東北本線須賀川駅で初めて下車。図書館へ向かいます。
中心部の商店街?にあるんですね。1万3000㎡ある大型施設ですが、町のスケールに溶け込んでいます。
この建物を紹介するのには、この模型が一番分かり易そうです。
ちょっと分厚いスラブが少しずつずれながら重なり、5層の内部空間と、外部テラスをつくっています。これの構成が全体を形作っています。
スラブがずれているので、上部にスラブがないところは吹き抜けになります。
その吹き抜けの中に浮かんでいるスラブ同士を、ランプや階段がつなぎます。
こんな感じで。
いろんなところで、上部と下部の吹き抜けが現れます。楽しいですね。
外部もいろんなところから顔を出します。すき間だらけの建築なのです。
図書館だけでなくイベントホール等市民活動施設も組み込まれています。
まとまったテラスもあります。
スラブが自由?にずれていろいろな面白い上下関係や、内外の関係をつくり出しています。その結果、従来の図書館にはない、自由な雰囲気が生まれます。また吹き抜けに十分な光が入ることで、ちょうど屋根のある広場のような雰囲気が生まれています。「広場」という感覚は、いろんなところでいろんな活動をしている様子が見えるからかもしれません。
うまくいろいろなものを複合させ、かつ窮屈ではない、気楽に滞在できる雰囲気をうまくつくっていると感心します。もちろん本の盗難防止装置BDSは目立たない位置に置いています。図書館の入り口に、BDSや係員のいるカウンターが並んでいると図書館利用になれていない人にとって、心理的なバリアー、あるいは「関所」になる可能性があります。カウンターは人の出入りをチェックするのではなく、利用者が相談したいときに訪れる場所と考えるのがよさそうです。また事務室も少し奥まった位置に置かれ、同時に開放的であるといううまい作り方をしています。決して、来館者を監視するような雰囲気にならないように配慮しているのです。
いろいろ恵まれている条件もあったのだと思います。まず床面積にゆとりがあります。本の置き場所もいろいろな場所に設定されていますが、図書館側の理解もあったのでしょう。またこれだけ吹き抜けが大きいと空調換気設備や区画関係の防火設備など、初期投資および維持管理費も大きいでしょうが、そのあたりも理解があるのだと思います。建築設計の条件、プログラムを設定した方々がきちんとしたポリシーを持っていたのでしょう。
いずれにせよ、町の中に、非常に愉しい市民の居場所ができたように思います。屋根のある広場タイプの図書館として、きちんと記憶しておきたいものです。図書館コンサルタントであり、新しいタイプの図書館づくりに携わるアントネッラ・アンニョリが言うように「図書館が本のためというよりも人のために構想された場所に姿を変えた」※一例ではないでしょうか。
※「新しい社会の鏡としての図書館」、小篠隆生・小松尚2018『「地区の家」と「屋根のある広場」』鹿島出版会pp206-209
高谷時彦
建築・都市デザイン
Tokihiko TAKATANI
architecture/urban design
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