フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

規範再考中

2011-06-19 23:03:07 | research

ドライブから梅雨空が続いている。大学は今、図書館の増築工事の真っ最中で、去年までその脇の池のほとりに大きな紫陽花が咲いていたのだが、もはや池も紫陽花も消失している。写真は大学院横の紫陽花。光が射さないので、なんだか沈んでいる。


さて、言語管理研究の覚え書き:

Neustupný (1985)  Language norms in Australian-Japanese contact situations. In Clyne, M. (ed.) Australia, meeting place of languages. pp.161-170. Pacific Linguistics.には、言語規範の諸相が事例と共に検討されている。たとえば、62ページには次のような考察が見られる。


MF normally does not want her English to sound too Australian, and she pre-corrects her speech. However, she denied to have consciously used pre-correction within conversation 1.

It is a common experience that speakers pre-correct their English in certain categories of contact situations in order to present themselves in a particular way. The maintenance, expansion and the redirection of this ability is of great importance for language policy.


ここの事例は、MFという話し手が英語を使うときに、自分自身の表出を管理するためにその場のディスコースに入る前から事前調整をしているとあって、これはまさに接触場面に向かう管理の一例である。ただし、上の例ではそのような管理をしているにもかかわらず、収録した会話の中ではそうした管理をしなかったことがMFによって報告されているわけだ。当該場面のディスコース上の何らかの制約が管理をさせなかった要因になるのだろう。


同じ年に書かれた、Neustupný, J.V. (1985) Problems in Australian-Japanese contact situations. In Pride, J. B.(ed.), Cross-cultural encounters: communication and miscommunication. pp.44-84. Melbourne: River Seine.では、ディスコース上での言語管理に集中して事例が紹介されているのと、対照的。


また、上のような接触場面に向かう管理の焦点は調整に当てられている点にも注意が必要か。Fairbrotherの接触規範が母語話者の評価規範(母語場面と明らかに違う、接触場面特有の外国人に対する期待)であるのと、明瞭に区別する必要がある。

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