まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

スカルパ、建築と時のながれ

2019-05-05 18:58:04 | 建築・都市のこと Essay

ムスタファヴィ、レザヴォロが書き、黒石いずみさんが訳された『時間の中の建築』(鹿島出版会1999)を再読してみました。数年前に読みましたが、正直その時にはこの本の意義を十分理解していませんでした。最近加藤耕一さんの『時がつくる建築 リノベーションの西洋建築史』を読んで、その面白さに引き込まれましたが、そこで紹介されている『時間の中の建築』をもう一度読みたいと思ったわけです。

 建築家の「作品」は時間の中で劣化していきますが、視点を変えれば時間とともに時間を味方にして風景になじんでいく建築(のありかた)もあるはずです。白く純粋な完結した作品としてのモダニズム建築が多くつくられていた20世紀の中盤においてカルロスカルパは「時間あるいは風化を味方にした」「作品」を残しています。『時間の中の建築』ではブリオンヴェガが取り上げられています。

 ここでいったん本の内容と離れます。ブリオンヴェガはスカルパの世界が思う存分表現されています。

特徴的な造形要素は各所にみられるギザギザあるいは小さな幾何学要素の組み合わされたデザインです。このギザギザはスカルパのあらゆる作品に登場しますが、そのモチーフの一つとなっているのが水の流れや満ち引きへの対応だと思います。

 

ブリオンヴェガは水が建物の回りに張られていてそのことがよくわかりますが、もちろん水とは直接関係ない部分にもこのモチーフが登場します。

ギザギザを構成する溝が水を導くものであることは下の写真でも良くわかります。

実際に水みちとなるかどうかは別にして、そのディテールに水の流れが関係しているのは間違いないところだと思います。

ここで再び本の話に戻ります。私は全く知りませんでしたし、ブリオンヴェガを駆け足で見学したときにも気づきませんでしたが、スカルパは壁を伝う雨水によってできる汚れを壁面のデザイン要素に取り込んでいるのです。

確かに、雨水の線がコンクリート打ち放しの外壁に時の流れを刻み込んでいます。

汚れやシミは、白い箱のインターナショナルスタイルといわれたモダニズム建築では嫌われたわけですが、スカルパは既にこのころから時間とともに美しくウェザリングしていくことを考えていたのでしょう。彼が関わったヴェローナのカステルベッキオの持つ歴史的意義については『時がつくる建築』に詳しく解説されていましたが、モダニズムの建築の「時をとめよう」という願望とは違う思いをもってスカルパは建築に携わっていたのでしょう。

いろいろ考えさせられる二冊の本、そしてスカルパ建築でした。

<補遺>

『時間の中の建築』では、雨の流れを表現した建築としてヴェローナ銀行も紹介されていました。

確かにそういう目で見ると雨の道のデザインです。

The book Architecture in Time: Survival of Buildings through history and social Change was very interesting. I realized again that modern architecture does not like weathering, because an architectural work of modern architect is most beautiful at the moment when it is just built,although every building can not keep itself from aging. An author asks us if a building designed by an architect is his own work like a sculpture by an artist. 

While I have been engaged in some renovation projects recently, I came to think about the authenticity of architectural works and originality of architect. This book helps me think about things above and reconsider what is modern architecture I have been involved in.

高谷時彦

建築・都市デザイン

設計計画高谷時彦事務所/東京

東北公益文科大学大学院/鶴岡

Tokihiko Takatani

architect/professor

Tokihiko Takatani Studio. Tokyo

Graduate School of Tohoku Koeki University. Tsuruoka City Yamagata

 

 

 

 

 

 

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