落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

内蒙古→テキサス→メキシコ→香港→長洲島

2005年10月25日 | movie
『メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬』
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上映前に監督/主演のトミー・リー・ジョーンズ氏の舞台挨拶があり、その後監督も会場で一緒に上映を観ました。こういう映画祭って会場にゲストがいてもいなくても上映後は大体拍手が起きるんだけど、今回はエンドロールの最初に拍手、エンドロールが終わってまた拍手、ジョーンズ氏が退場するときはなんと観客全員でスタンディング・オべーション。ぐりは記憶にある限りナマでスタンディング・オべーションを経験したことはないし、それも自分で立って拍手したくなるほど感動するってこともまぁそれほどしょっちゅうあるもんじゃない。ですよね?
でもこの映画はまったく文字通り「拍手喝采」に相応しい傑作でした。感動したよ。てゆーかめっちゃ泣けた。
物語の舞台はテキサスとメキシコ。タイトル通り、メルキアデス・エストラーダという男が死んで、数奇な運命のもと3度埋葬される過程を描いている。ぐりはハリウッド映画には詳しくないんだけど、たぶんここまで説明の少ない映画はハリウッドでは珍しい方ではないだろうか。だから最初は人物の相関関係や前後する時制がなかなかつかみづらい。しかしストーリーそのものはすごくシンプルでストレートなので、わかってくればどんどん引きこまれる。
タイトルが「三度の埋葬」だから、死んだ男がメルキアデス・エストラーダという名前で、彼が3回埋められることは観客は先刻承知だ。しかも彼は最初の登場シーンでは既に半ば腐乱した死体になっている(後で生前のシーンも出てくる)。登場人物の運命は始めから開示されているのにここまで観客をひきつけて放さない原動力は、おそらく主人公ピート(T・L・ジョーンズ)のミステリアスなキャラクター設定によるものだろう。全体に説明の少ない映画だが、彼がどういう人間なのかという部分に関してはさらに一切それがないのだ。
この物語で語られているのはただ唯一、たったひとりの男の死の重さだ。人種に関わらず、当人の来歴や社会的地位に関わらず、死は死なのだ。どんな死も平等に重いのだ。言葉にすればごく当り前のことなのに、映画はそんな当り前のことさえ現代の人間は忘れかけてはいないか?と我々に鋭く問いかけている。ヘタをすればただ説教くさいだけの人権譚になってしまいそうな題材を、サスペンスタッチのロードムービーに仕上げたのはまさに正解だろう。
来年に劇場公開も決まっているそーだ。超オススメの映画です。


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