈放した元裁判長、本紙に語った再審制度の課題「検察官も苦しいはず」
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●袴田冤罪事件…小泉龍司法相《「法律に不備はない」と言い放つ…果たして人の心はあるのだろうか。耐えがたいほど正義に反する日々は…続く》

2023年11月03日 00時00分49秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(20231031[])
日本の司法は中世なみ》《日本の前時代的な刑事司法制度》の例ではないか。《残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている》、《日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている法務・検察はそのことも自覚すべきである》(東京新聞社説)。何十年にも渡って無実の袴田巌さんを牢屋につなぎ、しかも証拠が捏造されていたとまで裁判所が指摘。再審裁判で、「有罪」を主張するのはいったいどういう神経か? 《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、一体どこまで人権侵害すれば気が済むのか。(東京新聞社説)《無実の訴えから半世紀日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない
 日刊スポーツのコラム【大谷昭宏のフラッシュアップ/まだ続く正義に反する日々 袴田巌さんの再審始まる】(https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202310300000029.html)。《だけど、その後の冒頭陳述で検察は高裁から「捏造(ねつぞう)とまで言及された証拠を、またぞろ引っ張り出す見えすいた引き延ばし作戦。来年3月27日、袴田さん釈放から10年の日に予定されていた結審は不可能になった。他方この日、事件についてコメントを求められた小泉法相は「現行法に不備があるとは認識していない」とした。無実の人が半世紀にわたって命を奪われる恐怖におびえた日々。だが、官僚が書いたままとはいえ、「法律に不備はない」と言い放つこの人に、果たして人の心はあるのだろうか耐えがたいほど正義に反する日々は、まだまだ続く。》

 《捏造》までしておいて、まだ引き延ばしを図る (謀る) のか?
 東京新聞の【<社説>袴田さんの再審 真の自由を早く届けよ】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/286495?rct=editorial)。《「巌に真の自由をお与えください」。姉のひで子さんは法廷で、こう無罪を訴えた。1966年の事件である。2014年に釈放されるまで半世紀近く、死刑囚として身体拘束を受け続けた拘禁反応とみられる症状で袴田さんは出廷を免除された。再審が始まるまでの長い時間を考えても深刻な人権問題だ》。

 《裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠》をまたしても持ち出す気か?
 東京新聞の【<コラム 筆洗>ボクシングの元世界チャンピオン輪島功一さんは旧樺太に生まれ…】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/286479?rct=hissen)。《▼望みを捨てなかったから迎えられた節目だろう。昨日、輪島さんらボクシング界が支援してきた元ボクサー袴田巌さんの再審が始まった。57年前の強盗殺人事件で死刑判決を受けたが、裁判をやり直す以上は無罪の公算が大きい▼輪島さんらは集会などで世に冤罪(えんざい)を訴え、裁判所にも足を運んで巌さんの姉ひで子さんを支えた。当局の犯人視は経験者を「ボクサー崩れ呼ぶなど当時の世の偏見が一因とされるが、ボクサーが力を添えたから再審の重い扉も開いたのだろう▼佐瀬さんは老いてなお闘った現役時の輪島さんを「歳月に反逆を企てた男」と称した。長い歳月に屈せず、絶望の淵から這い上がってきた仲間との共闘は恐らく、じきに終わる》。

   『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、再審開始決定…せめて
    《一刻も早く「無罪」とすべく、検察は不服を唱えるべきではない》
   『●袴田巖さん、袴田秀子さん ――― 《捜査機関による証拠捏造》とまで
     言われているのだ、検察側が特別抗告を断念するのも、当然の結果だろう
   『●袴田冤罪事件: 《「…第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査
      機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで…》
   『●<コラム 筆洗>《高裁は捜査機関による証拠捏造の可能性まで踏み
     込んでいる…袴田さんをただ犯人にしたいという卑劣なトリックだろう》
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃ
     にした《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》
   『●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、
      姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》

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https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202310300000029.html

コラム
大谷昭宏のフラッシュアップ
2023年10月30日8時0分
まだ続く正義に反する日々 袴田巌さんの再審始まる

袴田巌さん(87)の姉、ひで子さん(90)を取材して四半世紀以上になる。だが肩を震わせ、声を上ずらせた姿は、見たことがない

57年前の事件で死刑が確定した袴田さんの再審裁判は、静岡地裁が「袴田さんをこの状態に置くことは耐えがたいほど正義に反する」として再審開始を決定してから実に9年。先週金曜日、やっと初公判が開かれた。

この朝、私はひで子さんが浜松から静岡に向かう同じ新幹線に乗る、新聞記者時代以来のハコ乗り取材。ひで子さんは、この日から朝日新聞が始めた巌さんから届いた2000枚の手紙を読み込んだ大型企画の第1回、「神さま僕は犯人ではありません」の電子版をスマホで見て時折、笑みを浮かべていた。

だが、法廷で裁判長の前に立ったひで子さんは、いまだ確定死刑囚である巌さんへの思いを募らせ、「巌に真の自由をお与えください」と訴えた。法廷を取材した記者によると、声は上ずり、肩は震えていて、その姿に弁護人席では涙を流す人もいたという。

だけど、その後の冒頭陳述で検察は高裁から「捏造(ねつぞう)とまで言及された証拠を、またぞろ引っ張り出す見えすいた引き延ばし作戦。来年3月27日、袴田さん釈放から10年の日に予定されていた結審は不可能になった。

他方この日、事件についてコメントを求められた小泉法相は「現行法に不備があるとは認識していない」とした。無実の人が半世紀にわたって命を奪われる恐怖におびえた日々。だが、官僚が書いたままとはいえ、「法律に不備はない」と言い放つこの人に、果たして人の心はあるのだろうか

耐えがたいほど正義に反する日々は、まだまだ続く

大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/286495?rct=editorial

<社説>袴田さんの再審 真の自由を早く届けよ
2023年10月28日 07時06分

 静岡県の強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌(はかまたいわお)さんの再審公判が静岡地裁で始まった。無実の訴えから半世紀日本の刑事司法の異様さをも表している。すでに87歳の高齢。残る人生と名誉をこれ以上、検察は奪ってはいけない

 「巌に真の自由をお与えください」。姉のひで子さんは法廷で、こう無罪を訴えた

 1966年の事件である。2014年に釈放されるまで半世紀近く、死刑囚として身体拘束を受け続けた拘禁反応とみられる症状で袴田さんは出廷を免除された。再審が始まるまでの長い時間を考えても深刻な人権問題だ。

 今年3月、東京高裁で再審開始が決定されたときは、世界のメディアも速報した。残酷で異常な出来事と欧米などでは受け止められている

 検察はなお、袴田さんの有罪立証をすると冒頭陳述で述べた。しかし、死刑の確定判決の根拠はもはや「血痕の付いた5点の衣類」に限られていよう。この点は東京高裁で既に「袴田さんの着衣であることに合理的な疑いが生じる」と決着がついている

 死刑判決の根拠とされた衣類は事件から約1年2カ月後に見つかるという不自然さが伴う。同高裁は第三者がみそタンク内に隠した可能性に触れた上で「捜査機関の者による可能性が極めて高いと証拠の捏造(ねつぞう)にまで言及した

 制度上は許されているとしても検察はなぜ、あくまで有罪立証にこだわるのか。組織防衛やメンツのためなら、その考え方こそ人権を踏みにじっていよう。衣類の調べはかなり尽くされていて、結局は蒸し返しではないのか。

 戦後の死刑事件で、再審公判が行われた4件はいずれも無罪になっている。今回も無罪が言い渡される公算が大きい。

 しかし、検察が事実認定に異論があるとして再審公判であらゆる証拠を吟味し直せば、審理に月日を費やし、いたずらに長引く。再審ゆえ迅速な裁判こそ必要だ。

 刑事手続きは人権保障を大前提にすべきだ。検察は公益の立場から、もはや袴田さんを救済する側に回るべきではないか

 欧米では冤罪(えんざい)や誤判をきっかけに再審制度が改められてきた。

 日本でも放置し続けてきた再審法を整備すべきときが来ている法務・検察はそのことも自覚すべきである
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●大谷昭宏さん《袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿、陰険、姑息、傲慢…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが…》

2023年09月11日 00時00分47秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


/ (2023年08月15日[火])
大谷昭宏さん《少し前のこのコラムに、袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿陰険姑息(こそく)傲慢(ごうまん)…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが、これでもまだ足りなかったようだ》。

   『●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある
     …裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》

 日刊スポーツの【大谷昭宏のフラッシュアップ/悪知恵の限り尽くした特捜検事調べ】(https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202307310000100.html)。《少し前のこのコラムに、袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿陰険姑息(こそく)傲慢(ごうまん)…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが、これでもまだ足りなかったようだ。参院選に立候補した妻のため広島の県議、市議らに2900万円をバラまいた河井克行元法相(服役中)の事件で、30万円を受け取ったとして起訴された元広島市議の任意取り調べの録音、録画データを読売新聞が入手。特捜検事のあからさまな自白誘導をスクープした》。
 そして、大川原化工機でっち上げ事件…(元木昌彦さん)《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えた》。

