私のつれづれ草子

書き手はいささかネガティブです。
夢や希望、癒し、活力を求められる方の深入りはお薦めしません。

最小単位は人と人の関係に尽きる

2012-07-21 | 13侘ぶ寂ぶ哀しむ
ブランド製品にはまるで興味がないのだが、鞄に限っては長く安心して使ってきたヨーロッパのブランドがあった。

20年近く鞄が欲しい時には必ず覗いた当地のそのブランドショップが、この夏とうとう閉店という報せが届いた。

今日から10日間の閉店セール。
夕方、記念に何かしら買っておこうか…と覗いてみれば、もう棚の90%は空いている状態。
小物を含めて残っている商品は20~30点というところだったろうか。

セール初日だというのに、もうほぼ売り尽くした状態で、最終日まで営業はできないだろう。
しかも、店員さんの対応が恐ろしくあっさりとしている。

呆気にとられて店を後にしたが、長く親しんだ店舗の閉店に驚くほど淡淡としている自分がいた。

そのショップには、そのブランドの製品をこよなく愛する名物店長がいらした。
儲けにもならないのに「これじゃないと私駄目なんです!」と顧客の持ち込んだ使い込まれたバッグを、カウンターで自ら針と糸を持って修繕(お直し)されていた姿が記憶にやきついている。

二年前、その店長さんの姿が突然ショップに見えなくなった。
こんなご時世にちょうどデパートにも出店されていて、そちらへ?と思いきや、退社をされたということだった。

その店長さんがいなくなったことで、そのショップは既に独特の愛着を抱かせる店舗では無くなってしまっていたのだ。

ごくありふれた、ファッションビルにいがちな、ちょっと綺麗なお嬢さんがレジをうち、型どおりの対応をするフツーのブランドショップになってしまっていたから。

出店したデパートの店舗も当然のことながら既になく、実物を確かめてそのブランドの鞄を買うことはもうない。

あの名物店長さんが醸していた実店舗に独特の味わいは、もうなくなっているのだから。
実際、店舗に出向いて買い物をすることの意味はそこにこそあった。

もうネットの情報をたよりに、キーボード相手にお取り寄せすることで事足りる。
長く生活に馴染んだそのブランドの鞄を求めることは、残念ながらなくなってしまうような予感がある。
コメント
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