落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

This Bird Has Flown

2010年12月14日 | movie
『ノルウェイの森』

親友キズキ(高良健吾)を自殺で喪った僕(松山ケンイチ)は大学進学のために上京、偶然キズキの恋人だった直子(菊地凛子)と再会し、やがて心惹かれるようになる。
だがキズキを亡くした悲しみから彼女の心は壊れ始め、ついには京都の療養所に入院。報われぬ想いを抱えた僕の前に、緑(水原希子)という美しい少女が現れ・・・。
村上春樹の同名小説を刊行23年を経てついに映画化。

ぐりはこの原作を刊行当時10代で読んで以後何度読み返したかも覚えてないくらい読み込んでるし、だから今更思い入れも何もないわけで、映画化されたからって原作と比べたりする気は毛頭ないですけども。
ぶっちゃけまったく期待もしてなかったです。トラン・アン・ユンは好きだし、撮影監督が李屏賓(リー・ピンビン)ってのもナニゲにテンションあがるしね。でもやっぱり映画は映画、小説とは違うものだから。
しかし結論からいえば、この映画好きか?と聞かれれば、答えはノーだ。人にお勧めできるような映画だとも思わない。
そんなにひどい映画じゃないと思う。けど傑作ではない。そこは間違いない。観て損するような映画じゃない。ただ、観なくても損する映画でもない。
それ以上でも以下でもない。映画として決して印象的な作品ではないってことです。

トラン・アン・ユン独特の映像は確かに綺麗だけど、李屏賓の美しいカメラワークが活かされてるとはとても思えなかったし、全体にモノローグや音楽がうるさすぎて落ち着いて観ていられないトーンになってしまっているのがまず気になった。
原作が原稿用紙900枚強という長編なので、どうしてもダイジェスト的になってしまうのはある程度仕方がないとは思うけど、それにしても要素盛り過ぎで場面展開がやたらバタバタするのがいただけない。これでは監督がいったい原作の何を大事にしたかったのかが伝わらないではないか。恋愛を描きたかったのなら、周辺人物は全部切って僕と直子と緑の物語に絞ったってよかったはずだ。永沢(玉山鉄二)とハツミ(初音映莉子)のエピソードなんか何のために出て来たのか完全に意味不明だし、突撃隊(柄本時生)なんかもっといらなかった。学生運動も物語に何の関係もない。
そういう枝葉末子にこだわるくらいなら、もっとディテールの再現に気を使ってほしかったとも思う。緑やレイコ(霧島れいか)の人物造形や、僕が直子のために用意した新居(ロケ場所がよりにもよって奥野ビルってどーよ)などの情景描写はどう見ても手抜きとしか思えない。ぐりは原作を知って映画を観た観客だけど、小説を読まずにこの映画を観た人のいったい何人が原作を手に取るものなのか、非常に気になる。

原作に忠実な台詞まわしにこだわった松ケンは悪くなかった。ただしこの主人公を演じるにはいささかかっこよすぎると思うけどね。
ぐりがあえて原作と比べて違うところをあげるとしたら、松ケンも含めて全体的に小綺麗すぎるってとこかな。個人的にはあの小説はこんなにスタイリッシュな世界観じゃなかったと思うので。もっとモタモタしてるとゆーか、不器用とゆーか、そういうみっともなさも味だったハズ。これじゃ『ノルウェイの森』を下敷きにしたPVみたいだよ。ぐりがいちばんムリなジャンルの映画になっちゃった。あーあ。トラン・アン・ユンよどこへ行く。
しかもこれだけ話題の作品なのに、興行成績ランキングでは初登場3位ってとこがしょっぱいよなー。いいのか村上春樹サン・・・。

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2 コメント

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Unknown (まるま)
2010-12-15 15:05:26
トラン・アン・ユンよどこへ行く、ですか……。小綺麗すぎるのも気になります。でも李屏賓のカメラワークを観たいのと、奥野ビルがどう映っているのか興味津々なので観てみます。
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Unknown (ぐり)
2011-03-20 09:48:49
まるまさん

永らくレスしなくてすみません。
地震大丈夫でしたか?
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