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》
   『●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に
     薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない
   『●大川原化工機事件は公安によるでっち上げ…《警視庁公安部が捜査し、
     公判直前に起訴が取り消された事件…現職警部補が「事件は捏造」と証言》
   『●《警察と検察が事件を捏造して、無辜の人たちを犯罪者に仕立て上げる。
     …大川原化工機の例は、この国がすでに“新しい戦前化”している…》
   『●大川原化工機捏造事件国賠…《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を
     間違っているとは思っていない。謝罪する気持ちなどない」と答えた》
   『●大川原化工機でっち上げ事件の国賠…《13年前の「正義の検事」が“冤罪”
       事件で謝罪拒む》、実は郵便不正事件当時も《問題検事》だった模様
    「この《くだんの女性検事》《問題検事》というのは誰なのかが気に
     なっていた。今西憲之さん《実はこの検事、13年前には「正義の検事
     として話題になった人物だった》。《13年前の「正義の検事」が
     “冤罪”事件で謝罪拒む》までに〝成長〟してしまったのか
     と思ったら、当時も《問題検事》であったようで、今回も立派な
     《問題検事》ぶりを発揮したようだ」

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https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202307310000100.html

コラム
大谷昭宏のフラッシュアップ
2023年7月31日8時0分
悪知恵の限り尽くした特捜検事調べ

 少し前のこのコラムに、袴田事件で審理の引き延ばしを図る検察に、陰湿陰険姑息(こそく)傲慢(ごうまん)…などと書いて、一瞬、書きすぎ? と思ったのだが、これでもまだ足りなかったようだ。

 参院選に立候補した妻のため広島の県議、市議らに2900万円をバラまいた河井克行元法相(服役中)の事件で、30万円を受け取ったとして起訴された元広島市議の任意取り調べの録音、録画データを読売新聞が入手。特捜検事のあからさまな自白誘導をスクープした。

 「お金は選挙応援のためとは思わなかった」という当時市議だった男性に「河井(元法相)だけ処罰できたらいいんだ」と持ちかけ、起訴、有罪となれば議員資格を失うことをちらつかせて買収の自白に誘導する。

 元法相の裁判に検察側証人として出廷させるに当たって一問一答のリハーサル。買収の認識を否定する元市議に「調書に取られた通り(買収)と言い切っておこう」。さらにこの一問一答は「なかったことに」と口止めする音声も残っていた。

 まだある。特捜事件は調べの全面可視化が義務づけられているが、任意調べは部分録画が認められている点に着目し、買収の認識を否定した場面はカット。「(買収は)調書の通りか」という質問に「はい」と答えるシーンだけが録画証拠として提出されていた。

 まさに悪知恵小知恵の限りを尽くした特捜検事調べ。これまでこうして無辜(むこ)の民を一体、何人罪人に仕立て上げてきたことかマイナカードと同様、メディアの各種世論調査で1度、「検察は国民にとって必要か」「組織を見直す必要があると思うか」といった質問を設けてみたらどうだろうか。

大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
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●大川原化工機でっち上げ事件の国賠…《13年前の「正義の検事」が“冤罪”事件で謝罪拒む》、実は郵便不正事件当時も《問題検事》だった模様

2023年08月14日 00時00分50秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2023年07月28日[金])
元木昌彦さん)《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えた》。《青木は今回、歯止めが利かなかったのは、「大阪地検で発覚した証拠改ざん事件(2010年=筆者注)でもその名前が取りざたされた問題検事が東京地検でこの事件を担当し、公安部と共に暴走してムチャな起訴に踏み切ったのが原因」だと見る。くだんの女性検事も証人として出廷した》。

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》
   『●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に
     薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない
   『●大川原化工機事件は公安によるでっち上げ…《警視庁公安部が捜査し、
     公判直前に起訴が取り消された事件…現職警部補が「事件は捏造」と証言》
   『●《警察と検察が事件を捏造して、無辜の人たちを犯罪者に仕立て上げる。
     …大川原化工機の例は、この国がすでに“新しい戦前化”している…》
   『●大川原化工機捏造事件国賠…《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を
     間違っているとは思っていない。謝罪する気持ちなどない」と答えた》

 それにしてもマスコミの報道が少なすぎやしまいか。本当にとんでもない捏造事件・でっち上げ事件だというのに、もっと公安や東京地検に対する批判の声がマスコミから上がるべきではないですか。(元木昌彦さん)《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えた》。以前から指摘されている問題にもダンマリ…《罪を認めない限り保釈を認めない人質司法」はここでも貫かれ、ようやく保釈が認められたのは逮捕から330日以上経ってからだった》。

 この《くだんの女性検事》《問題検事》というのは誰なのかが気になっていた。今西憲之さん《実はこの検事、13年前には「正義の検事」として話題になった人物だった》。《13年前の「正義の検事」が“冤罪”事件で謝罪拒む》までに〝成長〟してしまったのかと思ったら、当時も《問題検事》であったようで、今回も立派な《問題検事》ぶりを発揮したようだ。
 【女性検事「間違いあったと思っていない」 13年前の「正義の検事」が“冤罪”事件で謝罪拒む/今西憲之】(https://dot.asahi.com/articles/-/197216)によると、《警視庁公安部が大川原化工機(横浜市)の社長ら3人を外為法違反容疑で逮捕し、東京地検が起訴した事件は、捜査のずさんさを明るみにさらすことになった。起訴は取り消され、社長らが東京都や国を訴えた賠償訴訟で、現役の警察官が捜査を「捏造(ねつぞう)」だと証言。それにもかかわらず、捜査にかかわった検事は法廷で、起訴は間違いではなかったとして謝罪を拒んだ。実はこの検事、13年前には「正義の検事」として話題になった人物だった》。

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https://dot.asahi.com/articles/-/197216

女性検事「間違いあったと思っていない」 13年前の「正義の検事」が“冤罪”事件で謝罪拒む
2023/07/28/ 06:30
今西憲之

 警視庁公安部が大川原化工機(横浜市)の社長ら3人を外為法違反容疑で逮捕し、東京地検が起訴した事件は、捜査のずさんさを明るみにさらすことになった。起訴は取り消され、社長らが東京都や国を訴えた賠償訴訟で、現役の警察官が捜査を「捏造(ねつぞう)」だと証言。それにもかかわらず、捜査にかかわった検事は法廷で、起訴は間違いではなかったとして謝罪を拒んだ。実はこの検事、13年前には「正義の検事」として話題になった人物だった。

 大川原化工機が軍事転用可能な機器を輸出したとして、警視庁公安部が同社の大川原正明社長(74)らを外為法違反容疑で逮捕し、東京地検が同法違反の罪で起訴したのは2020年3月。大川原社長らは11カ月間も勾留され取り調べを受けたが、一貫して容疑を否認した。すると、2021年7月、初公判の直前になって突然起訴が取り消されるという異例の展開となった。

 この事件で大川原社長とともに逮捕された同社の元顧問は、勾留中に胃がんが見つかったが、迅速な治療を受けられず死亡した。大川原社長や元顧問の遺族らは、都と国に計約5億6千万円の賠償を求めて提訴。その裁判のなかで、冒頭のように証人として法廷に立った現役の警視庁公安部の警察官が、

「(事件を)でっち上げたと言われてもしかたないのでは」

 と問われて、

捏造ですね」

 と認めたのだ。この警察官は大川原社長らの逮捕や勾留についても、

必要がなかった

 と衝撃の証言を続けた。


■そもそも摘発すべき事件ではなかった

 賠償訴訟では、輸出規制を所管する経済産業省の職員も法廷に立ち、大川原化工機の輸出機器が規制対象ではない可能性があることを警視庁に「何度も伝えた」と証言。そもそも摘発すべき事件ではなかったことを裏付けている。

 この事件を担当し、逮捕、起訴にゴーサインを出した東京地検の担当検事は、塚部貴子検事だった。

 7月5日、東京地裁で塚部検事に対する証人尋問が行われた。塚部検事は、事件を起訴したことや社長らへ謝罪の気持ちについて問われ、

「起訴の判断に間違いがあったと思っていないので、謝罪の気持ちはありません

 と言い張った。

 大川原社長側の高田剛弁護士は、

「彼女(塚部検事)が公安部に何一つ疑問を投げることなく逮捕を了承し、起訴したことは明らかになったと思う。彼女が捜査を担当したおかげで、公安部は不利な証拠を隠し、まんまと立件に成功したとさえいえる

 と塚部検事の不十分な捜査が「冤罪」を生んだのではないかと問題視した。

 実は塚部検事の名前が知られたのは、今から13年前の「冤罪」事件だった。

 2010年、厚生労働省元局長の村木厚子さんが公的証明書を不正に作成したとして虚偽有印公文書作成・同行使の罪で逮捕・起訴された郵便不正事件。この事件の裁判では、大阪地検特捜部のずさんな捜査が次々と明らかになり、村木さんは「冤罪」だったとして、一審で無罪が確定した。

 さらに、事件捜査の中で、特捜部の主任検事が、証拠となるフロッピーディスクのデータを改ざんしていたことも発覚。主任検事や上司にあたる大阪地検の元特捜部長、元副部長が逮捕される異例の事態となった(いずれも有罪確定)。

