落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

今年最初のレビューですが

2010年01月10日 | movie
『ずっとあなたを愛してる』

15年の刑期を終えて出所したジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)と暮らし始めた妹のレア(エルザ・ジルベルスタイン)。
「姉はいないものと思え」と言い聞かされて育てられた彼女なりに、どうにかして姉の固く閉じた心を解きほぐそうとするが、夫(セルジュ・アザナヴィシウス)もふくめジュリエットの過去を受け入れられない周囲との葛藤にも苦悩する。
やがてミシェル(ロラン・グレヴィル)という理解者も現れ、レアの幼い養女姉妹(リズ・セギュール/リリー=ローズ)もなついて、徐々に外界に適応し始めるジュリエットだが・・・。

殺人を犯した人の贖罪と赦しの物語といえば、ぐりは一昨年のイギリス映画『BOY A』を思い出すんですが。
『BOY A』は登場人物の社会的背景や地名などの固有名詞を極力排して、映画の世界観をミニマムに普遍的に表現することで観客のモラルを問おうとする、ちょっと実験的な映画だったんだけど、『ずっと』はもうちょっとわかりやすいとゆーか、もっと具体的でストレートな作品。設定が細かいところまでしっかりつくりこんであって、それをまたいちいちきっちり説明しまくる。
服役前のジュリエットの職業は医師で、レアは大学で文学を教える教師。ふたりは英仏のハーフで年齢は10歳以上離れていて、事件当時子どもだったレアはジュリエットの身に起こったことを具体的には知らない。
なので映画の本筋は実は、この姉妹が互いを認め、受け入れて近づいていく過程を描いている。そこに、ジュリエットの社会復帰と、犯した罪を自らほんとうに認めるまでが並行して表現されている。

全体にすごくよく出来てる映画ではあったんだけど、よく出来過ぎていて却って現実味が薄く感じる面もちょいちょい目立つ。
レアはジュリエットを姉としてただただ恋慕うけど、姉妹でこんなに仲良しこよしってなんか違和感があるゆーか・・・ぐりにも妹がいるので微妙にひっかかる。父親が死んで母親も認知症になって心細いだけちゃうん?みたいな。すんません、根性曲がっててー。
フォレ警部(フレデリック・ピエロ)やミシェルなど、ジュリエットに近づく男がやたら多いのもいかにもフランス映画的だし、逆にレアの夫リュックの思慮のなさはまったくインテリらしくない。
いちばん「なんだかな」と思ったのはジュリエットの殺人の動機。まあね、映画だからねえ〜といっちゃっちゃおしまいなんだけどさあ、ちょっとどうなのそれ?あまりにもご都合主義じゃない?

設定はすごくちゃんとしてるけど、もうひとつ題材を消化しきれてない印象は拭えなかったです。
いい映画なんだけどね。惜しい。