練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『狂王の庭』 小池真理子

2006-01-17 | 読書
戦後の別荘地、国分寺の大邸宅に住まい、当時の日本にはまるでなじまないベルサイユ宮の庭を彷彿とさせる洋風の人工庭園を造成することに執心する、父の残した会社の社長の座におさまるが、まるでビジネスには興味がない、病的で精神を病んでいるかの印象を受ける美青年。そして、夫がいながら、また、彼が実の妹の婚約者であるにもかかわらず彼との恋愛にはまってゆく人妻。

メロドラマの香りがプンプンと漂う作品である。
結末はお決まりの悲劇。

『狂王の庭』を読んで、なんとはなしに平安時代の貴族の暮らしを連想してしまった。
お金はたっぷりある。朝も早くから起きだしてすることと言えば十二単の着付けに髪結い。男は働かない、戦いもない。恋の歌を読みふけり、逢瀬を楽しむ。
なんだか特権階級だけが許される特別のこと、という雰囲気で全く現実感が伴わないのだ。

この作品も現実感が伴わなくて、あんまり感情移入もできずに読み終わってしまった。
なにより不満が残ったのは、作品全体が主人公の死後発見された告白を実の娘が知るところになる、という設定であるにもかかわらず、ある意味、望まれて授かったわけではない、とその告白に書かれている当の娘が物語の全容を知った後、どのような思いを持ったのかが全く書かれていないことろだ。
そんな過去を知って平静でいられるわけがない、娘の心理。そちらの方がよほど物語としては興味があるのだが・・・。