 この主任検事の証拠改ざんを「告発」したのが塚部検事だった

 事件の「検察ストーリー」は、村木さんが国会議員から紹介を受けた障がい者団体のための公的証明書作成を厚労省の部下に指示したというものだった。

 しかし、部下が保存していたフロッピーディスクのデータの日時を調べると、「検察ストーリー」に合致しないことが判明し、主任検事はデータを改ざんしたのだ。

 主任検事の改ざんは、当初、大阪地検の中でも一部の検事しか知らなかった。塚部検事は、同僚検事から主任検事の改ざんを知らされると特捜部の副部長(当時)に「告発」。それが大阪地検の大暴走を暴く端緒になった

 塚部検事は取調べや裁判での証言で、

「(主任検事なら)やりかねない。わざと書き換えたに違いない」

「大変なことをした、ありえない」  

 と証拠改ざんを知った時の思いを証言。副部長に報告した後も、主任検事に対する改ざんの調査や取り組みが不十分だと感じたとして、

「副部長は何度も、『改ざんするところを見たのか』と繰り返しました。主任検事をかばうために、改ざんの事実をもみ消すのかと感じました」

「私は『なんでもみ消すのか』『村木さんは無罪ではなく無実ですよ』と言い返しました。すると副部長は声を荒げて、『なんでそんなことが言える』『オレにどうしろというんだ』『少し様子を見ようと思うんだが』と反論し、煮え切らない様子でした。私は『主任が改ざんするくらいだから無実に決まっている』と怒鳴りあいになりました」

 などと特捜部内でのやりとりも赤裸々に述べた。そして、

「(改ざんしたフロッピーディスクを)もう一度、大阪地検特捜部に取り戻すことができないかと副部長は言いました。フロッピーディスクのデータを元に戻そうとする魂胆であることがすぐにわかった」

「隠すなら私は(検事を)辞めますと怒鳴り返しました」

 と、特捜部の「隠ぺい体質」への怒りが「告発」の理由だと語っていた。


■結果的に間違っていた

 塚部検事は、当時、「冤罪」の証拠隠滅を告発した「正義の検事」として、大きな称賛を浴びることになった。

 その13年後、大川原化工機にずさんな捜査をし、無実の社長らを長期勾留したうえで、謝罪を拒否する姿とは、まったく異なって見える。

 元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、

検察が起訴取り消しなんて前代未聞のこと。それだけでもアウトですよ。事件だと言いながら1年近くも大川原社長らを勾留していたのは、検察が保釈への反対意見を書いて、裁判所に認めさせたからでしょう。逮捕されたうちのおひとりは病気を悪化させてお亡くなりになっているのです。結果的に間違っていたのですから、謝罪するのは当たり前間違いはない、謝罪しないと証言をする塚部検事はどういう考えなのか」

 と批判。村木さんの「冤罪」事件当時の塚部検事の対応についても、

「塚部検事は主任検事のことを告発しながらも、村木さんの法廷では有罪立証にかかわっていた無実の人を罪人に仕立てようとしていたことになります」

 と厳しく指摘した。

 かつて「冤罪」を防ごうとした塚部検事は、今何を思うのだろうか。

(AERA dot.編集部 今西憲之
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●大川原化工機捏造事件国賠…《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない。謝罪する気持ちなどない」と答えた》

2023年08月10日 00時00分45秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


/ (2023年07月24日[月])
大川原化工機事件…公安の男性警部補「捏造ですね」…。あまりに衝撃的過ぎる証言。

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》
   『●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に
     薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない
   『●大川原化工機事件は公安によるでっち上げ…《警視庁公安部が捜査し、
     公判直前に起訴が取り消された事件…現職警部補が「事件は捏造」と証言》
   『●《警察と検察が事件を捏造して、無辜の人たちを犯罪者に仕立て上げる。
     …大川原化工機の例は、この国がすでに“新しい戦前化”している…》

 とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人の命は戻らない。(東京新聞)《共に逮捕、起訴された元幹部は体調を崩し、起訴取り消し前に亡くなった》。(元木昌彦さん)《弁護団は緊急保釈を請求したが、東京地検はそれを却下してしまった。ようやく緊急保釈が認められたが、手術どころか抗がん剤治療にさえ耐えられないほど衰弱していて3カ月後には息を引き取ったこれは国家による人殺しである》…こういうことを「ヒトデナシ」の所業と呼ぶのではないか。(元木昌彦さん)《青木は「これまで公安警察の捜査や数々の冤罪事件を取材してきた私自身、これほどのデタラメと刑事司法の悪弊が濃縮された事件をにわかに思い出すことができない」と書いている》。
 それにしてもマスコミの報道が少なすぎやしまいか。本当にとんでもない捏造事件・でっち上げ事件だというのに、もっと公安や東京地検に対する批判の声がマスコミから上がるべきではないですか。(元木昌彦さん)《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えた》。以前から指摘されている問題にもダンマリ…《罪を認めない限り保釈を認めない人質司法」はここでも貫かれ、ようやく保釈が認められたのは逮捕から330日以上経ってからだった》。

 東京新聞のコラム【<ぎろんの森>警察行政に民主的統制を】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/264707?rct=discussion)によると、《事実だとすれば、許されてはならない不法行為です警視庁公安部が、生物兵器製造に転用可能な装置=写真は容疑がかけられた噴霧乾燥装置=を経済産業省の許可なく中国や韓国に不正輸出したとして捜査し、公判直前に起訴が取り消された事件。外為法違反などの容疑で逮捕、勾留された化学機械メーカー社長らが東京都と国に損害賠償を求めた裁判で、捜査を担当した警部補が「事件は捏造(ねつぞう)」と証言しました》。
 そして、本コラムの重要な指摘…《もう一点、留意すべきは、捜査の違法性が認定された場合、賠償の原資は私たちの税金だということです。もちろん公務員の不法行為で損害を受ければ、賠償されるべきは当然ですが、主権者たる私たちが不法行為が起きないよう監視しなければ、私たち自身がその損害を被ることになります。…私たち主権者が主体的に警察行政への関心を持ち続けることが、民主的統制を強めることにつながると考えます》。このとんでもないでっち上げ事件、もっと大騒ぎすべき事件です。

=====================================================
https://www.tokyo-np.co.jp/article/264707?rct=discussion

<ぎろんの森>警察行政に民主的統制を
2023年7月22日 07時29分

 事実だとすれば、許されてはならない不法行為です

 警視庁公安部が、生物兵器製造に転用可能な装置=写真は容疑がかけられた噴霧乾燥装置=を経済産業省の許可なく中国や韓国に不正輸出したとして捜査し、公判直前に起訴が取り消された事件

 外為法違反などの容疑で逮捕、勾留された化学機械メーカー社長らが東京都と国に損害賠償を求めた裁判で、捜査を担当した警部補が「事件は捏造(ねつぞう)」と証言しました。

 本紙は二十日の社説「公安事件『捏造』 不当捜査、全容解明せよ」で「不当捜査がなぜ行われたのか。全容解明に向けてまずは徹底調査が必要」などと主張しました。

 読者から「警察の捏造が多すぎる。東京新聞の指摘は重要だ。どんどん社会に訴えてほしい」「証言した警部補の勇気と、組織に盾突く誇りを褒めることが再発防止策になる」との声が届きました。

 全容解明と再発防止に加え政治的背景にも迫る必要があると、私たちは考えます。

 社長らが逮捕された二〇二〇年三月と五月は、中国や韓国に厳しい外交姿勢を示していた安倍晋三政権下。四月には国家安全保障局の経済班が始動し、経済安全保障を推し進めようとしたころです。

 そうした政権の方向性が、公安当局による捜査に投影されることはなかったのか、検証が不可欠でしょう。

 もう一点、留意すべきは、捜査の違法性が認定された場合、賠償の原資は私たちの税金だということです。

 もちろん公務員の不法行為で損害を受ければ、賠償されるべきは当然ですが、主権者たる私たちが不法行為が起きないよう監視しなければ、私たち自身がその損害を被ることになります

 警察行政の民主的管理・運営と政治的中立性の確保を図るために国家公安委員会都道府県公安委員会が置かれています。今回に限らず不法捜査をなくすには各公安委が実際に機能し、管理能力を発揮することが必要です。私たち主権者が主体的に警察行政への関心を持ち続けることが、民主的統制を強めることにつながると考えます。 (と)
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●《警察と検察が事件を捏造して、無辜の人たちを犯罪者に仕立て上げる。…大川原化工機の例は、この国がすでに“新しい戦前化”している…》

2023年08月08日 00時00分04秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2023年07月23日[日])
大川原化工機事件…公安の男性警部補「捏造ですね」…。とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1の命は戻らない。(東京新聞)《共に逮捕、起訴された元幹部は体調を崩し、起訴取り消し前に亡くなった》。(元木昌彦さん)《弁護団は緊急保釈を請求したが、東京地検はそれを却下してしまった。ようやく緊急保釈が認められたが、手術どころか抗がん剤治療にさえ耐えられないほど衰弱していて3カ月後には息を引き取ったこれは国家による人殺しである》…こういうことを「ヒトデナシ」の所業と呼ぶのではないか。(元木昌彦さん)《青木は「これまで公安警察の捜査や数々の冤罪事件を取材してきた私自身、これほどのデタラメと刑事司法の悪弊が濃縮された事件をにわかに思い出すことができない」と書いている》。
 それにしてもマスコミの報道が少なすぎやしまいか。本当にとんでもない捏造事件・でっち上げ事件だというのに、もっと公安や東京地検に対する批判の声がマスコミから上がるべきではないですか。《女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えた》。以前から指摘されている問題にもダンマリ…《罪を認めない限り保釈を認めない人質司法」はここでも貫かれ、ようやく保釈が認められたのは逮捕から330日以上経ってからだった》。

