Il film del sogno

現実逃避の夢日記

永遠の僕たち/幕末太陽傳/ミツコ感覚

2011-12-29 03:03:00 | 日記
12/28(水)晴れ
弁当を作るために普段より30分早く起床。鮮やかな手際でポークとたまごのサンドイッチを仕上げる。水商売の経験が生かされる瞬間である。御用納め、就業最終日である。午前中に雑務はやっつけ電話とメールで年末挨拶。午後は日比谷へ徒歩移動。シャンテ・シネでガス・ヴァン・サントの新作を鑑賞。まだ少年少女と呼びたくなるくらい純粋で繊細な男女の恋愛譚。ふたりのラブシーンは映画史に残るくらい美しい。柔らかい自然光を活かしたカメラと少しレトロなファッション、慎ましいサウンドトラックも素晴らしかった。粗野なイメージの聖林男優の息子に剋目したい。珠玉、という表現があるが本当に小さな美しいガラス細工のような作品でありました。ゴジラの銅像を見下ろしてカフェで一服後、新宿へ移動。テアトルでは日活創立100周年を記念した川島雄三の代表作をデジタル修復版として上映している。まぁ今更粗筋や感想は不要。何回観たことか、と日記を検索すると直近では2001年5月に再会している。以下、引用。
≪閑人散策して名画に再会す。先週金曜日、巣鴨駅を背に白山通りをぶらぶら歩いていると千石の辻で長い行列を発見。あたりはまさに黄昏せまる時分。吸い寄せられるように、そばに寄れば【川島雄三・乱調の美学】の垂れ幕。並んでた気の良さそうな若い衆に『演目は?』と問えば『居残り佐平次』ニヤリとして答える。『はぁ~品川心中・三枚起請ですね』『左様、皆好き者でげす』行列を顎でしゃくる。三百人劇場、川島雄三大特集(全40本だったそうな)最終日、棹尾を飾るのはやはりこの作品。観客に勤め人風ほぼ絶無、新劇の客層に近い(小屋は老舗劇団【昴】の本拠)が、意外や若年層多し。相も変わらぬ狭く堅い椅子に、観客すし詰めにして満員御礼。57年・日活製作、古典落語の数々(当然、郭【くるわ】もの)に材を取った快作。まあ歴代邦画のベスト10モノをやると必ずランクインする本編自体既に古典であるし、奇行奇癖の伝説を残して夭逝した鬼才の代表作であるから今更概容は不要。上記を含め『芝浜』や『お直し』なんてぇ噺を聴き返したくなる。何度観ても配役の豪華さと妙には唸る。主演・フランキー堺の動作と台詞廻しは軽妙洒脱にして粋の極、入神の演技。贔屓の左幸子、南田洋子がしたたかに板頭(お職遊女)を競い、けなげで親孝行な禿(かむろ)を芦川いづみ。裕次郎・旭、二谷英明、金子信雄、小沢昭一、菅井きん、山岡久乃、岡田真澄、皆々弾けております。どこが見所かと語り出したらきりがない。今回は細部の描写や小道具、音楽(黛敏郎)にも改めて感心。しかし、リズム・テンポも快適に全編をクスグリで繋いでいるが、根底に流れるのは、生きる事のやるせなさ、ある種のアイロニーだろう。そこが観る者の心に銘記される所以か。≫
ロビーでため息をついているとレイトショウの開始時間が迫る。スター不在、CM出身の監督による劇映画デビュー作だそうな。何気なくポスターを観て今年公開された数本の映画に強烈な印象を残した男優が出演しているので食指が動いた。まさにこれが大当たり。大筋は平凡な不倫を中心とした姉妹のお話であるが、演劇出身の手堅い配役とリアルな科白とどこか不条理を感じさせる独特な雰囲気がある。単館レイトで観客もまばらであるが、大都会にはこうした拾いモノがころがっている。新旧洋邦、光と陰を見上げて6時間。幸福な一日でありました。
コメント
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