練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『白蛇教異端審問』 桐野夏生

2006-01-22 | 読書
私は作家とか俳優とかの私生活というかバックグラウンドとかいうものにあまり興味がなくて、プロフィールくらいは読んだりするけれど、その人が何歳かとか子どもがいるのかとか、極端な話男か女かということにも特別な興味はなくて、作品が面白ければそれでいいと思っていたけれど、桐野さんのこのエッセイ、というかいろんな散文を読んで、そういう情報によって作品の面白さもまた変わってくるかも、とも思い直した。

彼女は結婚していて娘さんもひとりいて、普段は主婦もやって習い事もしてそれなりの人付き合いがあって、という当たり前といえば当たり前の事実に私はかなりびっくりしてしまった。主婦とかをやっていると彼女の作品に表現されているようなどこか現実離れしたようなすごく鬱屈したようなストレスが爆発寸前のような世界というのにはまり込んで創作活動を行うというのは無理なんじゃないか、と思い込んでいたのだ。
昔の作家といえば、俗世間から隔離されたような世界で執筆に全人生を注ぎ込んで、変わり者と言われようが、その特殊な生活環境があってこそ芸術作品が生まれてくる、と言ったような印象があるが、そんな作家は今の時代いやしないのかも。

「私の死亡記事」という文章が印象に残っている。
失踪願望、桐野さんにもあるんだ・・・、と思って笑えてしまった。もしかしたら失踪願望がない女を探す方が難しかったりして。

「白蛇教・・・」という文章には桐野氏が個人的に受けた批判的文章とそれが匿名であったという事実に対して彼女が公の場でさらに批判を返していて、それが大問題となっていたという経緯その他が書かれている。そんなことになっていたとは私は全く知らずにいたのだが、表現者というものはいつでも言葉、文章、いろんな形での悪意がある、なしにかかわらず必ず批判を受ける立場になり得やすいということに改めて思いが及ぶ。断固戦う立場を崩さなかった桐野さんはすごい、と思うし、なんだかすごいパワーを感じてしまった。