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》
   『●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に
     薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない
   『●大川原化工機事件は公安によるでっち上げ…《警視庁公安部が捜査し、
     公判直前に起訴が取り消された事件…現職警部補が「事件は捏造」と証言》

 日刊ゲンダイのコラム【週刊誌からみた「ニッポンの後退」 元木昌彦/横浜の中小企業を襲った冤罪の悲劇…警察・検察はこうやって「事件を捏造」する】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326384)によると、《国家の暴力装置である警察と検察が事件を捏造して、無辜(むこ)の人たちを犯罪者に仕立て上げる。そんな例は枚挙にいとまがないが、大川原化工機の例は、この国がすでに新しい戦前化していることをわれわれに教えてくれる》、《暴力装置が暴走を始めている》。さらに、《青木は「これまで公安警察の捜査や数々の冤罪事件を取材してきた私自身、これほどのデタラメと刑事司法の悪弊が濃縮された事件をにわかに思い出すことができない」と書いている》とも。

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/326384

週刊誌からみた「ニッポンの後退」
横浜の中小企業を襲った冤罪の悲劇…警察・検察はこうやって「事件を捏造」する
公開日:2023/07/23 06:00 更新日:2023/07/23 06:00

     (訴取り消しにや「謝罪する気持ちなどない」について思いを
      語る大川原化工機の大川原正明社長(C)共同通信社)

 国家の暴力装置である警察と検察が事件を捏造して、無辜(むこ)の人たちを犯罪者に仕立て上げる。そんな例は枚挙にいとまがないが、大川原化工機の例は、この国がすでに新しい戦前化していることをわれわれに教えてくれる

 横浜市に本社を置く同社に、外為法違反容疑で警視庁公安部の捜査が入ったのは2020年3月。従業員90人程度の中小企業だが噴霧乾燥機分野のシェアは7割ある。容疑は「経産相の認可を得ないで生物兵器製造に転用可能な機材を輸出した」というもの。

 サンデー毎日(7月23.30日号)でジャーナリストの青木理が怒りのリポートをしている。おどろおどろしい容疑がかけられ、逮捕されたのは社長、役員、顧問職に就いていた3人。身に全く覚えのない3人は、容疑を懸命に否認した。だが取り調べは苛烈を極めた。任意の聴取に40も応じた女性社員は疲れ果て、地下鉄のホームに身を投げようとしたと週刊新潮(7月20日号)で語っている。

 罪を認めない限り保釈を認めない人質司法」はここでも貫かれ、ようやく保釈が認められたのは逮捕から330日以上経ってからだった。だが、顧問職は勾留中に体調を崩し、悪性の胃がんだと診断された。弁護団は緊急保釈を請求したが、東京地検はそれを却下してしまった。ようやく緊急保釈が認められたが、手術どころか抗がん剤治療にさえ耐えられないほど衰弱していて3カ月後には息を引き取ったこれは国家による人殺しである

 しかも驚くことに公安のでっち上げ調書をもとに起訴した東京地検が、初公判のわずか4日前に起訴を取り消し強引に事件の幕を下ろしてしまったのだ。

 青木は「これまで公安警察の捜査や数々の冤罪事件を取材してきた私自身、これほどのデタラメと刑事司法の悪弊が濃縮された事件をにわかに思い出すことができない」と書いている。社長と役員、顧問職の遺族の怒りはすさまじく、国と東京都を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。その法廷で公安部の現職捜査員が驚愕の発言をしたのである。

 原告側の弁護士が「公安部が事件をでっちあげたのではないか」と聞くと、「まあ、捏造ですね」と認めたのである。さらに、「捜査幹部の欲でこうなった」。だが「捏造しても、その上の検察が責任を自覚していれば防げた」とも証言したのである。

 青木は今回、歯止めが利かなかったのは、「大阪地検で発覚した証拠改ざん事件(2010年=筆者注)でもその名前が取りざたされた問題検事が東京地検でこの事件を担当し、公安部と共に暴走してムチャな起訴に踏み切ったのが原因」だと見る。くだんの女性検事も証人として出廷した。

 原告側の弁護士が「誤った判断で長期勾留を強いられ、1人は命まで失った。謝罪するつもりはないか」と問うた。女性検事は淡々と、「起訴当時の判断を間違っているとは思っていない謝罪する気持ちなどない」と答えたのである。

 無罪がほぼ確定している袴田巌87)の再審公判で、静岡地検は有罪を立証してみせるとバカなことを言い出した。袴田の姉・ひで子90)は「検察だから、とんでもないことをすると思っていた」と痛烈批判。文春が連続追及している木原誠二官房副長官の“本妻”の「夫殺し疑惑」を再捜査していた刑事たちは、突然、上から捜査を事実上ストップされてしまった。暴力装置が暴走を始めている。 (文中敬称略)

(「週刊現代」「フライデー」元編集長・元木昌彦
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●大川原化工機事件は公安によるでっち上げ…《警視庁公安部が捜査し、公判直前に起訴が取り消された事件…現職警部補が「事件は捏造」と証言》

2023年08月04日 00時00分22秒 | Weblog

[↑ ※袴田事件捜査機関による証拠捏造》…《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


 (2023年07月20日[木])
大川原化工機事件…公安の男性警部補「捏造ですね」…。とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人の命は戻らない。(東京新聞)《共に逮捕、起訴された元幹部は体調を崩し、起訴取り消し前に亡くなった》。

   『●人質司法による《身柄拘束は実に約十一カ月間》、大川原化工機の
     大川原社長ら…《こんなにひどいことはないと感じたという》青木理さん
   『●大川原化工機事件…でっち上げ事件、《勾留後に亡くなった1人を
     含め、会社側は起訴取り消しになっても大きな不利益を被りました》
   『●日刊ゲンダイ【辛口の経済評論家 佐高信氏が「いい会社」と就活生に
     薦めたい企業3社】《城南信用金庫…久遠チョコレート…大川原化工機》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない

 とんでもなく理不尽な事件。(東京新聞)《東京地検は21年7月になり、犯罪に当たるかどうか疑義が生じたとして起訴を取り消した。2人の勾留は21年2月に保釈されるまで1年近く続いた。共に逮捕、起訴された元幹部は体調を崩し、起訴取り消し前に亡くなった》、《顧問の男性は勾留中に輸血されるほど体調を崩したが、入院のための勾留一時停止まで時間がかかり、起訴取り消し前に死亡した》。
 しかも、冤罪事件捏造事件でっち上げ事件。(毎日新聞)《捜査に携わった警視庁外事1課の男性警部補が証人として出廷し、「(事件は)捏造(ねつぞう)だと思う」と証言した。…「大きな事件を挙げて上に行きたいという欲が捜査幹部にあったのだと思う。逮捕する必要はなかった」と述べた。別の警部補も捜査幹部が不利になる証拠に目を向けなかったと同調した》。(アサヒコム)《今も同庁公安部に所属する男性警部補は事件を「捏造(ねつぞう)」と証言し、別の1人も見立てに合わない証拠を捜査幹部が軽視したと述べた。捜査の違法性が問われた裁判で、現役の警察官が自ら捜査を「捏造」と呼ぶのは極めて異例だ》、《立件は「捜査員の欲」 いかされなかった内部通報》。
 かつ、《事実上の自白強要である長期勾留を認めた裁判所の責任も問われて当然だ》、《深刻なのは、警察上層部や検察が捜査の暴走を見過ごしていたことだ》(東京新聞)。

 東京新聞の【<社説>公安事件「捏造」 不当捜査、全容解明せよ】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/264270?rct=editorial)によると、《警視庁公安部が捜査し、公判直前に起訴が取り消された事件について現職警部補が「事件は捏造(ねつぞう)」と証言した。事実だとすれば、許されざる事態だ不当捜査がなぜ行われたのか。全容解明に向けてまずは徹底調査が必要である。同公安部は二〇二〇年三月、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥装置を経済産業省の許可なく中国に不正輸出したとして、外為法違反などの容疑で化学機械メーカーの大川原化工機(本社・横浜市)の社長ら三人を逮捕した。同社は起訴後、乾燥装置が規制対象外であることを性能実験で実証したため、東京地検は初公判四日前に起訴を取り消した。ただ、容疑を認めなかった社長らは十一カ月間の勾留を強いられた顧問の男性は勾留中に輸血されるほど体調を崩したが、入院のための勾留一時停止まで時間がかかり、起訴取り消し前に死亡した》。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/264270?rct=editorial

<社説>公安事件「捏造」 不当捜査、全容解明せよ
2023年7月20日 08時03分

 警視庁公安部が捜査し、公判直前に起訴が取り消された事件について現職警部補が「事件は捏造(ねつぞう)」と証言した。事実だとすれば、許されざる事態だ不当捜査がなぜ行われたのか。全容解明に向けてまずは徹底調査が必要である。

 同公安部は二〇二〇年三月、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥装置を経済産業省の許可なく中国に不正輸出したとして、外為法違反などの容疑で化学機械メーカーの大川原化工機(本社・横浜市)の社長ら三人を逮捕した。

