阿部ブログ

日々思うこと

米国大統領選挙におけるSNSの利用

2012年07月03日 | 日記
米国大統領選挙においては、従来からCRMシステムやデータマイニング技術を駆使したターゲット向けに最適の選挙キャンペーンが展開されてきた。
2004年以降は、インターネットを活用した選挙戦略が注目を浴び、2008年のオバマ 対 マケインの大統領選挙戦においてオバマ陣営はインターネットを全面的に利用して選挙戦を展開した。

その結果は、オバマ陣営のサイト訪問者230万人。マケインは56万人。オンライン画像広告数においては、オバマ1億565インプレッションに達しているのに対し、マケインは855万に過ぎなかった。

オバマ陣営のインターネット戦略で顕著なのは、Facebook やMySpace などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)や、YouTube、Twitter などのウェブツールを効果的に多用した点である。オバマ氏のFacebook の「サポーター」の数はこれまでに100 万人を超え、MySpace の「フレンド」の数も40万人と、マケイン氏(Facebook のサポーター約15 万人、MySpace の「フレンド」約56000人)と桁数の集客を達成している。また、オバマ氏のYouTube のチャンネルには1100のビデオがあり、合計で約5340万回以上視聴されており、これまたマケイン氏(ビデオ数208、視聴370万回)を大きくリードした。

このインターネットを通じた情報発信は、オバマ政権発足後も健在であり更に積極的に活用している。政権移行時も「Change.gov」と言う政権移行チームの専用サイトを立ち上げでいる。「Change.gov」を担当したマコン・フィリップス(Macon Philips)氏が引き続き「Whitehouse.gov」を担当しており、従来のHPに加えFacebookやTwitter,Myspaceにもホワイトハウスの公式サイトを立ち上げるなど積極的なインターネット利用を推進している。この影響は連邦政府機関にも影響を与えており、FacebookやTwitterなどの利用が拡大している。

オバマ大統領は選挙戦中、Twitterを多用した。約1時間後に演説をするのでCNNでライブで見てね~」とか、「今日は○○でタウンホールミーティングを13時から開催するのでライブ映像を見てね」などというメッセージとともにリンクを貼り付けて多数の有権者を自キャンペーン・サイトに誘導した事は有名。

このようなSNSを効果的に活用しインターネットを介しての支援者による活動の輪を広げているのにはFacebook の創始者クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏の存在が大きい。ヒューズ氏は、2007年Facebookを退社してオバマ陣営のネットキャンペーンに携わっている。

オバマは、Facebook、Myspace、Twitter以外にもFlickr、Digg、Eventful、Linkedin、Blackplanet、Faithbase、Eons、Glee、MiGente、MyBatanga、AsianAve、DNCPartybuilder などでプロフィールを公開し、自身への支援を呼びかけ、勿論これら様々なSNSは全てオバマのキャンペーンサイトにされている。

オープンガバメント(Open Govermment)

2012年07月03日 | 日記

オープンガバメントとは、透明でオープンな政府を実現するための政策とその背景となる概念のことで、オバマ大統領が就任直後の2009年1月21日に公表した大統領メモ『Memorandum on Transparency and Open Govermment』の中で、より一層開かれた政府を目指すために、
 ①「政府・政策・情報の透明性(transparency)」
 ②「市民参加(participation)」
 ③「政府内および官民の連携(collaboration)」の3原則を示した。
現在、この原則に基づき、米国連邦政府機関では、様々な取り組みが行われており、オープンガバメント政策について概要を解説する。

1.大統領メモ『Transparency and Open Government』
『Memorandum on Tranparency and Open Government』は、当時まだ指名されていなかった最高技術責任者(Chief of Technology Officer:CTO)は、OMB(Office of Management and Budget)とGSA(General Services Administration)の協力を得つつ各省庁と連携し120日内に「オープンガバメント指令」(Open Government Directive)の起案に関する提言を行なうよう要求している。

