落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

お嫁サンバ in NY

2008年07月21日 | movie
『幸せのアレンジ』

正統派ユダヤ教徒のラヘル(ゾエ・リスター・ジョーンズ)とイスラム教徒のナシーラ(フランシス・ベンハモー)は同じ小学校の新任教師。
信仰も人種も違うが同世代のふたりはすぐに仲良くなり、互いの家を訪問したり悩みを打ち明けあったりする親友になる。とくにふたりを悩ませているのが結婚問題。ラヘルにはお見合い結婚が、ナシーラには親同士が選んだ許婚との婚約が迫っていた・・・。

人種の坩堝といわれるブルックリンを舞台にしたマリッジ・コメディ。
なにかと偏見でとらえられがちなユダヤ教徒とイスラム教徒を主人公にしているが物語に重さはなく、あくまでも若い女の子らしい迷いや悩みを甘く爽やかに描いている。観ていてとても気持ちのいい楽しいお話。
敵対するといわれるふたつの宗教だが、イスラム教はもともとユダヤ教から派生した宗教なので考え方や習慣には非常に似た部分がたくさんある。たとえば既婚女性のベールのかぶり方、男性がかぶる帽子の形、ヒゲをたくわえる習慣、徹底した男尊女卑思想と家父長制など、無知を承知でいわせてもらうなら、わざわざべつべつに別れた割りにはあんまし変わってないじゃんと思わせられる。

ラヘルとナシーラの校長(Marcia Jean Kurtz)はふたりの厳格な信仰に基づく習慣を「古くさい」といって批難するし、ラヘルの従姉リア(Alysia Reiner)も一族から離れた自由な生き方の価値を説く。おそらく当事者以外の人間にとっては彼女たちの意見の方が安易に受け入れやすいだろう。だが伝統的な価値観には伝統となっただけの意味があるし、その意味にこそ自らの道を見いだす人間にも自由はある。古くさくたって規則が多くたって、それですべてを無意味と決めつけるのも偏見である。
そういう微妙にややこしいメッセージを、実にあっさりとわかりやすく描いた良い映画です。観れてよかった。
あと男性出演者がけっこうかっこよくてステキな人が多かった(笑)のも嬉しい。ぐりが気に入ったのはナシーラの父を演じたLaith Nakliと、インテリ眼鏡男子ギデオン役のJason Liebman。また何かで観る機会があればいいけど。

それと個人的に、ユダヤ教徒のお見合いシステムには意外な懐かしさを覚えてにやりとしてしまった。
実は在日コリアンにも似た習慣があり、劇中でペギー・ゴームリーが演じたミリアムのような“結婚コーディネーター”も実在する。ただしユダヤ教徒と同じように在日コリアンにもシリアスなのとそうでないのとがいるから全員がそういうお見合いで結婚するわけではないが、家庭によってはコリアン同士でなければ結婚が許されないというケースもある。中にはお見合い相手をわざわざ本国から呼んで結婚させる親もいるそうだ。いったい何時代の話だとずっと思ってたけど、アメリカでもおんなじよーなことやってる人たちがいるのねー、と思うとなんかおかしかったです。

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