 同社は起訴後、乾燥装置が規制対象外であることを性能実験で実証したため、東京地検は初公判四日前に起訴を取り消した。ただ、容疑を認めなかった社長らは十一カ月間の勾留を強いられた

 顧問の男性は勾留中に輸血されるほど体調を崩したが、入院のための勾留一時停止まで時間がかかり、起訴取り消し前に死亡した

 社長らは国と東京都に損害賠償を求めて提訴。証人尋問で捜査を担当した警部補が事件「捏造」を証言し、その理由には上司の警部(現警視)の「個人的な欲出世欲)」を挙げた。

 捜査への疑問を挟んだ別の警部補も、上司らから事件がつぶれて責任を取れるのかと迫られ疑問は無視されたと話した。

 逮捕前、社員らの聴取は三百回以上で家宅捜索も済んでいた。逮捕は必要だったのか。事実上の自白強要である長期勾留を認めた裁判所の責任も問われて当然だ

 経産省の担当職員は再三、装置が規制対象外である可能性を警察側に伝えていたが、逮捕に踏み切ったのは、見込み捜査であり人権侵害の可能性が否定できまい。

 深刻なのは、警察上層部や検察が捜査の暴走を見過ごしていたことだ。警察庁は起訴取り消し後も事件を「摘発例」としてウェブ上で紹介し、起訴した検事も「謝罪の気持ちはないと言い放つ

 起訴取り消し後の昨年五月には民間技術者らの情報漏えいにも罰則を設ける経済安全保障推進法が成立した。法整備を目指す自民党政権の姿勢が、捜査の暴走を招いた背景にあるのではないか。

 「捏造と指摘されるような不当な捜査がなぜ行われたのか。全容解明と再発防止策を促す責任は国家公安委員会と東京都公安委員会にある。国会も捜査の暴走に組織上の欠陥がないかを調査し、必要な立法措置を講じるべきだ。
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●東京新聞《検察は袴田さんを再び収監して、死刑にすべきだと本気で考えているのだろうか。東京高裁は捜査機関による「証拠の捏造」の可能性…》

2023年07月28日 00時00分01秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2023年07月12日[水])
袴田巖さん《いまも、死刑囚のまま》をいつまで続けるつもりなのか、検察は? 《捜査機関による証拠捏造》まで行っていたというのに…。刑事司法の原則《「疑わしきは被告の利益に」という原則》を蔑ろにした司法の罪もあまりにも重い。
 東京新聞の記事【袴田さん再審、有罪立証へ 検察、弁護側と全面対決】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/262093)によると、《再審で無罪が言い渡される公算は大きいとみられるが、検察と弁護側が争うことになり、審理が長引く可能性が高まった》。

 立川談四楼@Dgoutokujiさんのつぶやき:

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https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1678973947604512768

立川談四楼@Dgoutokuji

「袴田巌さん姉ひで子さん『法廷で無罪聞かせたい』検察の有罪立証方針に冷静」ひで子さん(90)は冷静かつ強い。「ここで2、3年長くなったってどうってことないですよ」ときた。闘ってきた人は違うね。検察の手口なんぞ知り抜いてるんだ。検察よ、心してかかれ。そしてこの姉弟にきっちり謝罪するんだ

午後0:45 · 2023年7月12日
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 記者会見での袴田秀子さんの対応を見ていて、本当に頭の下がる思いだ。90歳ですよ…。《袴田さんはすでに八十七歳…一刻も早く「無罪」の宣告をすべき》(東京新聞社説)。冷酷にも、検察は、袴田さんらが訴えることが出来なくなることを持っている、時間稼ぎしているとしか思えない。

   『●飯塚事件…《裁判所は…検察に証拠品のリストの開示を勧告…したが、
     検察は「裁判所に権限はない」「事案の解明に意味はない」などと拒否》
   『●大崎事件《無辜の人の救済》の理念はどこに? 《医学の専門家でない
     裁判所が十分な根拠も示さず、専門家による科学的証拠を退けた不当な判断》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち

     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない

 東京新聞の【<社説>袴田さんの再審 審理を長引かせるな】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/262284)によると、《検察は袴田さんを再び収監して、死刑にすべきだと本気で考えているのだろうか。東京高裁は捜査機関による「証拠の捏造(ねつぞう)」の可能性を指摘している。検察は「捏造」の言葉に拒否反応を示しているのかもしれないが、もはや検証すべきは当時の捜査の在り方を巡る問題点にほかならない袴田さんはすでに八十七歳になる。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従って、一刻も早く「無罪」の宣告をすべきと考える》。

   『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、再審開始決定…せめて
    《一刻も早く「無罪」とすべく、検察は不服を唱えるべきではない》
   『●袴田巖さん、袴田秀子さん ――― 《捜査機関による証拠捏造》とまで
     言われているのだ、検察側が特別抗告を断念するのも、当然の結果だろう
   『●袴田冤罪事件: 《「…第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査
      機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで…》
   『●<コラム 筆洗>《高裁は捜査機関による証拠捏造の可能性まで踏み
     込んでいる…袴田さんをただ犯人にしたいという卑劣なトリックだろう》
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃ
     にした《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/262093

袴田さん再審、有罪立証へ 検察、弁護側と全面対決
2023年7月10日 18時01分 (共同通信)

     (袴田巌さんの再審公判で検察側が有罪を立証する方針を
      静岡地裁に示したことを受け、姉ひで子さん(左)と
      記者会見する弁護団事務局長の小川秀世弁護士
      =10日午後、静岡市)

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、釈放された袴田巌さん(87)の裁判をやり直す再審公判で、検察側は10日、袴田さんの有罪を立証する方針を静岡地裁に伝えた。弁護側は無罪を主張している。再審で無罪が言い渡される公算は大きいとみられるが、検察と弁護側が争うことになり、審理が長引く可能性が高まった

 刑事訴訟法は再審開始について「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」があった時と定める。東京高裁は今年3月、確定判決が「犯行着衣」とした衣類5点の証拠を、捜査機関側が捏造した可能性が極めて高いと指摘。「到底袴田さんを犯人と認定できない」とし、再審開始決定をした。

 検察は最高裁への特別抗告を断念し、再審開始が確定した。特別抗告は憲法違反や判例違反がある場合に限られ、理由が見いだせないとして断念したが、再審公判で主張する内容に法的な制限はない。
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https://www.tokyo-np.co.jp/article/262284

<社説>袴田さんの再審 審理を長引かせるな
2023年7月11日 07時43分

 一九六六年に起きた静岡県の四人殺害事件で犯人とされた袴田巌さんの再審公判を巡り、検察側が有罪立証すると表明た。これまで争点となっていた「衣類の血痕」について反論するというが、審理を長引かせることは避けるべきである。

 静岡地検は再審公判で五点の衣類の血痕について反論すると静岡地裁に伝えた。この衣類はあくまで犯行時に袴田さんが着ていたものとの主張である。

 衣類は袴田さんの勤務先のみそタンクから発見された。当時の捜査資料では血痕の色は「濃赤色」と記されたが、弁護側は実験や鑑定に基づいて「長期間、みそ漬けにされた血痕には赤みは残らない」と主張。東京高裁も認めて再審決定につながった。

 静岡地検は十日、赤みが残ることは不自然ではないことを法廷で立証すると明らかにした。

 確かに、同じ争点の場合、新証拠の証明力を弾劾する証拠であれば、提出可能とされている。

 しかし、既に四十年以上も裁判のやり直しを求めていた事件である。第二次の再審請求審から九年間も「色」を巡る攻防が繰り返されてきた経緯もある。

 問題の衣類は、確定判決の決め手だったが、そもそも袴田さんが着られるサイズでなかった。検察は「縮んだ」とも「袴田さんが太ったため」とも…。事件後、何と一年二カ月もたっての発見という経緯にも不自然さが残る。

 今回の検察方針は、これまで争点でなかった事実や証拠を再審公判で唐突に持ち出すことには当たらないとしても、同じ論点でこれ以上、時間をかけることが本当に正義にかなうのか

 検察は袴田さんを再び収監して、死刑にすべきだと本気で考えているのだろうか

 東京高裁は捜査機関による「証拠の捏造(ねつぞう)」の可能性を指摘している。検察は「捏造」の言葉に拒否反応を示しているのかもしれないが、もはや検証すべきは当時の捜査の在り方を巡る問題点にほかならない

 袴田さんはすでに八十七歳になる。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従って、一刻も早く「無罪」の宣告をすべきと考える。
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●袴田事件…《検察は…「色合いなどもう1度、調べる」とする動きがある…裁判官が“デッチ上げ”と見ている証拠から何を引き出そうというのか》

2023年07月20日 00時00分53秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


//  (2023年7月3日[月])
袴田事件再審、何も進んでいない…。《検察は、この流れを尻目に迷走どころか暴走を繰り返す。4月、裁判所、検察、弁護側の初の3者協議で「改めて有罪立証するかを含め論点整理に3カ月かかる」と、いきなり7月10日までの猶予を要求。》
 日刊スポーツのコラム【大谷昭宏のフラッシュアップ/袴田事件再審 迷走どころか暴走繰り返す検察 積み重なる耐えがたいほど正義に反する日々】(https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202307030000058.html)によると、《それどころか毎日新聞によれば、高裁決定で「捏造(ねつぞう)された可能性がある」とされた5点の衣類について「色合いなどもう1度、調べるとする動きがあるという。一体、今月10日の期限直前に、裁判官がデッチ上げと見ている証拠から何を引き出そうというのか。事件から半世紀。「もう何が起きてもがっかりすることはありません」というひで子さん。ただ「死刑囚でない普通のと、この先、半日でも1日でも長く暮らしたい」と涙ぐまれる。先日、これまで3度も再審が認められた鹿児島県の大崎事件で、福岡高裁宮崎支部は検察の抗告を認め、原口アヤ子さんの訴えを退けてしまった原口さん95歳耐えがたいほど正義に反する日々が、ここでも積み重なっていく》。

 《「これ以上、袴田さんを拘束することは耐えがたいほど正義に反する」と異例の死刑囚釈放を決めた村山浩昭元裁判官》。大谷昭宏さん《耐えがたいほど正義に反する日々が、ここでも積み重なっていく》。
 袴田事件大崎事件、そして、飯塚事件、さらには、大川原化工機事件。検察や警察による冤罪事件、捏造事件、でっち上げ事件、それを見逃す裁判官…《耐えがたいほど正義に反しないか? しかも、《無辜の人の救済》の理念はどこにいってしまったのか?

