落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

牡蠣漁師一家のお話

2011年11月09日 | 復興支援レポート
今回お手伝いした漁師さんのおうちは9人家族。
おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さん、長男夫婦と孫。いまどき珍しい四世帯同居である。つーても仮設住宅は狭いので2世帯分使ってるそーですが。それでも狭い。すごい狭い。あまりの狭さに夕食風景をテレビが取材に来るくらい狭い(本当)。
おじいちゃんとおばあちゃんは引退していて、家業の主役はお父さんお母さんと息子。震災後は主に息子さんがイニシアチブをとるようになったそうだ。世代交替である。

とはいえ、実は息子さんは漁業の道に入ってまだほんの数年である。以前は都市部で会社勤めをしていたという。
このへんの若手の漁師さんたち(30~40代。20代はちょっと見ない)には似たようなキャリアの持ち主がちょくちょくいる。というかぐりが出会った人はほとんどがそうだった。学校を出て一度就職し、転勤なり転職なり結婚なり出産なり子どもの入学なり何らかの契機で実家に戻り、家業を継いでいる。だから年齢の割りには漁業の経験そのものは長くない。
長くないが若くて新しい情報に敏感なので、家に伝わる昔ながらのやり方で通して来たお父さん世代とは当然価値観がズレている。ぐりがお手伝いしたおうちの息子さんも、ちょいちょいお父さんと言い合いをしていた。けっこうな勢いでわいわいぶつかるので最初はちょっと驚くが、お母さんが「いつもこうだ」といって笑っているので端で見ている我々もすぐに慣れてしまう。ふたりともそれだけ仕事に真剣だってことだしね。

今回ぐりがお手伝いしたのは主に種牡蠣の挟み込み。
稚牡蠣がくっついたホタテの貝殻をロープに挟んで、そのロープを海上のいかだに提げる。提げる作業もお手伝いする。


参考動画。同じ地域の別のお宅での作業。
震災の影響で時期外れの作業のため、稚牡蠣がすっかり成長してしまってエラいことになってます。
同時期にぐりもやったけど、やりづらかった・・・。


今回ロープに挟んだ種牡蛎。1本のロープに20枚ほど挟む。
ぐりは毎日20本前後挟んでました。これだけに集中すればもっとできるけど、他の作業も並行でやんなきゃいけないからね。

挟み方としては、種牡蛎は海中に提げたときにホタテの丸い部分が水面側に、蝶番部分が海底に向くように、ホタテとホタテの間隔は22~3センチに保つ。このきまりには息子さん曰くいろいろと理由があるのだが、とりあえずこのブログをお読みの皆様には関係がないので割愛します。
作業はいろんなボランティアがやっているので、挟んだロープを息子さんと海上に持ち出していかだに提げようとする段になって、間隔やホタテの向きがムチャクチャになってしまってるロープもちょこちょこある。息子さんはそういうロープは岸壁に持ち帰って挟み直していた。お母さん・お嫁さん曰く息子さんは細かい・神経質なんだそうである。対してお父さんはどっちかというと大雑把らしい。
そういう息子さんを見て、ついついぐりも細かくなる。息子さんに迷惑をかけないように、自分だけでなく初めて挟むボランティアが間違えないように毎日周りの作業に一生懸命神経を配っていた。

ある日この挟み込みの作業にお父さんお母さんも参加したのだが、ロープを海上に運んで提げようとすると、ホタテがみんな逆さにつながっているロープがたくさん出て来た。
この日も初参加のボランティアが何人もいてぐりも細かく注意してはいたので、なぜそんなミスが起きるのかがよくわからない。船上の全員が釈然としない気持ちで向きを直しながらいかだに提げていたのだが、息子さんが「これオヤジだ・・・」といいだした。
お父さんはふだん挟む作業はあまりしないので、なんとなく適当になっちゃってるんじゃないかと。作業を手伝っていた近所の漁師さんは「またケンカしないでよ」と心配していたが、必死に神経を使っていたぐりたちボランティアはつい大爆笑してしまった。だってオチとしては最高じゃないですか。息子さんが指示した通り真面目にやってる素人は間違ってなくて、肝心の漁師さんのお父さんが間違えてる。笑えるよね?

この話にはまだ後日談がある。
大多数のボランティアが引き揚げ、ボランティアツアー(別に書きます)客もいなくなった日曜日、少数のボランティアと漁師さん一家だけで残りの種牡蛎を処理し、別の作業をしている息子さんに代わってお父さんといっしょにいかだに提げた。
ロープを海中に下ろしていて、また、ホタテが逆さのロープが異常にたくさんあるのに気づいた。お父さんは全然気にしていない様子だったので(自分が逆さに挟んでるんだから当り前だ)、ぐりもいちいち注意せずそのまま提げる作業を続けた。勘定してみたところ、ホタテが逆さのロープは全体の半分くらいあった。つまり逆さに挟んでたのはお父さんだけでなく、お母さんも逆さだったということになる。他のロープは全部ボランティアが挟んでいて、彼らの作業はぐりが完璧に監視(爆)していたからである。
そこへ別のボートで息子さんが近づいて来たので、ぐりは気づかれないように急いで逆さのロープを全部海中に下ろした。見つかったらまた言い合いになるからである。

この後日談は今まで誰にもいわなかった。ここで初めて告白します。漁師さん一家の平和を願ってやみません(笑)。
ついでにいっときますが、ぐりは貝アレルギーで、なかでも生牡蛎はまず身体が受けつけない(この地域の牡蛎は生食用)。もっとついでにいうと、ここんちの息子さん、このネタの主人公も、牡蠣、食べれません(爆)。


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