静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

オードリー・タン氏の真骨頂!    外国語を使う表現では異文化自覚を忘れるな

2024-04-19 06:52:13 | 書評
◆ 【現代ビジネス】「私は保守的無政府主義者」…矛盾した言葉に隠された「混沌の時代」を生き抜くためのカギとは:オードリー・タン  抜粋
* 保守主義とアナキズム(無政府主義)は、水と油。そもそも相反するものだと考えられているから、「保守的アナキスト」という言葉が違和感をもたらすのでしょう。でも、私の定義は異なります。
  「保守的である」ことは、昔ながらの制度なり伝統なりを尊重するので、誰も犠牲になることがありません。ところが人間は進歩の名のもとに、短絡的な解決に走るソリューショニズムのような考え方に飛びつきがちです。
  すると、あるひとつの軸にもとづく進歩のために、しばしばそれ以外の文化を犠牲にしてしまいます。一つを選ぶために、そのほかを捨てる。これは私の言う「保守主義」ではありません。
   私が考える「保主主義」とは、社会が共通の価値観に合意すること。これが何よりも重要であり、異なる文化の多様かつ伝統的価値を犠牲にしてまで、進歩一辺倒であってはいけない
、ということです。

 私の言う「アナキズム」とは、高圧的行動に訴えることなく、変革に取り組む、ということ。暴力や権力で威圧できる、既得権益などを独占している、ただそれだけの理由で他者を従わせてはならない、ということです。
  だから私にとってのアナキズムは、爆弾を投げつけるたぐいの混乱ではありません。もしも「アナキスト」という言葉が過激に響くのであれば、「道教」と言い換えてもいい。私にとっては道教もアナキズムも同じものです。
  老子の思想も影響している道教の柱となる考え方は「安全な場所」をつくることです。その場所ではさまざまに異なる価値観が混然としていて、「何が正しいか」を押し付けられることがありません。強制のない世界。
  これが中心となる考えです。この発想があれば、いかなる多様な価値観、意見、文化があろうと、混沌を恐れることはないと考えています。


 ⇒ 世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才タン氏にはIT技術での貢献ばかり我々の目が行きがちだが<多様性の擁護><強制なき世界>の大切さを切々と訴えていることは
  知られていない。この言葉は、対岸の独裁強権統治国家への鮮明なメッセージであるばかりでなく、日本社会が秘める危険な病巣、即ち【多様性への嫌悪】【効率一辺倒からの意見集約】への
  警告にもなっている。ここを見逃してはならない


◇ 【Forbes Japan】中国企業によるパルワールド模倣は「誇り」 ポケットペア社長が言明 Paul Tassi 抜粋

* 人気ゲーム『Palworld / パルワールド』を開発したポケットペアの溝部拓郎社長が、同作のクローンを作ったテンセント(騰訊)などの中国企業を「非難」した──。
  海外ゲームメディアが掲載したこの見出しについて、溝部氏自身が異議を唱えている。これをIGNやInsider-Gamingなどの海外メディアが伝えた際、中国企業によるクローンを溝部氏が「accuse(非難)」したという表現を使ったからだ。

* この誤解が生じた理由には、オンラインで書かれた言葉を解釈するのが難しいことと、文化や言葉遣いの違いがある。
  「テンセントが早速パルワールドのクローンゲーム作ってる!」という文については、①最後の感嘆符に込められた感情は憤慨とも、興奮とも読むことができる。そして、②少なくとも米国では「クローン」には通常、侮辱的な意味がある。
  「予算規模はパルワールドの10倍の100億円級・・・」は事実を述べているだけではあるものの、自社よりもはるかに高い予算でパルワールドを模倣していることを嘆いているようにも思えるかもしれない。③「・・・」は通常、文章に異なる
  含みを持たせるために使われる。
④「大量にリリースされそう・・・」の「そう・・・」にも、嘆くような響きがある。また最後の⑤「すごい時代」は、米国人であればおそらく皮肉と読むだろう。

★ 溝部氏は純粋にわくわくした気持ちを表現したつもりだったが、言葉の選び方や語尾の感嘆符などが、二通りの意味で読めるものになっていた。だが各サイトはそのうち一方の意味を選び、「非難」という見出しで掲載したのだ。
  この報道は、多くの誤解が原因だった。このような問題が起きうるからこそ、誰かの発言を伝える際には通常、その意図について確認を取るものだ。ただ、私は各メディアを批判したいわけではない。溝部氏による説明がなければ、
  自分も同じように伝えてしまったかもしれない。
 ⇒ Tassi 氏が述懐するように、Native Speaker でない者が外国語で何かを伝えようとする際は、Native が読んで/聞いて誤解をもたないかを確認するのがMust。これは私も含め、重要な教訓だ。
  具体的に指摘されている「感嘆符」「Quotation Marks」などは言外のニュアンスを伝えるものだから、民族・文化が違うと誤解を招きがちなことは言うまでもないから慎重でなければいけない。
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