   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
     まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん
   『●大崎事件《無辜の人の救済》の理念はどこに? 《医学の専門家でない裁判
      所が十分な根拠も示さず、専門家による科学的証拠を退けた不当な判断》
   『●飯塚事件…《裁判所は…検察に証拠品のリストの開示を勧告…したが、
     検察は「裁判所に権限はない」「事案の解明に意味はない」などと拒否》
   『●男性警部補「捏造ですね」…とんでもない冤罪事件・捏造事件・でっち
     上げ事件、国賠が認められても《勾留後に亡くなった1人》の命は戻らない

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https://www.nikkansports.com/general/column/flashup/news/202307030000058.html

コラム
大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。


2023年7月3日8時0分
袴田事件再審 迷走どころか暴走繰り返す検察 積み重なる耐えがたいほど正義に反する日々

7月に入り、目を凝らして見ていることがある。57年前、静岡で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)について、この春、東京高裁が検察の抗告を棄却静岡地裁での再審開始が決まった

あれから4カ月。この間、袴田さんの支援集会には9年前、初めて静岡地裁で再審開始を決定、「これ以上、袴田さんを拘束することは耐えがたいほど正義に反する」と異例の死刑囚釈放を決めた村山浩昭元裁判官も出席。袴田さんや姉のひで子さん(90)と面会。再審法制定の必要性を語られた。

だが検察は、この流れを尻目に迷走どころか暴走を繰り返す。4月、裁判所、検察、弁護側の初の3者協議で「改めて有罪立証するかを含め論点整理に3カ月かかる」と、いきなり7月10日までの猶予を要求。これまで計3回開かれた協議でも方針は示さないままだ。

それどころか毎日新聞によれば、高裁決定で「捏造(ねつぞう)された可能性がある」とされた5点の衣類について色合いなどもう1度、調べるとする動きがあるという。一体、今月10日の期限直前に、裁判官が“デッチ上げと見ている証拠から何を引き出そうというのか

事件から半世紀。「もう何が起きてもがっかりすることはありません」というひで子さん。ただ「死刑囚でない普通のと、この先、半日でも1日でも長く暮らしたい」と涙ぐまれる。

先日、これまで3度も再審が認められた鹿児島県の大崎事件で、福岡高裁宮崎支部は検察の抗告を認め、原口アヤ子さんの訴えを退けてしまった原口さん95歳

耐えがたいほど正義に反する日々が、ここでも積み重なっていく


大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
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●《過去の任地で「裁判員裁判で初の死刑判決」になるかもしれない…裁く側に一般市民。その立場で誰かに死を求めるのか。あまりに重い判断》

2023年06月06日 00時00分40秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(2023年05月21日[日])
死刑制度反対裁判員制度反対
 大杉はるか記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/日弁連が「終身刑」創設を提言 今なぜ必要なのか?】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/251295?rct=tokuhou)によると、《◆デスクメモ 過去の任地で「裁判員裁判で初の死刑判決」になるかもしれないと目された裁判を担当した。判決日は傍聴席へ。緊張で体がこわばり、背中が汗ばんだ裁く側に一般市民その立場で誰かに死を求めるのかあまりに重い判断。無期刑が言い渡された瞬間、力が抜けたのを覚えている。(榊)》

   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚の
      まま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん

 袴田冤罪事件、「無罪」判決の次は、《「第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで》の問題へ。検察や警察、《捜査機関による証拠捏造》に対する責任ある対応が求められる。裁判官やメディアの責任も免れない。
 そして、飯塚事件。既に死刑執行してしまった…。山口正紀さんの記事《「飯塚事件」をご存知だろうか。1992年、福岡県飯塚市で起きた2女児殺害事件で逮捕され、無実を訴えていた久間三千年(くま・みちとし)さんが死刑判決を受け、2008年に死刑が執行された(当時70歳)。…オンライン集会は、この第2次再審請求の意義・内容を報告し、支援の輪を広げていこうと企画され、飯塚事件再審の実現に向けて尽力してきた九州大学の大出良知・名誉教授、再審法改正をめざす市民の会木谷明代表(元裁判官)、布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんら幅広い支援者たちの呼びかけで開催された。…布川事件冤罪被害者桜井昌司さん…「こんなことを優秀な裁判官がなぜわからないのか日本の警察はこれまでも証拠を捏造してきました。そうして、どれだけの人が刑務所に入れられ、殺されてきたか。すべてが無責任です。冤罪事件で国家賠償しても、だれも懐が痛まない。そのお金も税金です。足利事件、布川事件、ゴビンダさんの事件東電事件)、東住吉事件だれもその責任を追及しない。再審法を改正しないといけない。税金で集めた証拠を法廷に出すのは当たり前じゃないですか。久間さんの無念は必ず果たせると確信しています。必ず勝ちます。一緒にがんばりましょう。無惨に殺された人の無念を晴らす殺したのは誰か検察庁です」》。

   『●憲法《37条1項が保障する『公平な裁判所による裁判を受ける権利』が
      侵害され》ている…飯塚事件、大崎事件の裁判に「公正らしさ」は?
    《根底には再審法(刑事訴訟法)の不備がある。冤罪(えんざい)から
     無実の人を早期救済するため(1)証拠開示の制度化
     (2)審理を長引かせる検察官抗告の禁止-などの法整備を
     日本弁護士連合会や市民グループが求めている。加えて、
     同一事件の審理を同じ裁判官が繰り返し担うことを、
     再審請求審でも禁じると規定するべきではないか。》

   『●《判決後、大西直樹裁判長は、捜査の問題点と刑事司法の改善の必要性
     を説き、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」と話している》
    《西山さんは担当刑事に「いろいろ言いたいこともある」と言う。
     だが、過去を恨むのではなく「冤罪で苦しむ人を救済できる、
     再審法の改正が進んでほしい」と冤罪支援を必要とする人には話を
     しにいったりしている》

 何度も引用しているが、何度でも。(斎藤貴男さん)《当時、「週刊文春」の記者だった私は、彼を殺人犯に仕立てた連中に、「今のお気持ちは」と尋ねて回る取材を仰せつかったのだが、凄まじい成果を得てしまった。「犯人は梅田だと上が言うから逮捕したまで証拠なんかねえよ」と、元刑事は笑ったし、元裁判官は、「判決とは国家の意思なんだ真犯人なんか誰でもいい裁判所が死刑だと言えば吊るせばいい無期だと言ったらつなげばいいんだ」と、力説してくれたものである》…。凄まじい。

   『●《権力の横暴とそれに従属するマスコミの報道姿勢への問題意識を燃料に
       書いてきた──。脚本家がそう明言するドラマが、地上波で放送…》
   『●【<土曜訪問>表現の幅、狭めない 冤罪事件から着想 ドラマ「エルピス」
          で脚本 渡辺あやさん(脚本家)】(東京新聞・石原真樹記者)

 (斎藤貴男さん)《葉梨康弘氏は…③死刑執行は冗談のネタ……だと捉えている》。良い付け事件で《死刑執行命令を下したのは、麻生内閣の森英介法務大臣(当時)》…何を考え《ハンを押した》のだろう。《当たり前だ。ざっと列挙するだけでも葉梨氏は、①法相なんてチョロいポスト、②大臣の立場は金儲けに使えるはず、③死刑執行は冗談のネタ……だと捉えている。そんな人間に、法秩序の維持や国民の権利擁護の重責を担わせておけるはずがない。さらにまた、東大法学部出の彼は、世襲政治家の娘婿になって政界入りする以前、警察庁のキャリア官僚だった前述のような発想ないし確信は、つまり警察官としての職務と日常において培われたものではなかったか。》、《「梅田事件」を思い出す》。