オバマ大統領は公約として米国連邦政府を21世紀仕様にする事を目的として連邦政府初のCTO職を新たに設け、各省庁のCTO、CIO(Chief Information Officer)と連携し連邦政府の情報システム及びネットワークの安全性を確保し、省庁間の取組を先導し、最高レベルの技術の利用とプラクティスの共有を図るとしている。

2.オープンガバメント・イニシアティブ
「オープンガバメント指令」を受けて「オープンガバメント的に」広く国民の意見を積極的に聴取し取入れることを目標として「オープンガバメント・イニシアティブ(Open Government Initiative)」の取組を発表し、3つのフェーズに分けて専用Webサイトよりオープンガバメント政策についての意見や提言の募集が行なわれた。

 ①ブレインストーミング・・・2009年5月21日~5月29日
 ②討議期間・・・・・・・・・2009年6月3日スタート
 ③草稿期間・・・・・・・・・2009年6月24日~7月6日

オープンガバメント・イニシアティブについては、賛否両論あるものの概ね良好な評価が多い。
この提言等を受けて連邦政府は情報公開・透明性の確保を目的とした下記のような各種サイトが立上がっている。

(1)Data.gov  (2)Recovery.gov   (3)IT Dashboard (4)DoDTechipedia (5)Regulations.gov (6)Open for Questions
(7)HelthReform.gov (8)Peer to Patent (9)Idea Factory (10)Science Integrity Brog (11)Aristotle (12)Development2.0 Challenge

3.オープンガバメント指令の概要

本指令では連邦政府機関に次の行動を求める。

(1)政府の情報をオンラインで公開する。
・オープンなフォーマットでオンライン上で国民がアクセス可能な情報を拡大すること。オープンなフォーマットにより、情報の二次利用(reuse)を妨げる制約をなくすこと。
・各政府機関は受身ではなく、積極的に(proactively)最新のテクノロジーを活用すること。
・各政府機関は45日以内に、尐なくとも3つの有用なデータセットをオープンフォーマットにてData.gov上で公開すること。
・各政府機関は60日以内に、オープンガバメントウェブサイトを構築すること。このサイトは各機関のオープンガバメントの玄関となるようにすること。
・オープンガバメントウェブサイトは、フィードバックや評価(assessment)の機能を備えること。公開された情報の優先順位付けに資するインプットを提供すること。また、各機関のオープンガバメントプランについてのインプットを提供すること。

(2)政府の情報の質を高める。
・各政府機関はOMBの助言のもと、45日以内に、情報の質と客観性(objectivity)に責任をもつ高官(high level senior official)を指名すること。
・OMBは60日以内に、連邦政府の支出に関する情報の質に関するフレームワークをガイドライン等のかたちで公表する。
・OMBは120日以内に、連邦政府の支出の透明性に関する長期の包括的な戦略を公表する。

(3)オープンガバメントのカルチャーを構築し制度化する。
・各政府機関は120日以内に、オープンガバメントプランを各機関のオープンガバメントウェブサイト上で公開すること。
・連邦政府CIOとCTOは60日以内に、オープンガバメントダッシュボードを構築する。このダッシュボードでは各機関のデータを集計するとともに、オープンガバメントの進捗についてビジュアル化する。
・OMBならびに連邦政府CIO、CTOは45日以内に、ワーキンググループを設置する。このワーキングでは、透明性向上に関するイノベーティブなアイディアに基づいたベストプラクティス、各取り組みの調整、国民参加や協業に関するイノベーティブなアイディアに基づいたベストプラクティス(新しい技術の活用方法やそうした技術の政府内外への示唆の抽出を含む)などを取り扱う。

(4)オープンガバメントのために実現可能な政策フレームワークを構築する。
・OIRA(Office of Information and Regulatory)は120日以内に、OMBの政策についてレビューすること。

