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落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ストラスバーグによろしく

2012年09月16日 | movie
『鍵泥棒のメソッド』
34にして相手もいないのに職場で婚活宣言をしてしまう香苗(広末涼子)、35にもなって目のでない役者を続けている桜井(堺雅人)、ターゲットが死体ごと行方不明になるほど鮮やかな手口で知られる凄腕の殺し屋・コンドウ(香川照之)。
金目当てにコンドウのロッカーの鍵を盗んだ桜井だったが、銭湯で転んで失神したコンドウが頭を強打して記憶を失ってしまったことから、自らコンドウになりすます羽目に。所持品から自分を桜井だと思いこんだコンドウと偶然知りあった香苗は、前向きに役者としての人生を再出発しようとするコンドウを結婚相手に見定める。

快作『アフタースクール』の内田けんじ監督の最新作。
おもしろかったです。
つーても『アフター』とはまた違ったおもしろさね。もっとコメディー色が強くて、前作よりは素直に楽しめる。前作は見終わって「おもしろい!おもしろいけどもっかい見んとわからん!」ていうくらいギミックに凝りに凝ったストーリーテリングが魅力だった。シナリオに仕掛けられたトリックが解けていくえもいわれぬ快感が強烈だったけど、この『鍵泥棒』に関しては時制はそのままストレートに流れていくし、ヘンに観客を騙したりもしていない。すごくわかりやすい。
でも物語の展開のほとんどが偶然起きるアクシデントによるので、ほんとうに先が全然読めなくて、最後まで「ん?どうなる?どうなる?」と引き込まれてしまう。

ただしどっちがおもしろかったかというと、ぐり的にはやっぱ前のが好きかもしれない。
『鍵泥棒』のテーマは実は「恋のトキメキ」で、作中にも「胸がきゅんとなる瞬間」について語られるシーンがあるのだが、台詞では「30を過ぎると“きゅん”としなくなる」とハッキリ明言してしまう。現実はどうかわからないけど、ぐりはこの「トキメキ」に正直あんまりついていけなかった。30どころか40だもんさ。無理無理。
あと主人公のキャラが弱すぎる。役柄として主体性が前に出てきにくい設定でもあるんだけど、最後まで堺雅人が何を考えてるのかがほとんど伝わってこず、すごく共感しにくかった。広末涼子もキャラ設定がおもしろいわりには可もなく不可もなく非印象的。
香川照之はいつもどおりすんばらしかったですけどね。ホントにこの人の演技には毎度脱帽ですけど。何をどうすればこんなにバッチリ完璧に正解な芝居ができるのか、ものごつ不思議ですけど。
結果香川さんひとり勝ち。おいしいとこ全部もっていきましたね。

あと怖いヤクザ役はやっぱ荒川良々にゃちょっと無理あるよ。プロポーションがいいから衣装はスゴイかっこよかったけど・・・。