   『●ズブズブ壺壺ヅボヅボでない自民党議員にとっては大チャンスなのに?
      ……まあ、やる気のある、自民党にそんな議員が居ればの話ですがね

 以前引用した室井佑月さんのコラム、最後の部分が重要。《話は変わって、2009年から裁判員制度がはじまった。当時から私は、市井の人に死刑を決めさせるのは荷が重すぎると大反対だった。いや、主語を大きくしてはいけない。あたしには無理だ。今回のことでそれを再認識した。もし裁判員として選ばれたら、堂々と拒否してこういおう。「できません冤罪もあることですし、あたしは死刑制度に反対です人の命を、自民党の人たちみたいに軽く考えられないので」》。
 《人の命を、自民党の人たちみたいに軽く考えられないので》。裁判員制度反対…「できません冤罪もあることですし、あたしは死刑制度に反対です人の命を、自民党の人たちみたいに軽く考えられないので」(室井佑月さん)。ブログ主も、「できません」「あたしは死刑制度に反対です」。『死刑のスイッチ』を押すのは、押させられるのは、まっぴら御免だ。

   『●死刑存置を目指して、市民の意識のハードルを下げさせる制度』   
    「裁判員制度に乗せられて、「死刑のスイッチ」を押させられるなんて、
     真っ平御免だ。ましてや、それが冤罪であったりすれば、二重三重の
     意味でトラウマ必至だ。死刑存置をもくろむ国や官僚、政治家が、
     死刑に対する市民の意識のハードルを下げさせるための制度
     裁判員制度であると思う。その片棒を担がされるなんて耐えられない。
     敢えて重大犯罪の裁判にシロウト裁判員を参加させるところがその証左」

   『●『つぶせ! 裁判員制度』読了
   『●『官僚とメディア』読了(3/3)
   『●『裁判員制度の正体』読了
   『●手遅れ!! ~死刑のスイッチを押すことと死刑執行~
   『●死刑という制度: 「吊るせ、吊るせ」の合唱で何か状況は変わるのか?
   『●「裁判員制度」の下での「死刑制度」存置支持
   『●それは、職業裁判官の怠慢にすぎない
   『●裁判員制度下で少年死刑判決
   『●裁判員の心を慮る・・・
   『●そのスイッチを押せない
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(1/2)
   『●『きみが選んだ死刑のスイッチ』読了(2/2)
   『●裁判員制度: 被告にとっても憲法違反
   『●裁判員制度を即刻中止に
   『●「死刑のスイッチ」を押すこと: 裁判員のストレス障害
   『●裁判員制度という不始末に最高裁はどのような落し前を?
   『●「死刑のスイッチ」を強制する裁判員制度:
      「やった人でないと、この苦しみは分からない」
   『●裁判員制度反対…「冤罪もあることですし、あたしは死刑制度に反対
      です。人の命を、自民党の人たちみたいに軽く考えられないので」

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/251295?rct=tokuhou

こちら特報部
日弁連が「終身刑」創設を提言 今なぜ必要なのか?
2023年5月21日 12時00分

 死刑の代替刑として終身刑を創設するよう、日弁連が提言している。具体像まで示しており、先月には超党派議連で話題に上がった。かつて国会でも終身刑は議論されたが、実現せずにきた。今なぜ終身刑が必要なのか。実現の課題は何か。(大杉はるか


◆死刑は廃止すべきか 世論も考慮

 超党派議連「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」が先月開いた会合。日弁連が昨年11月に提言した終身刑創設について、取りまとめに携わった当時の日弁連副会長、伊井和彦弁護士らが説明した。

     (「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」が開いた
      会合=東京都千代田区の衆院第二議員会館で)

 提言では、殺人や強盗殺人罪といった現行の死刑適用罪の全てを対象とし、死刑を終身刑に置き換える。その上で、刑確定から15年か20年経過後に、地裁に「特別減刑」を申し立てられるようにする。地裁の裁判官は受刑状況や本人の心情、事件に関する世論などを踏まえ、減刑について判断。減刑が確定すれば、10年経過後から仮釈放の適用もある無期刑になる。終身刑とはいえ、通算25年か30年経過後に外に出られる道を残した。

 日弁連は2002年から複数回、死刑制度の廃止に向けて提言しており、16年には終身刑制度の検討を提言。今回の提言で初めて特別減刑制度の導入を明確に訴え、具体像を示した。

 なぜ終身刑創設なのか。

 「あえて、死刑に代わる終身刑を提案しているのは世論の関係がある」

 先の会合で伊井弁護士はそう切り出した。

 19年の内閣府世論調査では死刑もやむを得ないとの回答が約80%に上った死刑存置が圧倒的に見えるが、うち「状況が変われば、将来的に廃止してよいは約40%。「終身刑が導入されれば死刑を廃止する方がよいは約35%あり、提言の意義を見いだした。


◆「冤罪で極刑」を回避

 伊井氏は「こちら特報部」の取材に「死刑に代わる具体的な制度を示して議論していくことが重要だと考えた。重い罪を設ける一方で、冤罪(えんざい)で死刑になることは回避できる」と語った。

 日弁連内も死刑の存廃で割れ、廃止に賛成でも終身刑は反対、提言行為自体に反対など、幅広い意見があったという。半年近い議論の末、ようやく昨年11月の理事会で、提言は全91人の8割の賛同を得た。

     (日弁連の提言について説明する伊井和彦弁護士
      =東京都新宿区で)

 「刑罰は国家権力による人権抑制制度。そのあり方について人権の観点からものを言うのは弁護士会の使命だ」と伊井氏は語る。

 もう一点、大きな変化がある。昨年6月に成立し、再来年までに施行される改正刑法だ。強制労働である懲役刑と、一部の罪に適用される労働のない禁錮刑は、拘禁刑に一本化される。拘禁刑での労働の目的は改善更生や社会復帰になり、健康などの問題で労働させることが適当でなければ労働は免除される。

 これまでも受刑者の処遇は、改善更生の意欲喚起や社会生活への適応能力育成に重きが置かれてきたが、確定死刑囚となると「心情の安定に留意」としか定められていなかった。

 では、死刑の代替刑として終身拘禁刑が設けられた場合、処遇はどうなるか。

 「改善更生を目的にしないといけない」と伊井氏は話し、こう続ける。

 「終身拘禁刑は30年経過後に仮釈放の可能性があり、将来の社会復帰を可能とする処遇にすべきだ。仮に社会復帰ができなくても凶悪な考えだった人が改善される形の処遇が必要だ」


◆無期刑は「事実上の終身刑」か

 終身刑を設ける上で看過できない問題がある。

 伊井氏は「前提として、無期刑を本来の趣旨に戻すべきだ」と主張する。

 無期懲役は刑法上、受刑者に「改悛(かいしゅん)の状」があるときは、10年経過後から仮釈放を認めている。制定時に「在監期間を長くすると囚人を自暴自棄に陥らせる弊害がある」(法務省)と考えられたからだ。

 だが無期刑は「事実上の終身刑」と指摘されてきた。2000年末の無期受刑者は1047人(全受刑者の2%)だったが、21年末には1725人(同4.4%)と大幅増加。新規で仮釈放された無期受刑者の平均在所期間も、00年の21年2カ月から、21年には32年10カ月に延びている。40年前の1981年の15年7カ月と比べると、倍の長さだ。

 社会の高齢化に伴い、受刑者も高齢化しており、刑の長期化はその一因になるとも考えられる。

 18年1月に八王子医療刑務所から移転開設された「東日本成人矯正医療センター」は、身体や精神疾患のある受刑者向けの医療専門施設。昨年の入所人員は307人で、健康な受刑者も補助作業をしている。

 被収容者の平均年齢は身体疾患が62歳、精神疾患が51歳だが、最高齢は男性93歳、女性82歳という。

 元裁判官の森炎弁護士は「仮釈放の総数は微増しているが、服役期間は長期化し、受刑中の死亡者も増加傾向にある」と指摘する。

 仮釈放制度については、日弁連が10年、服役期間が15年に達するまでに初回の仮釈放の審理を開始、受刑者本人の審理参加などを求める意見書を提出。だが見直しは進んでいない。


◆終身刑の導入国では適用増加

 その一方、終身刑の創設に伴い、適用例が多くならないかという懸念もある。

 NGO「ペナル・リフォーム・インターナショナル」などの政策提言によると、世界216カ国中、183の国・地域で法律上の終身刑が設けられ、うち149カ国で終身刑を最高刑(極刑)としている。世界の終身刑受刑者は00年の26万1000人から14年の47万9000人に84%アップした。背景には、世界的な死刑の減少に加え、薬物犯罪などへの厳罰化、死刑適用罪より軽い犯罪にも適用されていることが考えられるという。

 NPO監獄人権センター代表の海渡雄一弁護士は「終身刑と有期刑の間に、無期刑がある制度となれば、世界的にも極めて例外」と指摘する。「無期刑の言い渡しを受けている人が終身刑に移行しないかが心配だ」として、「終身刑には死刑適用基準をそのまま横滑りさせるべきだ」と話す。

 そして最大の課題は、死刑の廃止だろう。

 国会では08年、議連「量刑制度を考える超党派の会」(解散)が終身刑創設の法案化を進めたことがある。この時は死刑廃止を、前提とはしなかった。

 現在活動するのが、冒頭の「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」。平沢勝栄会長は「まずは死刑の実態を見て聞いてから存廃の議論をするべきで、とても判断できる段階ではない」と語るにとどまる。

 前出の伊井氏はくぎを刺す。「先進国で死刑を廃止していないのは日本と米国だけ。米国は連邦レベルで執行を停止している。日本は国会でも死刑という刑罰制度を認めていいのか考えてもらわないといけない。死刑廃止がすぐにできないなら、まずは死刑執行停止法が必要だ