4.透明性を高める取組 その1“Data.gov
「Data.gov」が挙げられます。これは行政管理予算局(OMB)が提供するサイトで、連邦政府機関が保有する国勢、環境、経済状況などの各種データセットを提供します。
従来の情報公開との違いは、単に統計情報として集計結果を公表するだけではなく、生データやツール、及び地理情報を提供することで、利用者は加工や分析が容易に行える点です。
「Data.gov」では、国勢(人口統計、犯罪統計など)、環境(有害化学物質排出目録、地質・地理など地理空間情報、経済(社会保険給付金、消費者支出データ、利率の推移)など連邦政府が保有するデータを提供している。
地理空間情報については、米国地質研究所が保有する150万枚の航空写真や850万枚の衛星写真の検索とダウンロードが出来るなど莫大なデータの提供が無料で行なわれている。

5.透明性を高める取組 その2“IT Dashboard
行政管理予算局(OMB)は、毎年連邦政府のIT関連予算を取り纏めて発表している。米国連邦政府のIT関連費用は、 2008年度728億ドル、2009年度742億ドル、2010年度(要求)784億ドルと巨額である。このIT関連費用の詳細と進捗などの情報を提供する事を目的として連邦CIOの Kundra氏が、2009年6月30日、Federal IT Dashboardを発表した。
サイト開設から1ヶ月半で2000万件のアクセスがあった報道されている。

(1)IT Dashboardは、一般の市民が連邦政府のITに対する投資の詳細を見ることのできるオンライン窓口で、国民は政府のIT投資の状況を追跡することができ、効率的な予算執行が行なわれているかを監視することが可能。
(2)IT Dashboardは行政管理予算局(OMB)に直属している官庁から得たデータを公表している。データは、7,000件を超える連邦政府のIT投資に関する一般情報と、そのうち各連邦政府機関が「重要」と分類している約800のIT投資の詳細情報を掲載している。
(3)連邦政府各省庁の800の重要IT投資についてはそれぞれのCIOがデータを月次で評価し、更新する義務を負っている。
(4)IT DashboardにおけるIT予算の評価軸は、コスト、スケジュール、CIOによる評価の3本柱である。(総合評価はそれぞれ1/3ずつのウェイト)
(5)CIO は5つの評価要素(リスク管理、要件管理、請負業者の監督、過去の業績、人的資本)について自己の最良の判断に基づき評価する。
(6)CIO 評価は各評価項目のリスクについて5段階で評価する。評価は、投資が続いている限り月1回の頻度で更新される。
既にIT Dashboardを活用した予算の見直しなどの実例がある。また、今後XMLでの提供や、ユーザーからのフィードバック機能の強化などを図る予定である。

米国大統領選挙におけるIT利用

2012年07月03日 | 日記

米国大統領選挙戦史上初めてとなるケネディ、ニクソン両候補によるテレビでの公開討論が放映され、これ以降テレビ、ラヂオを中心としたメディアが選挙の重きを成した。それまではボランティアなどによる戸別訪問が中心であった。

ケネディが43歳の若さで大統領に当選したあとの大統領選挙はテレビやラジオを介した全米でのマス・マーケティング的な様々なキャンペーンがメインとなった。但し、選挙広告のメッセージは、多様な人種で構成される米国にあっては、中流白人層やマイノリティ、低所得者層などの人口構成ごとに的を絞った為、メッセージ内容が画一的であり有権者への訴求力に欠け投票率も低迷していた。

その後、選挙戦に勝利する為には、やはり有権者一人一人に訴求できる手法が必要である事が再認識され、インターネットやPC、携帯電話などのパーソナルな情報機器の普及により有権者個々人に訴求可能な環境が整うと共和・民主両陣営は支持票の確保と浮動票の効果的な取り込みのために有権者のデータを収集・蓄積する、ある種の選挙用CRMシステムの整備導入が行なわれた。この有権者のデータベース化とこれの戦略的活用については、共和党が民主党に先んじた。共和党は1990年代中頃から有権者データベースの構築に着手し、現在約1億6800万人分のデータを蓄積していると言われる。

