阿部ブログ

日々思うこと

正月にレオ・シュトラウスの『自然権の歴史』を読む

2016年01月02日 | 雑感
ペイパル(PayPal)マフィアの一人であるイーロン・マスクがCEOを務めるSpaceXが、再利用可能なFalcon9ロケットで商用通信衛星の打ち上げを行った。画期的なのは、再利用可能と謳っているいるように、打ち上げた第1段のロケットを発射完了後に、逆噴射させ無事着陸させる事に成功している。
第1段目のロケットを回収できれば、打ち上げコストの削減に大きく貢献する。SpaceXは、既に米空軍の打ち上げ承認を昨年5月に得ている。今後は偵察衛星、通信傍受衛星、第三世代のGPS衛星などの打ち上げて活躍するだろう。

さて、ペイパルマフィアとはどのような人達か?
1998年に起業したPayPalは、オンラインでの決済サービスを提供する会社だった。しかし2002年、eBayにより15億ドルで買収され、創業時のメンバーが流出した。
その彼らが立ち上げた企業が、動画サイトYpuTube、Linkedin、Yelp!、Yammer、Palantir Technologiesであり、前述のイーロン・マスクはSpaceXの他に、テスラ・モーターズの創業者である。これらの企業は、ペイパル文化を共有しており「ペイパル・マフィア」と呼ばれ、投資家やIT界に大きな影響力を有するに至っている。
このペイパルマフィアの親分がピーター・ティールである。彼が会長を努めるPalantir Technologiesは、CIAのベンチャー投資企業であるIn-Q-Telなどが投資するサイバーセキュリティ企業である。

※過去ブログ:「CIAのベンチャー「In-Q-Tel」(インキュテール社)

ピーター・ティールは、プランクフルト出身のドイツ人だが、深くアメリカのネオ・コンサバティブの思想に魅了されている人物である。2012年のフランシス・フクヤマとの対談において「レオ・シュトラウスの思想は、極めて重要であり、深淵である」と発言している。レオ・シュトラウスは自然法の信望しており『自然権の歴史』(ちくま学芸文庫)ではジョン・ロックなどの自然権を批判している。シュトラウスによれば、ロックが唱える自然権は本来の自然権から乖離していると批判している。
同書は、のっけから容赦ない。
「歴史の名においてなされる自然権への攻撃は、大抵の場合、次のようなかたちをとる。すなわち、自然権は人間理性によって識別され普遍的に承認される権利であることを主張するが、しかし歴史(人類学も含めて)の教えによれば、そのような権利は存在せず、想定されている一様性のかわりに我々が見出すのは、権利や正義についての無限に多様な観念である」・・・云々。
冷静に観れば、本当の平等など人類に存在した事はないし、これからもどうやらなさそうだと言うことだ。観念的には分かるが、現実の人間界はそうでないことは万人が知るところだ。
ロックの『統治二論』を読めば、それなりに彼の主張に首肯する向きも多いだろう。それもそうだ日本国憲法に書かれている基本的人権などを当たり前に受け入れている日本人であれば、そのように勘違いするだろうし、自然法の概念は、今の我々には理解できないだろう。悲しい哉、自民党の憲法草案を見ても、彼らが憲法のなんたるかを理解していない事を如実に示している。結局、日本に憲法は要らないのだ。憲法9条やら砂川裁判の茶番やら、憲法が有るが故の矛盾は社会を大きく歪ませる要因となっている。それと安保だ。憲法と安保という戦後の統治矛盾の根本原因は、大元帥裕仁閣下にある。

シュトラウスが信望する自然法とは『人間が自然状態に生きているか市民的社会に生きているかに関わりなく、人間たる限りでの人間に完全な義務を課す。「自然法はすべての人間に対して永遠の規則として存立している」、なぜならそれは「すべての理性的被造物にとって平明で理解できるもの」だからである』と書いている。そして『自然法とは神の意志の表明である。それは人間の内なる「神の声」である。それゆえ、それは「神の法」とか「神法」とか「永遠法」とさえ呼ばれうる。それは「至高の法」である』(出典:「自然権の歴史」ちくま学芸文庫p270-p271)
成る程、正統なユダヤ教徒の家に育ち、若くしては政治的シオニズム運動に参加した人であり、またユダヤ神秘思想に沈潜した人の言葉だ。

さて、今度は、シュトラウスの『哲学者マキャベリ』と濱野靖一郎の『頼山陽の思想』を読む事にした。

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