 龍谷大の福島至名誉教授(刑事法)も「死刑はなるべくやめて終身刑にしようという点を曖昧にするのは危うい。少なくとも廃止の方向性を示す必要がある」と訴えている。


◆デスクメモ

 過去の任地で「裁判員裁判で初の死刑判決」になるかもしれないと目された裁判を担当した。判決日は傍聴席へ。緊張で体がこわばり、背中が汗ばんだ裁く側に一般市民その立場で誰かに死を求めるのかあまりに重い判断。無期刑が言い渡された瞬間、力が抜けたのを覚えている。 (榊)


【関連記事】被告人や受刑者による「獄中者組合」ってどんな組織?なぜ活動は終了したのか?
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●《捜査機関による証拠捏造》…無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚のまま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん

2023年05月28日 00時00分45秒 | Weblog

[↑ ※《第三者は捜査機関の者である可能性が極めて高いと思われる》(『報道特集』、2023年03月18日[土])]


(20230514[])
捜査機関による証拠捏造》まで行っていたデタラメな警察、それに手を課した検察、なんども見逃した裁判官…たとえ無罪判決を勝ち取り《いまも、死刑囚のまま》から脱却できても、「拘禁反応」に苦しめられ続ける袴田巖さん。48年の月日は戻らない。もっともとお早く再審を始めていれば…。刑事司法の原則《「疑わしきは被告の利益に」という原則》を蔑ろにした司法の罪もあまりにも重い。
 西田直晃記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/幻覚、妄想…「拘禁反応」の恐ろしさとは? 袴田事件で浮き彫りに 再審無罪ならば回復するのか】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/247402?rct=tokuhou)によると、《東京高裁での再審開始決定を受け、早期の無罪の宣告を待ちわびる死刑囚の袴田巖さん(87)。長期の収監や死刑の恐怖による拘禁反応が残り、現実と妄想が入り交じる言葉をたびたび繰り返してきた完全な回復の見通しは立っていない。「自由を望む袴田さんをさいなむ拘禁反応の恐ろしさとは。(西田直晃)》。

   『●《いまも、死刑囚のまま》な袴田巖さん、再審開始決定…せめて
    《一刻も早く「無罪」とすべく、検察は不服を唱えるべきではない》
   『●袴田巖さん、袴田秀子さん ――― 《捜査機関による証拠捏造》とまで
     言われているのだ、検察側が特別抗告を断念するのも、当然の結果だろう
   『●袴田冤罪事件: 《「…第三者がみそ漬けにした可能性がある」》《捜査
      機関による証拠捏造》《犯行着衣について捜査機関の捏造とまで…》
   『●<コラム 筆洗>《高裁は捜査機関による証拠捏造の可能性まで踏み
     込んでいる…袴田さんをただ犯人にしたいという卑劣なトリックだろう》
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃ
     にした《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる
   『●事件から五十七年。無実を訴え続けても、なぜこんなに歳月を費やしたのか。
     刑事訴訟法の再審規定(再審法)が大きな欠陥を抱えつつ放置されているからだ
   『●袴田冤罪事件…袴田巖さんや袴田秀子さんらの人生をめちゃめちゃに
     した《捜査機関による証拠捏造》に対して責任ある対応が求められる

 (こちら特報部)《中島さんは言う。「拘禁反応をなくすことはできず、刑事施設での治療の充実、医療刑務所への移送などを柔軟に取り入れるべきだ個人的には、誤判を防げないのだから、取り返しの付かなくなる死刑はやめたほうがいいと思う」》。
 (冤罪だろうが知ったこっちゃない?)〝犯罪者〟・獄中者にならば、何をしてもいいのか? 入管法改正という名の改悪も同じだと思うんですよね。《これは人の命を奪いかねない法案であり、可決されれば私たちの社会は人を見殺すことに加担することになる》(リテラ)。

   『●「殺す側の論理」、ついには人の「死」にまで「自己責任論」を持ち
      出すようになったよ。あなたは「殺す側」に居るつもりらしいが…
   『●安田菜津紀さん《安倍政権とは何だったのか…「強きにすり寄り、弱き
     をへし折る政権」…「引き継がれた『膿』を出し切るのはこれから」》
   『●亡くなられてこの世に居ないウィシュマさんも、斎藤健法相同様、《自分
      がそういうことになれば、公開してほしくない》と思っただろうか?
   『●《坂本さんは…『声を上げる。上げ続ける。あきらめないで、がっかり
     しないで、根気よく。…』。本当にそう。勇気を出して諦めないで…》
   『●映画『主戦場』〝主演〟で言いたいことを言いまくる「妖怪の孫」の
     〝子供たち〟…「強きにすり寄り、弱きをへし折る政権」の継承が未だに…
   『●海渡雄一さん《組合について「政治犯がつくった組織だが、一般刑事犯と
     関わりながら、罪を犯した背景や社会復帰を考える場になっていた」》
   『●《…「常識」が削ぎ落とされた閉鎖空間に、司法の介在なく収容され、
     何度訴えても適切な医療が受けられないこと自体が拷問ではないか》

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/247402?rct=tokuhou

こちら特報部
幻覚、妄想…「拘禁反応」の恐ろしさとは? 袴田事件で浮き彫りに 再審無罪ならば回復するのか
2023年5月2日 17時00分

 東京高裁での再審開始決定を受け、早期の無罪の宣告を待ちわびる死刑囚の袴田巖さん(87)。長期の収監や死刑の恐怖による拘禁反応が残り、現実と妄想が入り交じる言葉をたびたび繰り返してきた完全な回復の見通しは立っていない。「自由を望む袴田さんをさいなむ拘禁反応の恐ろしさとは。(西田直晃

     (袴田巌さん、姉ひで子さん=3月、静岡市で)


◆「死刑囚」の呼称は外れるが

 「頑張ろうという闘いでございます」

 3月下旬、再審開始決定が出た翌日の静岡市での報告集会。マイクを握った袴田さんは自ら来場者に語り掛けた。再審公判で無罪判決が確定すれば、43年もの間、背負い続けてきた「死刑囚」の呼称はようやく外れる。とはいえ、支援者の山崎俊樹さん(69)によると、現状を理解しているかは定かでないという。

 袴田さんは2014年3月に静岡地裁が拘置の停止を決定し、釈放された後、浜松市内で姉ひで子さん(90)とともに暮らしてきた。釈放当初から今に至るまで、会話もほとんど成り立たない。「袴田事件は存在しない」「裁判は終わった」といった事実とずれた発言が今も続く。

 袴田さんの症状は、刑事施設などへの収容によって、幻覚、妄想、興奮、混迷、的外れな応答などが生じる拘禁反応とみられる。


◆数日で消えるはずが慢性化

 再審開始を決めた東京高裁に弁護団が証拠として提出した報告書によると、袴田さんは歯痛や腰痛、発熱などの不調を外部からの攻撃と捉えがちという。男性への警戒心が特に強く、「男は殺し合いを始める」などと発言する場面も。07年に東京拘置所で面会し、釈放時の主治医を務めた精神科医中島直(なおし)さん(57)は「袴田さんの特徴は、拘禁反応の慢性化。拘禁状態では、誰もが程度の差こそあれ発症するが、多くは数日で消える」と語る。

 中島さんによると、袴田さんの場合、1980年の死刑確定以降に「激しい興奮を示すことがあり、食事や排せつ物を用いたいたずら、面会の拒否、『悪いやつが電波を出している』などの妄言が目立ち始めた」と説明する。面会の翌年、中島さんは拘置所の記録や手紙、接見した所見から、死刑に適応できず、医療刑務所や精神科病院への移送が必要とする意見書を書いた。

 誇大妄想を抱き、自分の置かれた状況、自分自身の氏名さえ認めなかった。今は激しい興奮やいたずらはなくなったが、会話が成立しないのは、「袴田さんの中では状況を『知りたい』『知りたくない』という二つの意思が交錯し、対立しており、ずれた応答が返ってくるからだ」。

 さらに「慢性化した要因には、死刑の恐怖プラスアルファがありそうだ」とみる。「収監中に経験した母の死、他の確定死刑囚に再審無罪が出たのに『次は自分が』という期待が実らず、収容が長期化した点もあるかもしれない」と推測する。


◆快方に向かうのか

 今後、快方に向かう可能性はあるのか。今年1月に死去した作家・精神科医の加賀乙彦(おとひこ)さんは、講演会などで「無罪判決が出たら、病気は治ると思われる」との見方を示した。

 しかし、中島さんは「可能性がある、としか言えない」と話す。「釈放後、淡い期待を持ったが、回復は難しかった。ただし、『死刑囚』という立場が無罪判決で変われば、何らかの影響を与えるかもしれない」。先月、浜松市で会った際には「拘禁反応は相変わらずだが、少しだけ表情がやわらぎ、ゆとりを感じた」という。

 中島さんは言う。「拘禁反応をなくすことはできず、刑事施設での治療の充実、医療刑務所への移送などを柔軟に取り入れるべきだ個人的には、誤判を防げないのだから、取り返しの付かなくなる死刑はやめたほうがいいと思う


【関連記事】袴田さん再審確定 追い詰められた検察、高裁の緻密な認定覆す余地はなく…
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