このVaultと呼ばれる有権者データベースの整備と戦略的活用を推し進めたのは、ブッシュ大統領上級顧問を務めたカール・ローブ(Karl Rove)である。今まで彼が手がけた選挙は上下両院、地方選挙など40は優に超えると言われる。ブッシュの大統領選挙や中間選挙ではローブはその能力を遺憾なく発揮した。このカール・ローブが回顧録で語る選挙に勝つ為の8原則を掲載する。

(1)候補者の政治哲学や基本理念を反映させたグランド・デザインを前面に押し出す。
(2)有権者が今何を考えているのか、それに対し候補者のスタンスはどうなのか、その長所短所を掌握し、有権者が共鳴できそうなテーマを力強く、間断なく訴え続ける。
(3)選挙区のこれまでの投票動向や各党候補の獲得票パターンを徹底的に調べ上げる。
(4)潜在的支持者像を想定する。そのためには有権者の生活実態、例えば、選挙区の年齢層、乗っている車の種類、読んでいる新聞や雑誌、みるテレビ局、教会に行っているか否か、などを調べ上げる。
(5)対立候補に対する批判の限界をきちんとわきまえ、キャンペーン・スタッフに徹底させる。
(6)選挙には勝つための戦略的プランが不可欠であり、このプランを軸にした規律と統制を陣営内に確立させる。
(7)コンピューター・マニアだろうと、漫画オタクだろうと、来るものは拒まず、可能な限りありとあらゆる分野からのアイデアや知恵を収集、使えるものは使うこと。
(8)運動員は、候補者に関する知識と情報を完全掌握し、自信をもって候補者を売り込むこと。票を持ってきてくれるボランティアこそ「神様」であることを常日頃から心得ておくこと。

民主党は、2000年の大統領選挙戦敗北を受けて、遅ればせながら全国有権者データベース(DataMart)と呼ばれるシステムの構築を開始し、約300万ドルの資金を投じて2002年に完成させた。民主党で全米の有権者データベース化を主導したのは、政治コンサルタントのローリー・モスコウィッツ(Laurie Moskowitz)である。

モスコウィッツは、今後の大統領選挙戦で勝敗の鍵となるのは、如何にニッチ・マーケットへのキャンペーンを展開し有権者へ訴求するかがポイントであると主張している。例えば「ニューヨーク州のユダヤ系有権者の中産階級」、「カリフォルニア州のゲイの有権者層」、「バージニア州の未婚女性有権者層」、「フロリダ州のヒスパニック系の有権者層」など、きめ細かに仕訳・分類された多数の有権者グループ群に対し、それぞれの有権者層に訴求するカスタムメイドのアプローチ、キャンペーンを展開する事で組織票を動かすのと同様の効果を発揮すると主張している。

共和/民主両党の有権者データベースには、有権者登録情報と連邦政府が実施する最新の国勢調査の記録を基礎情報として、個々の有権者の人種、性別、住所、電話番号、誕生日、職業、家族構成、世帯収入、投票頻度や各党が保持している支持者・献金者のリストからの情報、選挙ボランティアなどの活動記録から得た個別情報、例えば購読している新聞や雑誌、所属している団体名称などや電子メールアドレスなどが登録されている。特に電子メールアドレスは、候補者が直接に有権者へのメッセージを伝達できる有力な手段であるため、電子メールアドレスの入手と特定は、非常に重要視される。

2004年の共和党ブッシュ対民主党ケリーの大統領選挙においては、既知の通りカール・ローブ氏が選挙全体を仕切ったブッシュ陣営であった。この大統領選挙で共和党は、600万人に上る電子メールアドレスを収集し、有利に選挙戦を展開したものとされる。